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「自宅とカフェの往復型テレワーク」に飽きた人に知らせたい、多拠点ワークのススメ。月額4万円で全国住み放題の「ADDress」
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  • 2020.03.25
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「自宅とカフェの往復型テレワーク」に飽きた人に知らせたい、多拠点ワークのススメ。月額4万円で全国住み放題の「ADDress」

写真はADDress利用者が泊まれる物件のひとつで、徳島県の西に位置する三好市池田町のゲストハウス。大きな古民家には、長い縁側とバーベキューを楽しめる広々とした庭があり、地域の方々との交流会などが定期的に開催されている

“address.love”というドメインを見てピンとくる人はかなりのシェアリングサービス通であろう。「月額4万円から全国住み放題」というノマド人間には夢のような「ADDress(アドレス)」というサービスだ。日本全国に40(2020年3月時点)の拠点を持ち、会員になればどの拠点でも住み放題となる。個性的な家守やノマドな人々との交流も可能だ。

新型コロナウィルスの感染拡大を契機にテレワークを本格的に初めた企業は多いが、改めてこのようなサービスを活用してみようと考える人が若干ながら増えているという。

このサービスを立ち上げた佐別当隆志(さべっと・たかし)氏に話をうかがった。

(※本インタビューは2020年3月2日に実施したものです)

取材:高見沢徳明・神保勇揮 文:高見沢徳明

佐別当隆志

株式会社アドレス 代表取締役社長

株式会社ガイアックス在籍中、2016年1月に一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し、事務局長に就任。株式会社アドレスを設立し、2019年4月より、定額全国住み放題サービス「ADDress(アドレス)」を開始。幸福度が上がるようなサービスを伴うシェアリングエコノミーの普及を目指す。

月額4万円で全国各地の物件が住み放題

株式会社アドレスの代表取締役社長 佐別当隆志氏

ーー まずADDressの利用方法を教えて下さい。

佐別当:会員料金は税別4万円で最低3カ月から、この費用で専用ドミトリーのベッドもしくは個室が利用できます(個室の場合はさらに別途予約が必要)。光熱費・水道代などはこの中に含まれており、初期費用も不要です。契約者と同伴であれば、二親等・固定のパートナー1名まで追加費用なしで利用できます。

共有部分には家具・家電・アメニティが完備されており、着替えやお風呂グッズ、滞在中の食料などだけを持ってきていただければ大丈夫です。

ーー ADDressで泊まれる物件は全国に40拠点(2020年3月現在)あり、魅力的な物件ばかりです。物件はどのように探しているのでしょうか?

佐別当:各地域の不動産仲介会社の方にお願いしていますが、最近では地方自治体が声をかけてくれるケースも増えてきてます。自治体は住まなくなった・使わなくなったけれど買い手のいない物件の譲渡が増えているところも多いので、「この物件、使えませんか?」という相談も多いですね。

千葉県にある南房総邸。玄関を開ければ徒歩30秒で富岡海水浴場へ。シュノーケリングや釣り、SUPなどのマリンスポーツが楽しめる贅沢な立地。すべての個室とコワーキングスペースから海を一望できる

ーー ADDressはどのようなビジネスモデルで運営しているのでしょうか?

佐別当:当社が物件を一定額で借り上げ、サブリース(転貸)のかたちで利用者のみなさんと当社がマンスリーマンションのようなかたちで賃貸借契約を結び、ご利用いただいています。

最近はホテル・旅館を1部屋単位で借り上げるケースもあります。住宅と同様に「1部屋を毎月いくら」というかたちで借りるので、宿として運用するよりオーナーさんの収益は落ちますが、それでも低稼働に悩んでいるホテル・宿が多いのも事実であり、安定収入源として活用いただいています。

普通の不動産ビジネスですと、各物件の稼働率が悪い場合シビアに撤退も視野に入れなければいけないのですが、ADDressはサブスクリプションのビジネスモデルですので、例えば「物件単体でみると赤字だけれど、新規顧客獲得のフックになっている」といった場合、ある程度戦略的に考えられるという利点もあります。

ーー ADDressの社員はどこで働いているんですか?

佐別当:基本的には東京と関西に拠点があり、そこから各自働いてもらっています。

あと各物件の管理人である「家守」は業務委託です。募集もしているので興味ある方はぜひ声をかけてほしいですね。家守の中には住み込みにする代わりに無給という人もいてそういう働き方も可能だったりします。

テレワーク上級編としての「地方・リゾート地で働く」という魅力

写真は熊本県の真ん中、宇城市(うきし)にある、「1万冊を超える古本」に囲まれた、明治建築の町屋。庭に面した和風の個室が利用でき、隣にはオフィステーブル付のコワーキングスペースも

ーー 利用者はどんな人がいるのでしょうか?

佐別当:元々基盤としての自宅がある人が約8割です。いわゆる「アドレスホッパー」の人はゼロではないですが少数派ですね。

あとはすでにテレワークを実践している人の利用が多いです。今までにやったことのない人がいきなり多拠点生活というのは考えにくいからだと思います。

ーー テレワークといえば、新型コロナウィルス感染拡大の影響で新規導入した企業が増えているとも聞きます。ADDressの利用者数も増えているのでしょうか?

佐別当:明確にその影響かと言われると難しいところですが、問い合わせ・申込みはゆるやかなものの増えています。

実際、自宅という環境は意外と仕事に向いてないというケースも多く、書斎のようなが執務スペースがない、Wi-Fi環境さえないようなケースも多々あるため、「外で仕事がしたい」というニーズがあるようですね。

また、元々「いつもと違う環境で仕事をしてみたい」と考えていた人がこの機会を利用してワーケーション的にADDressを利用するようになってきています。テレワーク初心者がいきなりADDressを使うのではなく、以前から実践している人が多拠点生活に憧れてこっちにシフトしてくるイメージです。

ーー 法人会員制度もあると聞きましたが、どんな内容でしょうか。こちらの問い合わせが増えたりはしているのでしょうか?

佐別当:法人会員は1アカウントで3人まで利用可能で、8万円という制度です。3人で合宿的に使いたいというニーズにもフィットしています。ただこちらも問い合わせや申し込みが急増しているというほどではないですね。

採用強化・福利厚生としての多拠点ワーク

写真は別府の温泉旅館。24時間入り放題で、宿から徒歩5分の場所にコワーキングスペースもある

ーー 都市部以外で、そして多拠点で働くということの魅力やメリットを教えてください。「単純に楽しい」「気分がリフレッシュされて新しいアイデアが出るかも」といったざっくりとしたイメージは湧くのですが…。

佐別当:「企業全体の生産性」という観点ですと少し難しいですが、人手不足のこの時代、優秀な人に働いてもらうという意味でも、多様な働き方を認める方向に舵を切るべきだと思っています。

「平日5日間・9時から18時まで働く」という固定された勤務時間でなければ本当にいけないのか、その書類はデータではなく本当に紙でなければ処理できないのか。要らないものをできるだけ減らしていくという「ミニマリスト」の考え方が大事だと思います。

あとはちょっと特殊なケースですが、比較的大きめな医療法人から「各地域の訪問診療を担当する医者の採用を増やすために、魅力的なシェアハウスのような集合住宅をつくれないか」という相談を受けたことがあります。全国を飛び回る営業さんを抱えている会社などはADDressの法人会員になってもらって「この地域に行った時はこんなに魅力的な施設に滞在できるよ!」とアピールする方法もあるのかもしれませんね。

ーー ADDressのおすすめ拠点はどこですか?

佐別当:個人的には千葉県の「南房総邸」はいいと思います。玄関から30秒の距離に富岡海水浴場があり、レジャーも楽しめますのでワーケーション的に使える設備が整っています。集中ルームもありますので「仕事を5時間で終わらせて、残りの3時間で遊ぶぞ!」というメリハリがつけられるかもしれません。

都会の雑踏から脱出して釣りやサーフィン、地元食材での料理、春キャンプなどを楽しみに来るのもいいでしょうし、家守のオススメのローカルなお店探索もぜひ試してみてほしいです。例えばスナック巡りとか。ただ地方に来て施設を使うだけじゃなくて、地元民と交流するのが最も楽しいと思いますね。

住居や移動のコストが下がることでやってくる、クリエイティブな未来

南房総の宿

ーー 御社は多拠点生活のための住居コストを下げるだけでなく、そのための移動コスト削減にも取り込んでいます。ANAと連携した期間限定の国内線航空券の2往復定額制(3月末まで)、カーシェアリングサービス「NOREL(ノレル)」との連携(3月末まで利用無料)など、発表時にはいずれも話題になりましたね。

佐別当:ANAとの実証実験では、現在30名ほどが参加しています。「飛行機の平日の空席率が3割〜4割あってもったいない」という相談を受けたのが開始のきっかけでした。

僕らはADDressというサービスを「ライフプラットフォーム」と説明しているんですが、こうした生活関連のサービスとは非常に相性が良いので、今後も他社とのコラボレーションを続けていきたいですね。

こうした移動コストも下がってくると、利用者のみなさんももっと面白い使い方ができるようになってくるんです。

ーー 「もっと面白い使い方」とはどういうことですか?

佐別当:例えば2つ以上の学校に同時に通ってみるという「デュアルスクール」という取り組みがあります。これは現在、日本においては「三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏に住む小中学生(中2まで)が、期間限定で特定地域(徳島・熊本・長野など)の学校に通う」というかたちでのみ認められており、事例もまだわずかではあるものの、編入届や住民票の異動が必要なく、出席日数にもカウントできるという制度です。

実際、ADDressの利用者で宮崎市内の学校に通うお子さんがいまして、短期間熊本の学校に通うというケースもありました。デュアルスクールの制度自体は数年前からあったんだけど、行き来するための移動・住宅コストが高い状態が続いていたんです。そこにADDressというサービスがあって、利用してみようという流れになったようですね。

ーー 今後新たに取り組んでみたいことはありますか?

佐別当:僕たちは1軒1軒の魅力や収益性を向上させたいということ以上に、各地域間の結びつきを強める・新たにつくることができないかと考えています。まずは「地方の過疎化」という問題を解決するために、人が集まる仕組みをつくる。そして一物件内の限られた交流をするだけでなく、移動と交流を全国に広げることによって、地域という物理的な境界に縛られない共同体ができる可能性もあるんじゃないかと考えているんです。

具体的には、地域の企業や団体との連携をもっと強化していきたいです。例えば地方銀行に空き家リノベーション融資の仕組みをつくってもらうですとか、地域のインフラ会社と連携し空き家活用の初期費用を出していただき、電気料金やガス料金での回収を目指すといった仕組みなどです。地域の商工会に都心からの複業人材の受け入れ、地域の学校とのデュアルスクール制度ももっと活発に行われるようになればいろんなコミュニティが生まれ、多拠点生活をする人も増えると思います。

「家は一つ、住所も一つ」という常識は過去のものにできる時代がやってきたと思います。私どもとしては多拠点で暮らす選択肢を提供しつつ、日本の豊かな自然、古民家や地域の良さを守り、活かしていく社会に向けて利用してくれる方々とぜひ一緒に取り組んでいただけたらと考えています。


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