EVENT | 2018/10/03

「あなたのデータはあなたのもの。その考えは揺らぎません」。macOS Mojaveにもプライバシー保護を重視するAppleの姿勢は貫かれている

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ユーザーのプライバシー保護を重視することで知られるAppleは、9月25日に正式リリ...

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ユーザーのプライバシー保護を重視することで知られるAppleは、9月25日に正式リリースした「macOS Mojave」でもその姿勢を貫いており、ユーザーデータのビジネス活用を推進する他のIT大手とは一線を画する戦略を展開する。その背景となる思想と、具体的にmacOS Mojaveで実現しているプライバシー/セキュリティ機能について着目してみた。

伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。

懸念される個人情報の漏洩や不正利用

個人データのビジネス活用が急速に進展する中で、プライバシー保護を軽視する企業が増えているように感じる。膨大な個人データを得られる立場にある企業、例えばGoogleやFacebookなどは、保有する個人データを、氏名や住所などの個人属性を外してはいるものの、自社内で活用するだけではなく、外部に販売することにより巨額の利益を得ているとされる。

ビッグデータの活用が、ビジネス成功の鍵を握ると言われるなかで、その価値はますます高まるばかりだ。

欧州が進める個人データ保護のための施策「GDPR」は、このような事態を懸念しての動きといえる。

GDPRの運用開始を知らせるリリース

WWWの仕組みを考案してインターネットの基礎を築いたとされるティム・バーナーズ=リー氏(Timothy john Berners-Lee)も、個人情報をデジタルの巨人たちに引き渡さなければならない現状を変えて、ウェブ上の個人の力と主体性を取り戻すためのオープンソースプロジェクト「Solid」を発表した。

https://solid.inrupt.com/how-it-works

そんな状況下にあって、他社とは一線を画した戦略を展開しているのがAppleだ。ユーザーのプライバシーを重視する姿勢は、最新のmacOS Mojaveにも反映されている。

あなたのデータはあなたのもの

「あなたのデータはあなたのもの。その考えは揺らぎません」

macOS Mojaveを紹介するページには、プライバシーとセキュリティを保護する機能について、そう記されている。

「あなたはApple製品を信頼して、そこに最も個人的な情報を預けているはずです。Appleは、あなたがその情報を完全に管理できるべきだと強く信じています。私たちは、すべてのデータの扱い方を定めた厳格なポリシーによって、あなたのプライバシーを尊重します」

また、プライバシー保護に関するページには、こうも述べられている。

「Appleは、プライバシーは基本的人権であると信じています。あなたのApple製デバイスには、数多くのあなたの個人情報、つまり非公開のままにする権利があなたにある情報が入っています。例えば、ランニングのあとの心拍数。一番先に目を通すニュース。最後にコーヒーを買った場所。訪れたウェブサイト。電話やEメール、メッセージの相手など。すべてのApple製品は最初から、そのような個人情報を保護できるように設計されています。そして、何を誰と共有するかを決める選択権はあなたにお渡しします。優れた体験をするために、あなたのプライバシーと安全を犠牲にする必要はない。Appleはそのことをこれまで繰り返し証明してきました。優れた体験とは、逆に、プライバシーと安全を支えることができるものなのです」

Image by Apple Appleのプライバシーに関するページ

ごく当たり前のことが述べられているように見えるが、IT関連の企業でこれを実践できている企業は、ごく少数ではないだろうか。

プライバシー保護のために追跡防止機能を強化

macOS Mojaveで強化されたプライバシー保護の機能としては、追跡防止機能がある。

最近では、PCやスマホでの閲覧履歴などをもとにパーソナライズされた広告を表示するウェブサイトが増えているが、Appleではこうした履歴をウェブサイトに読み取られることもプライバシー侵害の一種であると捉えている。

そこで、以前からウェブブラウザのSafariに閲覧履歴の追跡を拒否する機能を搭載。例えば、インターネット上でデジタルカメラの情報をチェックした後、ネットサーフィン中に頻繁にデジタルカメラの広告が表示されて不快な思いをするようなことを防止してきた。これは、ユーザーのオンライン上での行動を追跡する広告主などを、Safariが機械学習によって特定し、彼らが残すクロスサイトトラッキングデータを削除することで実現している。

macOS Mojaveでは、その機能をさらに強化しており、SNSの「いいね」ボタンや「シェア」ボタン、「コメント」ウィジェットなどによる追跡も防ぐ機能を提供する。

また、広告主がユーザーの使用するデバイスの特性を読み取り、オンライン上でユーザーを追跡するための「指紋」として使用されることがあるが、macOS Mojaveでは、Safariが簡略化されたシステムプロファイルだけを共有することで、これを阻止している。

セキュリティ面ではパスワード流用を警告する機能も

macOS Mojaveで強化されたセキュリティ機能としては、パスワード管理機能の強化がある。

多くのパスワードを覚えるのは大変だからと、複数のウェブサイトで同じパスワードを流用している人が少なくないが、それは直ちに止めた方がいい。どこか1カ所でユーザー情報が漏洩してしまうと、パスワードを流用しているすべてのサイトで不正侵入される恐れがあるからだ。

そこで、macOS Mojaveには、複数のウェブサイトで同じパスワードを利用している場合、別のパスワードに更新するよう促す機能が付加された。

パスワードはSafariが記録し、iCloudキーチェーンに保存・共有することができるので、ユーザーが覚えていなくても、利用するすべてのmacOSやiOSのデバイスで利用することができる。

このほか、macOS Mojaveでは、盗撮・盗聴機能を搭載したマルウェアによるカメラやマイクなどの不正利用を防ぐ機能も追加された。

アプリケーションがカメラなどを使おうとすると、iOSと同様に許可を求めるダイアログが表示されるので、ユーザーはマルウェアの挙動を知り、不正な行為を事前に予防することができる。

ただし、macOS Mojaveが搭載するこれらの優れたプライバシー/セキュリティ保護機能も、ユーザーがその必要性をきちんと自覚して利用しなければ、十分な効力を発揮することはできないだろう


Apple macOS Mojave