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世界中に拡がった桜田五輪相の「パソコン使えない」報道で、東京オリンピックへのサイバー攻撃がさらに激化する?
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  • 2018.11.21
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世界中に拡がった桜田五輪相の「パソコン使えない」報道で、東京オリンピックへのサイバー攻撃がさらに激化する?

Photo By Shutterstock

桜田義孝五輪担当相の「パソコンを使うことはない」という発言が、国内のみならず海外メディアでも大きな反響を呼んでいる。

米英の有力紙であるワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ガーディアンなどが相次いで取り上げ、同氏がサイバーセキュリティ基本法改正案を担当していることに驚き、不安視する論評を繰り広げている。「ハッカーは彼から情報を盗むことは出来ないので、ある意味、最強のセキュリティだ」と皮肉る記事さえあった。

伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。

サイバーセキュリティ担当に相応しい人材はいるのか

確かにパソコンを操作したこともない人が、日本のサイバーセキュリティに関する法規・政策を左右する立場にいることは困りものだが、パソコンを使いこなせないというだけでサイバーセキュリティ担当としての資質を疑うのは早計な気もする。

インターネットデバイスの主流がパソコンからスマホへと移行したことで、ユーザー全体のセキュリティ意識が低くなってしまったように感じる。パソコンを自在に使いこなし、セキュリティ意識も高い議員でなければサイバーセキュリティ担当は務まらないとなると、選択肢はかなり限られてしまうだろう。知識はあっても議員としては経験不足という別の問題も出てきそうだ。

有能な部下や専門家がサポートすれば、桜田五輪相だって優れた能力を発揮するかもしれない。……USBのなんたるかもよく知らないのには、とても不安を感じるが。

桜田五輪相の報道で東京五輪がダークサイド・ハッカーの標的に?

野党には、なぜ五輪相がサイバーセキュリティ担当を兼任しているのかについても、突っ込んでもらいたかった。

オリンピック開催地はサイバー攻撃のターゲットになりやすく、過去の大会でも対策に苦慮してきた経緯がある。だからこそ、2020年に向けて世界最高レベルのサイバーセキュリティ対策が必要になることを自覚しているのかどうかを質して欲しかった。

心配なのは、サイバーセキュリティを担当する大臣がパソコンを使えないという事実よりも、そのニュースが世界中で話題になってしまったことだ。

多くの国々がサイバーセキュリティ戦略に力を注ぐ中、特異ともいえる日本の状況(大臣の人選のみだが)が明らかになり、「俺たちもなめられたものだな」と面白がって攻撃してくる悪質なハッカーが増えてしまうことが危惧される。

オリンピックはサイバー攻撃能力を競い合う舞台に

オリンピック開催地へのサイバー攻撃には、国家がからんでいる場合も少なくないといわれており、東京オリンピックの場合には、中国や北朝鮮などが関与する攻撃を警戒する声もある。もし、それが事実なら、高度かつ巧妙な攻撃によって日本は大恥をかかされる恐れがある。

平昌オリンピックでも、実際に開会式当日を狙ったサイバー攻撃が発生。大会のウェブサイトやドローンを使ったセレモニーの一部に障害が生じたと言われている。仕掛けたのはロシア関連のハッカーではないかとみられているが、北朝鮮の関与を疑う専門家もいる。

オリンピックは、サイバー攻撃能力を競い合う舞台にもなっているようだ。

中国は、まるで映画「1984」の世界

ここで、最近気になった中国のサイバー戦略が垣間見える記事を紹介しておこう。

中国メディアは安倍訪中を、実際にはどの程度の扱いで報じていたか」(谷崎光氏、ダイヤモンドオンライン)

同記事によれば、安倍首相が中国を訪れた日の朝、谷崎氏のスマホは突然OSが更新されて日本語が打てなくなり、Twitterへの投稿も一切できなくなったという。そして、知らぬ間に中国版の携帯クローンソフトがスマホにダウンロードされていたとか。

また、ネット上の安倍訪中を報じる記事についていた、批判や罵りコメントもきれいに消されて、残っているのは歓迎する記事ばかりだったことにも驚かされたそうだ。

その徹底したIT管理は映画「1984」を思い起こさせる。まさに中国恐るべしだ。日本の議会における質疑応答と中国における現実が、あまりにも差がありすぎて笑えてきてしまう。

なお、安倍首相が帰国した後には、ちゃんと対策を施したこともあって復旧しているそうだ。

大きな脅威となる北朝鮮のサイバー攻撃能力

北朝鮮のサイバー攻撃能力も大幅に向上してきており、いまやロシアや中国に次ぐ能力があるとみられている。

対話姿勢に転じた今年に入ってからも同国によるとみられるサイバー攻撃が相次いでおり、今春には世界17カ国の金融機関を狙った攻撃が判明。

世界150カ国以上で猛威を振るったランサムウェア(身代金要求ウイルス)「WannaCry」にも、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」所属のパク・ジンヒョク容疑者が関与しているとされ、米司法省は訴追している。

日本のサイバーセキュリティ対策が立ち遅れていることを、改めて世界に知らしめてしまった今回のニュース。かつて史上最悪といわれたハッカー、ケビン・ミトニック氏(現在は改心してホワイトハッカー)を追い詰めて逮捕に至らしめた伝説のハッカー、下村努氏のような世界最高レベルの人材の育成が急務となっている。


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