EVENT | 2020/11/19

オンラインとリアルは共生できるか?ウェブ会議のニューノーマルを考える「コンベンションの次の常識」レポート

一般社団法人 日本コンベンション協会 人材育成委員会 吉原謙氏 関敦氏
新型コロナウイルスの感染拡大により、大規模イベ...

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一般社団法人 日本コンベンション協会 人材育成委員会 吉原謙氏 関敦氏

新型コロナウイルスの感染拡大により、大規模イベントや国境をまたいだ移動が制限され、ウェブを利用したリモート会議やイベント企画が日常的になるなど、MICEを取り巻く環境が大きく変化している。

そんな中、一般社団法人 日本コンベンション協会(JCMA)は10月15日(木)、「コンベンションの次の常識」 と題し、「ウェブ会議」をテーマにオンラインセミナー形式の勉強会を開催。ウェブ会議の制作・運営の最先端に関わるPCO(国際会議・学会運営)、映像/音響技術、ネットワーク技術、イベント制作の視点から計4名のパネルディスカッションが行われ、いかにウェブ会議を成功させるか、主催者や参加者の満足度を高めるかについて議論が行われた。

登壇したパネリストは、株式会社コングレの加藤雄太氏、株式会社教映社の大津有加里氏、株式会社キッセイコムテックの中澤賢氏、株式会社シー・エヌ・エスの古田旭氏。モデレーターは人材育成委員会の吉原謙氏と関敦氏が務めた。

一般社団法人 日本コンベンション協会 人材育成委員会 委員長 小泉靖氏

コロナ禍のコンベンション、課題と取り組み

システム開発のキッセイコムテックの中澤氏は、コロナ禍による変化について、2、3月はキャンセルの依頼が急増し、4、5月は現場がほとんどなし。6月からウェブ会議や映像配信用の手配が中心に徐々に案件が増えたものの、来場者向けの無線LAN構築の話はなく、売上は前年と比べると低い状況だと明かした。

技術部門としてインフラ側から見たオンラインイベントの課題について、まずインターネット回線の速度が安定しないという点を挙げた。ステイホームによるストリーミング利用の拡大等により、ベストエフォート型のフレッツ回線は速度が遅くなるケースがあるという。また、専用線を引くとフレッツ回線に比べ何十倍もコストがかかり、「今はフレッツ回線を使って、どれだけ速度を安定させるかが課題」と中澤氏。またクラウドやインターネットの障害の発生、視聴者環境が多様ですべてに対応ができない等の問題点を述べた。

これらの課題の対策案として、種別の異なる2系統の回線を用意、機材も常時2系統で映像をアップロードすることを提案。またクラウドやインターネットの障害に備え、バックアップサービスの用意することを推奨し、「コストが掛かりますが、なるべく多くの対策をおすすめします」と述べた。

株式会社キッセイコムテック 中澤賢氏

クリエイティブ・プロダクションのシー・エヌ・エスの古田氏は、リアルイベントの案件が一気になくなる中で、まず行ったことは「社内外共に、イベント制作における“イベント”の概念・捉え方の再定義」と語った。オフラインのセミナーは聴講者の反応が見られるため講演者に主導権があるのに対し、オンラインのウェビナーは「ながら視聴」ができるので視聴者に主導権があると、メディア特性の違いを解説。「記憶への粘着力」に焦点を充て、クライアント企業の持っている価値に立ち返り、オンラインイベントをどのように特別体験にするかを考えるようになったと説明した。

またオンラインイベントは「主催者にも選択肢が増えたが、参加者にも選択肢が増えた」とし、今後はリアルイベントに重心を置きオンラインで来られない人をケアしたものと、オンラインイベントに重心を置いてリアルは限られた人に向けたものの2種類の考え方があり、目的に応じて使い分けられると見解を述べた。そして「リアルとオンラインの関係性の作り方が大事で、リアルからオンラインに発信していくか、オンラインからリアルに寄っていくかを考えると新たな可能性が見えてくるのではないか」と提言した。

株式会社シー・エヌ・エス 古田旭氏

映像関連機器のレンタル・販売を手掛ける教映社の大津氏はテクニカルの見地から、リアルでは問題が起きてもクライアントとスタッフが揃っていて現地ですり合わせが出来たが、オンラインでは始めた時にはすべてを仕上げていなければならず、問題を修正する時間の余裕がないと告白。オンラインイベントディレクターというポジションがおらず、これまで各セクションがやるべきことの線引きが曖昧になっていたが、最近はクライアントのソフトウェアへの理解が高まるなど解決に向かっているとのこと。今後は、オンラインイベントのメリット・デメリットの相互理解が重要であるとし、いかにして人を動かしていくかを考える必要があると語った。

株式会社教映社 大津有加里氏

国際会議や学術会議の運営を担うコングレの加藤氏は、現地開催継続に向け業界として取り組むべきこととして、主催者、参加者、協賛企業にJCMAで統一のフォーマットのアンケートを実施し、リアルに何が求められるのかを徹底的に分析するよう提案した。また、映像や音響による演出の工夫や参加者がコミュニケーションを取れる仕組みなど、感動体験を創出することを念頭に置き、コロナ禍である今の内から思考を巡らす必要があるとした。実際のところウェブでの参加者満足度は高く、周囲からは今後もウェブが牽引すると意見を耳にしているという加藤氏。「あぐらをかくことなく、リアルが戻ってくるかは業界全体で考えていきたい」と語った。

株式会社コングレ 加藤雄太氏

今回の勉強会は映像センター 東雲ラボから配信された。「マリーナベイサンズのよう」とのコメントも寄せられ、パネリストからも「聞き取りやすく、喋りやすい。環境が良い」と好評を得た。

一般社団法人 日本コンベンション協会 人材育成委員会 副委員長 本多志郎氏


一般社団法人 日本コンベンション協会