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海辺にポツンと1本の外灯。「いつか帰ってくる場所」になる現代アート【連載】「ビジネス」としての地域×アート。BEPPU PROJECT解体新書(12)
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  • 2021.05.14
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海辺にポツンと1本の外灯。「いつか帰ってくる場所」になる現代アート【連載】「ビジネス」としての地域×アート。BEPPU PROJECT解体新書(12)

《息吹》撮影:島袋道浩

構成:田島怜子(BEPPU PROJECT)

山出淳也

NPO法人 BEPPU PROJECT 代表理事 / アーティスト

国内外でのアーティストとしての活動を経て、2005年に地域や多様な団体との連携による国際展開催を目指しBEPPU PROJECTを立ち上げる。別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」総合プロデューサー(2009、2012、2015年)、「国東半島芸術祭」総合ディレクター(2014年)、「in BEPPU」総合プロデューサー(2016年~)、文化庁 第14期~16期文化政策部会 文化審議会委員、グッドデザイン賞審査委員・フォーカス・イシューディレクター (2019年~)。
平成20年度 芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞(芸術振興部門)。

5月になりました。学校や職場など新たな出会いの多いこの時期、みなさまいかがお過ごしでしょうか。昨年は世界のすべての人々にとって、これまでと大きく変わった1年だったように思います。

この1年間、BEPPU PROJECTの事業もさまざまな影響を受け、我々の信念に立ち戻りながら今すべきことや、その進め方を模索してきました。そのため例年よりも立ちあげが遅れ、一部のプロジェクトは年度末ギリギリまで進行することとなりました。

その1つが、「国東(くにさき)半島カルチャーツーリズム推進事業」です。大分県東部の国東半島に位置する豊後高田市・国東市がそれぞれ組織する実行委員会が実施するこの事業は、半島内に恒久作品を設置することで大分県・国東半島の更なる魅力増進を図り、地域固有の文化に触れる体験とともに鑑賞機会を提供することで、ファン増加につなげることを目的としており、2021年度にはこれらの地域資源と作品をめぐるツアーを販売する計画が進められています。BEPPU PROJECTは本事業の企画・運営を受託し、昨年度は国東市と豊後高田市に3名の作家による5作品を制作。3月末には国東市で、アーティストの島袋道浩さんによる作品がお披露目となりました。

「場」をつくり、「こと」を起こす

島袋さんは、1969年兵庫県生まれ、世界を旅するアーティストです。

島袋さんの作品は一般的にイメージする絵画や彫刻などとは異なります。1998年に発表した「165メートルの人魚と旅をしている」は、福岡県のあるお寺に伝わる人魚伝説を海外で出会った人々に伝え、そのイメージを絵や刺繍などで表現してもらうというアートプロジェクトです。1.65メートルの人魚の逸話が、島袋さんが媒介となって人から人へと伝わり、いつの間にか165メートルの人魚の話に変わっていくように、それぞれの思いを巻き込みながら国や時間を越えて変化し、人々の想像力によって新たな物語が紡がれていきました。

このように、さまざまな人が出会い関係を結ぶ「場」をつくり、「こと」を起こしていくのが彼の作品の特徴です。

今回、島袋さんは国東市で何度もロケハンを重ね、さまざまな人と出会い、3つの場所で海にまつわるプロジェクトを制作しました。

海に丸くせりだした国東半島は、かつては朝鮮半島や瀬戸内海からさまざまなものが流入してきた、いわば九州の玄関口でした。島袋さんは海岸線を眺めながら、この半島を「パラボラアンテナのようだ」と言いました。これは地形に由来する地域性と、歴史的な背景を的確に捉えて言い得た言葉です。

ロケハン中の島袋道浩さん

大分空港から車でおよそ15分の旭地区では、小高い丘に2つの作品を設置しました。かつて神社のあったこの丘の入口に残された鳥居へと真っ直ぐに伸びる参道は、年に2回、太陽の軌道とぴったり重なります。頂上からは瀬戸内海がパノラマのように広がります。海原を行き交う船や海沿いを走る車、滑走路から飛び立つ飛行機だけでなく、かつて栄えた水軍(古代から近世にかけて活躍した水上武力集団の総称)までもが、この景色の中をゆっくりと移動しているように見え、日常とは異なる時間が流れているように感じます。

島袋さんは、この海の向こうに思いを馳せ、その先につながっているどこか違う土地を想像してほしいと考え、ここに2つの作品をつくりました。

《光る道—階段の無い参道》撮影:島袋道浩

階段がなく傾斜の急な参道に設けられた長さ約140メートルの手すり状の作品《光る道—階段の無い参道》は、夜になると光り、大地と空をつなぐ一筋の道のようにも見えます。

《首飾り—石を持って山に登る》は、色も形も大きさもさまざまな石を環状に並べた作品です。まるで年齢や国籍の異なる人々が集まって輪になっているかのように見えるこの作品は、ここに登る人々が意思を持って石を持ち寄り、置いたり重ねることで成長し続けます。

《首飾り—石を持って山に登る》撮影:島袋道浩

国東市と豊後高田市の市境には、干潮のときだけ現れる砂州を渡ると、馬ノ瀬(まのせ)と呼ばれる小島へ行くことができます。《マノセ》は、自然がつくった彫刻のようなこの場所を望む堤防に記された、3つのメッセージから成る作品です。

《マノセ》撮影:島袋道浩

来浦(くのうら)地区の埠頭に設置された《息吹》では、壊れて長年放置されていた外灯を蘇らせました。不規則に明滅を繰り返す外灯は、長い眠りからやっと目覚め、深く呼吸したり、時に何か語りかけたりしているかのようです。そこにある風景に少し手を加えることで浮かび上がる「終わり」と「始まり」、そして「新たな出会い」を感じさせるこの作品は、世界をずっと見てきた神の息吹をも想起させます。

《息吹》撮影:島袋道浩

次ページ:いつか帰る場所を照らす光

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