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文:岩見旦
16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんによる国連気候行動サミットでの演説が注目を集めるなど、気候変動問題に熱い視線が注がれている。
そんな中、スウェーデン人の学者が気候変動対策として驚くべき提言をしたと物議を醸している。
人肉食は古代からの「保守的」タブー
今年9月にストックホルムで開催された、学術シンポジウム「ガストロ・サミット」で、ストックホルム商科大学のマグナス・ソダーランド教授は、気候変動対策として肉や乳製品の代わりに人肉を食べることを提案する講演を行ったと『The Epoch Times』が報じた。これは亡くなった人の肉を表しており、決してお互いを殺し合うことを提唱しているわけではない。
「人間の肉を食べることを想像できますか?」というタイトルで行われたこの講演で、人肉を食べることを古代からの「保守的」タブーとしつつも、今後食糧不足がますます深刻化することを受け、ペットや昆虫を食べることに対して柔軟に考える必要があると訴えた。そして、少しずつ人間の肉が導入されれば、十分な人が食べるだろうと明かした。
実際には多くの人が抵抗すると想像するかもしれないが、行動科学者であるソダーランド教授によると、最終的に人肉を食べるという「正しい決断を下す」ことを「仕掛ける」ことができるとしている。
この講演の後、聴衆の8%が人間の肉の試食を希望すると回答。ソダーランド教授自身も「私も幾分か抵抗感を覚えるだろうが、過度に保守的なわけではない。少なくとも試食してみる」と答えた。
死んだ仲間の遺体を儀式的に食べる習慣が1960年代まで行っていたパプアニューギニアの少数民族フォレ族は、クールー病と呼ばれる病気が多発。狂牛病に似た神経変性疾患で、絶滅の危機に瀕した。健康面へのリスクも含め、人肉を食べることへの障壁は決して低くないだろう。
迫る気候変動問題の臨界点
1973年公開のSF映画『ソイレント・グリーン』で描かれた舞台は、人口爆発で食糧不足に陥った2022年のニューヨーク。一部の特権階級だけしか、本物の肉や野菜が手に入れられなくなり、多くの貧民は「ソイレント・グリーン」と呼ばれる合成食品を食べて、飢えを凌ぐ生活を送る。この食品の原料が人間の肉であったという事実が判明するという衝撃作だ。ソダーランド教授の提案は、行き過ぎた文明批判を含んだこの映画を思い起こさせる。
私たちが牛肉や豚肉と並んで、人間の肉を食べる将来が来るとはとても思えないが、そんなありえない選択を迫られるほど、気候変動問題の臨界点が目の前まで近付いていると危機感を持った方がいいだろう。