CULTURE | 2024/07/27

日本独自の伝統文化に学ぶイベント・ステージ演出
いまこそお勧めしたい歌舞伎観劇

市川團十郎主演 「星合世十三團」 観劇レポート

文:カトウワタル(FINDERS編集部)

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今まで鑑賞してこなかったことを後悔

先日、53歳にして生まれて初めて歌舞伎を鑑賞することができた。幸運なことに縁あって歌舞伎役者の中村雀右衛門さんとお知り合いになり、ご出演されている市川團十郎出演 「星合世十三團」 をご紹介いただき、千秋楽に鑑賞する機会を得た。

お恥ずかしながら、この歳になり初めての歌舞伎鑑賞。端くれではあるが、30年ほどイベント業界に関わってきて、数多くのイベントやステージの演出に携わってきた者として、まず最初に結論から申し上げると、「なぜ今まで見にこなかったんだ!」 の反省しかない。

ご存じの方も多いかと思うが、イベントにおける舞台用語には、歌舞伎で使われる用語も多い、舞台に向かって右側を 「上手」、左側を 「下手」 と呼ぶことや、ステージから観客席中へと延びる通路をさす 「花道」などはその代表だろう。また特に若い世代にとっては、一般的にもよく使われる 「十八番」「板につく」「裏方」「お家芸」「大立廻り」「大詰め」などといった多くの言葉が、もはや歌舞伎由来ということを知らない人も多いのではないだろうか?

鑑賞にあたり、いくつかの歌舞伎入門サイトを閲覧してみたところ、「歌舞伎は本来庶民の娯楽であり、気軽に楽しむことができるもの」 とあり、現代に置き換えるとコンサートやライブのようなエンターテイメントで、それぞれの時代の流行やファッションも取り入れる自由なものとあった。また解説を聞くことができるイヤホンガイドのレンタルもあるといい、気軽な気持ちで歌舞伎座に赴くことができた。

いよいよ歌舞伎座へ

目を離せない圧巻のステージ演出

今回の席は贅沢にもなんと前から三列目、下手の花道に近い絶好のポジションだった。またイヤホンガイドからは開演前に大まかなストーリーや見どころ、各出演者の紹介から歌舞伎の歴史なども学ぶことができ、よりスムーズに演目の世界に入り込むことができた。

演目の 「星合世十三團」 については、公式サイトによると以下のような解説があった。

「三大名作の一つ『義経千本桜』のドラマ性に焦点をあて、娯楽性に富んだ演出や新たな趣向、宙乗り、大立廻りを取り入れ、源平の時代に生きた人間たちの運命と修羅を描いた壮大な物語で、いわば『義経千本桜』のすべてが凝縮されたものとなっています。古典の名作に新たな息吹を吹き込んだこの作品は、令和元(2019)年7月の初演当時、市川海老蔵(現 團十郎)が碇知盛やいがみの権太、狐忠信をはじめ、主要な13役を鮮やかな早替りで見せるという、これまでにない試みも好評を博しました。」

作品自体の感想はというと、舞台装置 (特に舞台転換はどうやっているのか想像もできない) や太鼓や三味線の生演奏、照明演出にいたるまで、まさに圧巻。舞台演出に携わる者であれば、「あ、これ真似したい!」 というシーンが数多く見つかるはずだ。「なぜ今まで見にこなかったんだ!」 という大きな理由のひとつはこれであり、ぜひ若い人には劇場に足を運び何度も体感して貰いたいと思った。

また、舞台用語しかり、歌舞伎を知ることは、日本の伝統文化や、舞台演出を行う上での基礎や技術などイベントを学ぶことに通じ、自身の企画や仕事に厚みを持たせることができると確信した。

歌舞伎座「七月大歌舞伎」『星合世十三團』告知映像

本作の見どころである主役を務めた市川團十郎による13役の鮮やかな早替りは、そのアイデアに驚くばかりで、舞台が激しく動く見せ場では一瞬たりとも目が離せなかった。

さらに、主役の市川團十郎が、人物相関図を背景に解説を行うシーンであったり、滑稽な表情や動き、花道上への宙乗り、エンディングでの幕いっぱいに広がる映像演出、特効による桜吹雪など、歌舞伎演出の大胆さ、自由さを存分に楽しむことができた。

と言う訳で、一回の鑑賞ですっかり歌舞伎の世界に魅せられてしまった。ぜひまた近々歌舞伎座を訪れて鑑賞しようと思うと同時に、今回重要なキャラクターである 「静御前」 を演じられた中村雀右衛門さんに舞台裏についてお話しを伺うのも大変楽しみだ。

尚、機会があれば、FINDERSでも中村雀右衛門さんへのインタビュー記事や、歌舞伎を学ぶためのイベントなども企画していきたいと思うので、ご期待いただきたい。

 「静御前」 を演じられた中村雀右衛門さん (公式Facebookページより)

歌舞伎総合公式サイト 「歌舞伎美人 (かぶきびと)」
https://www.kabuki-bito.jp/

五代目中村雀右衛門オフィシャルウェブサイト
https://jakuemon.com/

中村雀右衛門さん講演情報
リニューアルオープンする東京・世田谷区民会館の柿落し公演に出演
〈シリーズ和・華・調〉世田谷区民会館 杮落し公演
2024年8月11日(日・祝) 15:00 開演
第1部 歌舞伎舞踊「雛鶴三番叟」(中村雀右衛門・大谷廣松)

世田谷区民会館
https://www.setagaya.co.jp/kuminkaikan/setagaya/