LIFE STYLE | 2019/01/31

「カミソリ・パフォーマンス」が世界中で大ウケなマジシャン、TanBA氏|なにげに世界で有名な日本人

(c) 2019 TanBA
海外のテレビ番組でパフォーマンスを披露する日本人が増えてきたと感じる昨今である。そうした...

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海外のテレビ番組でパフォーマンスを披露する日本人が増えてきたと感じる昨今である。そうした人たちに共通しているのは、言葉不要で人を惹きつけるパフォーマンスを魅せられるる人だということだ。ゆんぼだんぶしかり、ウエスPしかりである。こうした芸人さんは芸能事務所に所属しているので、海外での活躍が日本でも報じられる機会が多い。しかし、日本ではあまり知られていないものの、海外での知名度という点では前述の芸人さんにも負けずとも劣らない日本人パフォーマーも存在している。

2017年にイギリスのオーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント(Britain's Got Talent:BGT)』でパフォーマンスを披露し、観客を総立ちにさせた“デンジャラスだけどファニーなマジシャン”のTanBA(タンバ)氏がその人だ。『BGT』出演後、ルーマニア、コロンビア、インドネシア、ブータン王国、香港、マレーシア、ドイツ、ベルギー、アメリカといった国々のテレビ番組、イベント、ショーなどからお呼びの声がかかるようになった同氏に話を伺った。

取材・文:6PAC

TanBA

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静岡県島田市出身。プロマジシャンになるべく、高校卒業と同時に渚晴彦に弟子入り。15年の修行を経て独立。 2008年、「マッスルミュージカル」入団。2009年にはマッスルミュージカルラスベガス公演に参加。この経験がきっかけとなり世界進出を目指す。2017年、イギリスのオーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント(Britain's Got Talent)』に出場。 『ブリテンズ・ゴット・タレント』出演をきっかけに、世界への扉を開く。
公式サイト:http://www.tanbamagiclown.com/
Twitter:https://twitter.com/tanbamagiclown

イギリスのオーディション番組『BGT』へ出演したことがターニングポイント

(c) 2019 TanBA

「4歳の頃に、祖父がマジックっぽいことを見せてくれ、それがきっかけで好きになりました」と言うTanBA氏は、芸能事務所には所属せず、個人事業主としてフリーの立場で活動している。日本国内では、モノマネ芸人のコロッケが経営する「コロッケミミックトーキョー(CROKET MIMIC TOKYO)」や、魔法ダイニングバーの「六本木 オズマンド(OSMAND)」にレギュラーとして出演中だ。また、全国各地で企業パーティを中心に、結婚式や学校などでもパフォーマンスをしている。

海外でのパフォーマンスについては、「2009年にマッスルミュージカルのラスベガス公演に出演した際、さまざまなジャンルのパフォーマー、その人だけにしかできないスペシャルアクトで生活しているパフォーマーたちと出会い、衝撃を受けたことがきっかけで、海外のショービジネスに本格的に興味を持つようになりました」と語る。そんなTanBA氏のターニングポイントとなったのが、2009年の紅白歌合戦でも歌声を披露したスーザン・ボイルを輩出した、イギリスのオーディション番組『BGT』へ出演したことだ。

『BGT』でのパフォーマンス動画。2番目の動画は600万回以上再生されている。

『BGT』ではTanBA氏の代名詞とも言えるカミソリ・パフォーマンスを披露し、辛口審査員として名高いサイモン・コーウェルを筆頭とした審査員だけでなく、観客からもスタンディング・オベーションを浴びる結果となった。出演後は海外からの仕事のオファーが増えるようになり、「これまで憧れはあったけれど開かなかった重い扉が開いた」と言う。海外の著名なマジシャンからも直接連絡が来るようになった。

『BGT』出演後、活動の場は一気に世界各国へ

(c) 2019 TanBA

『BGT』出演後、TanBA氏の活動範囲はルーマニア、コロンビア、インドネシア、ブータン王国、香港、マレーシア、ドイツ、ベルギー、アメリカと世界各国に広がった。どういう形で海外から仕事のオファーが来るのか訊ねてみると、「ホームページを通して依頼が届くようになりました。ジャンルとしては、バラエティーショーのオファーが多いです」とのこと。自ら売り込みもするそうで、ドイツの『Newcomershow』というショーは自分から応募して、Festungsvarieté賞を受賞。その後、 Festungsvarietéシアターと契約をし、仕事を勝ち取ったそうだ。

ルーマニアのテレビ番組『iUmor』出演時のパフォーマンス

条件面での交渉は、「すべて自分でやっております。英語でのやりとりなので、なかなか大変です」と笑う。ギャランティに関しては「基本的には出演料プラス渡航費・宿泊・食費は先方負担という形です。ただイベントによっては、ギャラに渡航費込みの場合もあります」と話してくれた。ギャラに渡航費込みの場合でも、「飛行機会社を選べたり、席のクラスを選べるので嬉しい」と、ポジティブに受け止める。日本のギャラと海外のギャラの違いについて訊ねると、笑いながら「元々の私のギャラが安いのもありますが、桁が1つ変わりました」と答えてくれた。ちなみに、これまでで一番ギャラの良かった仕事は香港で開催されたミュージック&アートフェスティバルの『Clockenflap』だそうだ。

海外からのオファーの内容は先述のカミソリ・パフォーマンスがほとんどだ。しかし、「インドネシアでは、ヒジャブを被った女性をテレビのステージに上げてはダメだとか、お尻や胸を強調するセクシー系の動きはNGだとか、色々な規制がありました。リハーサルでは、パフォーマンス1つ1つを事細かく、放送倫理に触れないか審査されました。また、宗教や放送倫理の影響でカミソリ・パフォーマンスはできませんでした」というエピソードを語ってくれた。ただ、お尻を使ったパフォーマンスについては「単純に面白い行為をしているだけ」と認識されたため許可が出たそうだ。

インドネシアのテレビ番組『The Grand Master Asia』出演時のパフォーマンス。

最も印象に残ったパフォーマンスは?と水を向けると、ブータン王国でのパフォーマンスと『BGT』でのパフォーマンスという答えが返ってきた。「ブータン王国ではマジックに直接触れたことのないお客さんが大勢いたので、大人にも子供にもすごく喜んでもらえました。 その様子が視聴率80%の国営放送で放送されたので、帰りには町中や空港でたくさんの人から声をかけられました。きっとブータン国王も見てくださっていたことでしょう(笑)。観客の反応としては、『BGT』の観客1500人の総立ちは今でも忘れられない記憶です」と語る。

最近、「アジア圏に行くと“『BGT』観たよ!”と声をかけられることが多いです」と言う TanBA氏は、オンリーワンのマジシャン&パフォーマーを目指している。外国のショーとの長期契約を目標に掲げていたが、ようやくドイツのライプツィヒで2019年10月20日~2020年2月29日まで開催されるショーと4カ月の長期契約を結び、夢の実現に一歩近づいた。2019年4月26日~28日には、ベトナムのホーチミンでの出演も決まっている。それでも、「最終目標はやはり、ラスベガスです!」と意気軒高だ。

一度日本の外に出ると視野が広がる

(c) 2019 TanBA

以前執筆した、日本人女子プロレスラーのアスカがWWEで活躍しているという記事でもさらっと触れているが、「言葉不要でも人を魅了するパフォーマンスが出来る日本人」には世界で活躍できるチャンスが溢れている時代となった。そこで、TanBA氏から世界で活躍したいと考えている日本の若者にメッセージをお願いした。

「そうですね。僕が若い頃とは違い、現在はインターネットの発達によって、個人でも海外のオーディション情報、ショー情報、フェスティバル情報を得ることが簡単になりました。やる気のあるパフォーマーは、海外進出が容易になったと思います。世界にはさまざまな人種、考え方、職業、パフォーマーがいるので、自分がそうでしたが、一度日本の外に出るとかなり視野が広がると思います。海外へ行くと、日本人は本当に繊細で器用だなと、改めて実感します。そういう部分を武器にドンドン世界進出して活躍して欲しいと思います」

年齢関係なく、何事も自分から行動しない限り、道は開けないものだ。40才を過ぎてなお、夢の実現に向けて着実に歩を進めるTanBA氏の姿を見て再認識させられた。