ITEM | 2022/05/30

熱気と混沌渦巻く「第3回ブロックチェーンEXPO2022」で見つけた注目WEB3企業3選


足立 明穂
ITトレンド・ウォッチャー、キンドル作家
シリコンバレーで黎明期のインターネットに触れ、世界が変わる...

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足立 明穂

ITトレンド・ウォッチャー、キンドル作家

シリコンバレーで黎明期のインターネットに触れ、世界が変わることを確信。帰国後は、ITベンチャー企業を転々とする。また、官庁関係の仕事に関わることも多く、P2Pの産学官共同研究プロジェクトでは事務局でとりまとめも経験。キンドル出版で著述や、PodcastでITの最新情報を発信しつつ、セミナー講師、企業研修、ITコンサル業務などをおこなうフリーランス。

5月11日〜13日までの3日間、東京ビッグサイトで「第3回ブロックチェーンEXPO【春】」が開催されました。

昨年から始まった展示会なので、まだ規模は小さいですが今だからこそ分かる新しい市場の活気ある状態をお伝えしたいと思います。現地に行ったからこそ見えてくる、混沌としながら活気の入り交じる状況をお伝えします!

スーツ姿半分、カジュアル半分の来場者

ブロックチェーンEXPOは、「NextTexh Week 2022」内の4つの展示会のうちの1つとして開催されており、他に、「AI・人工知能EXPO」「量子コンピューティングEXPO」「デジタル人材育成支援EXPO」が同時開催されています。

「AI・人工知能」と「量子コンピューティング」は規模が大きくこの2つでワンフロア全体を使っていましたが、デジタル人材育成支援とブロックチェーンEXPOは合わせてフロアの半分程度でした。

来場者の様子を見ても、他の展示会では、圧倒的にスーツ姿の来場者が多かったのですが、ブロックチェーンEXPOではスーツ姿が6割、カジュアルな服装が4割といった状態です。来場者層を見ても、ブロックチェーンやNFTに関心を持つ若い人たちが多い。展示側もスタートアップやベンチャーが多く活気がある「こからの市場」であることが分かります。

ブロックチェーンEXPOに出展している団体は40程度(1つのブースで複数団体が出展しているケースもあり、ブース自体は33)。過去の展示会にはなかった「NFTゾーン」というエリアが中央にできており、3分の1がそこに集まっていました。ブロックチェーン分野においてもNFTへの注目度の高さが伺えます。

出展社も主催者も手探り状態

システム開発の会社でエンジニアが説明していると思えば、隣でコスプレしたスタッフがNFT作品出品サービスのパンフレットを配布しています。メタバースの展示があるかと思えば、ブロックチェーンのコミュニティが出展しているなど、実にさまざま。

ブロックチェーンはあくまで技術でしかなく、それを用いたサービスとしては決済、認証、メタバース、NFTなど多数の分野があり、それぞれにコミュニティ、開発会社、サービス会社などがあるので分類するのは容易ではありません。印象的だったのは展示をひと目見ただけでおおよその内容を掴むことができるブースはかなり少なかったことです。それだけどの団体も展示方法やその内容が手探り状態なのでしょう。

ひるがえせば次々と新しい発想が渦巻く熱量を、どのブースからも感じるということ。会場の端の小さなブースであっても、次回のブロックチェーンEXPOでは一番大きなブースを構えているかもしれないと思わせるものがありました。

思わず30年ほど前にラスベガスで開催されていたコムデックスのコンピュータ展示会で感じていた活気を思い出します。あの当時も、小さなブースで展示していた無名の企業が、あっという間に大きくなるのをいくつも見ました。今回出展していた中からも、いずれ世界に知られる企業に成長するところも出てくるでしょう。

今後、注目されそうなサービスは? 

さて、いくつかのブースを見てきた中で、私が感じたユニークな展示、今後注目されそうなサービスを紹介しておきます。

 アニメのセル画所有権NFTを売買する「楽座」

RAKUICHI株式会社が提供するアニメのセル画の所有権をNFT化して販売するサービスです。アニメのセル画は、所有する際に温度や湿度の管理をしっかりしなければ歪んでしまったり、ペイントがひび割れてしまったりすることがあります。楽座では、そのセル画を預かって品質管理してくれます。もちろん、所有権を持っているので、希望すれば好きなタイミングで引き出すことができるのですが、所有権NFTを持っていることで、「売買が簡単にできる」ということが大きな市場へ変化していく可能性を秘めていると感じます。

実物の商品の品質管理が難しいからこそ、NFTを活用するというのは非常に面白いアイデアであり、さまざまな応用ができると思います。

 Open Sky Blue 「リ・クリエイト of フェルメール デジタルNFT原画 37s」

フェルメールの作品を高解像度のデジタル原画としてリ・クリエイト(フェルメールが描き上げた時点の色を再現)しNFT化するというプロジェクト。実際の原画ではなく、あくまで当時の色合いや質感をデジタルで再現しようという、これまでとは異なる角度から絵画の価値を見直す取り組みです。

さらに面白いことに、プログラムで経年劣化する状態も再現するNFTとなっています。過去に起きた時間の変化を感じることができるようにするというのはデジタルだからこそできる表現であり、それをNFT化することで唯一無二である原画としての価値を上げるという発想が面白いです。

このように、実物のアート作品であっても、単にデジタル化しただけでなく、そこに別の価値を付け加えるというのは、新たな発想でさまざまなものに応用されていくのではないかと思います。

なお、メタバース上に構築された美術館でも8月末まで展示されているので、是非アクセスしてみてはいかがでしょうか?

フェルメールメタバースNFT美術館

ベトナムのブロックチェーンエンジニアに開発委託できる「BEETソリューションイノベータ株式会社」

ベトナムでオフショア開発を行っている企業です。オフショア開発はシステムの開発などを比較的コストのかからない海外企業に委託する手法であり、コスト削減などが期待できますが、それだけでなく国内にはいない現地の優秀な人材を起用できることもあります。

例えばブロックチェーン・エンジニアは日本ではまだまだ数が少ない状況ですが、ベトナムではすでに人材が育ってきています。NFTゲームで世界的に有名になった「Axie Infinity」(アクシー・インフィニティー)を開発したのもベトナムの会社であり、4月にはベトナム・ブロックチェーン協会が設立されるほど。国を上げて力をいれていることが伺えます。

さらに英語に通じているためにアメリカなど世界的なトレンドや情報をいち早く掴むことができるというメリットも。

ブロックチェーンに関する技術開発は、地域に関係なく世界各国で進んでいます。そのうち、工業製品の製造は海外で行っているように、ブロックチェーンのシステム開発は海外で行うのが当たり前になっていくのかもしれません。

ブロックチェーンEXPOは着実に出展企業が増えており、半年後に開催される次回にはさらに活気づいているでしょう。まだまだ、誰も思いついていない新しいサービスが出てくるので、このような展示会やイベントは面白くてしかたがありません。岸田首相も今年5月に英・ロンドンにて行った講演にて「Web3推進の環境整備」を明言していますから、もっと加速していくでしょう。振り落とされないように追いついていきたいと思います。