LIFE STYLE | 2019/01/25

もし日本に来たらどうなる?ニュージーランドから国外退去通告を受けた「モンスター家族」の顛末

画像はニュージーランドのオークランドで発行されている日刊紙『ニュージーランド・ヘラルド』のニュース記事https://w...

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画像はニュージーランドのオークランドで発行されている日刊紙『ニュージーランド・ヘラルド』のニュース記事
https://www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=12191058

文:6PAC

無銭飲食から万引きまでやりたい放題のイギリス人“モンスターファミリー”

「ペルソナ・ノン・グラータ」という言葉がある。スパイ小説などでも度々用いられるこの言葉は「好ましくない人物」という意味で、主に外交用語として使われることが多い。外国に派遣された大使や外交官が、国同士の駆け引きや政治的な衝突からウィーン条約で規定されるペルソナ・ノン・グラータとして指定されると、外交特権を剥奪されたり、国外退去処分になったりする。最近では2017年にマレーシアのクアラルンプール国際空港で金正男氏が殺害されたことを受けて、在マレーシア北朝鮮大使が国外退去を通告された。また同年には、メキシコでも北朝鮮が核実験を行ったことを受けて、在メキシコ北朝鮮大使に国外退去が通告されている。

外交官ではないものの、昨年12月からニュージーランドを訪れていたイギリス人家族が、1月15日にニュージーランド入国管理局から国外退去通告を受けた。現地新聞の『ニュージーランド・ヘラルド』紙によると、この家族はニュージーランド最大の都市オークランドおよび、オークランドから車で1時間ほど南に行ったハミルトン周辺で、ゴミの不法投棄、言いがかりをつけての無銭飲食、万引き、器物破損などの犯罪行為を立て続けに行ったとされている。

タカプナビーチにゴミを置き去りにする様子

ゴミを拾って捨てていくように注意されると子供までもが口汚く罵る様子

現地でのニュース動画

市長が「豚以下」と断罪

悪い意味でこの家族に対する注目が高まったのは、オークランドのタカプナビーチでゴミを放置したまま立ち去る様子と、そのことを注意した地元女性に対し、イギリス人家族の子供の一人が口汚い言葉で罵る様子が撮影された動画がFacebookに投稿されたことがきっかけだった。情報が一気に拡散され、地元メディアもこぞって報道した。

この動画を見たオークランド市長は、欧米の政治家の口からはあまり聞くことができない単語などを使い、「ろくでなし」、「ゴミみたいな連中」、「豚以下」、「ニュージーランドに滞在すべきではない」と断罪、さらなる拍車をかけた。その後Facebookなどのソーシャルメディア上では、この家族の現在地、乗っている車のナンバーや車種、どこへ向かっているのかという情報が随時共有されるようにもなった。元警察官の男性は、ソーシャルメディアを駆使して“モンスター家族”を追跡する様を、「『ポケモンGO』みたいだ」と表現している。

ニュージーランド旅行中にこの“モンスター家族”が行った悪行の数々は以下の通り。

1.宿泊施設のトイレ以外で脱糞・悪臭放置・器物破損
2.ビーチやレストランなどでタバコの吸い殻やビールの空きビンなどのゴミを散乱・放置
3.コンビニやスーパーで飲料、クリスマスツリー、サングラス、ロープなどを万引き
4.ニュージーランドへ向かう飛行機の機内での手荷物の悪臭・騒音などの迷惑行為
5.虫や髪の毛が入っていたとして複数のレストランなどで支払拒否
6.地元住民や現地メディアの記者に対する脅迫・暴言

海外で起きたことを対岸の火事として他人事としがちなのが日本という国であるが、そうも言っていられない事情がある。日本政府観光局の統計によれば、日本を訪れる外国人観光客の数は2012年以降、急速な右肩上がりを記録している。観光立国の実現を目指す政府の方針もあり、翌13年に年間1,000万人を突破し、さらに16年には倍の年間2,000万人を突破した。東京オリンピックが開催される2020年には、訪日外国人観光客の数値目標として4,000万人を達成するという数字が挙がっている。

4,000万人の中には、テレビ番組でよく紹介される「日本に興味深々な親日家」だけではなく、「日本になど興味はない」が自国の選手を応援するためだけに来日する人数も当然含まれているだろう。また、オリンピックが開催されるたびに危惧されることだが、テロリストも密かに来日する可能性もある。

日本の入国管理法(出入国管理及び難民認定法)では、「外国人の上陸拒否事由を定め、該当する者を上陸拒否する」ことができるとしている。テロリストに関してはアメリカなど他国の司法当局と連携し、日本の入国を防ぐことができるわけだが、テロリストは通常偽造パスポートを使うので、それを見破るノウハウや手段が必要となってくる。国際便が発着する国内の空港すべてにおいて、一分の隙もない入国審査が要求されることとなるが、現実的には至難の業だろう。

東京オリンピック開催時には大勢のペルソナ・ノン・グラータが日本へ入国する可能性も

テロリストの入国が確認された場合はさておき、日本へ入国後、問題を起こした人物を国外退去するケースを想定してみよう。「日本になど興味はない」が、オリンピック目当てで来日した一般の外国人観光客が、東京周辺の飲食店やコンビニなどで窃盗、無銭飲食、器物破損などといった犯罪を犯した場合に国外退去を通告するとなると、外交問題に発展する可能性がある。「弱腰外交」と批判されることの多い日本国は、その時はたしてニュージーランドのような強気の姿勢に出られるであろうか?

ニュージーランドのケースでは、元労働党党首という大物政治家の顔を持つオークランド市長が動いたゆえに、国外退去通告という結果になったことは否めない。だが昨年、日本でも富士の樹海で自殺者の遺体を撮影した動画を公開し、世界規模で大炎上したアメリカ人ユーチューバーが現れているが、彼以上に「好ましくない人物」が大勢入国する可能性は捨てきれない。

観光立国の旗印のもと、数値目標を掲げて達成を目指すのは決して悪いことではないが、2020年の東京オリンピックには世界中からさまざまなバックグラウンドを持った人々が日本に集まってくる。日本は事後対応の国であるが、これまで苦手としていた「事前にさまざまな事態が発生することを想定」して外国人観光客を迎える準備をする必要性があるのではないだろうか。テロが起きた場合や外国人観光客による殺人事件などが起きた場合、事後対応では失われた命は戻ってこないのだから。

「豚以下」と形容されたイギリス人旅行者がニュージーランドで国外退去通告を受けたニュースを、他人事ではないと感じたのは筆者だけではないはずだ。