国内最大級のインターネットテクノロジーイベント 「Interop Tokyo 2026」 が、2026年6月10日(水)から12日(金)までの3日間、千葉・幕張メッセで開催される。
通信、クラウド、AI、セキュリティなど幅広い分野の最新技術が集まる総合イベントだが、今年はとりわけAIをめぐる技術と社会実装、その基盤となるインターネットインフラの動向が大きな軸となる。
今回のテーマは、「AIとインターネットの次章。」。生成AIの普及が一気に進み、AIが業務や社会のさまざまな場面に入り込み始めた今、その活用面だけでなく、それらを支えるネットワーク、データセンター、セキュリティ、運用、相互接続性まで含めて見直す局面にある。Interop Tokyo 2026は、そうしたAI時代の全体像を、展示、カンファレンス、特別企画、実証ネットワークを通じて立体的に捉えられる場になりそうだ。
FINDERSでは今後、今年の 「Interop Tokyo 2026」 について、主催者企画や注目セッション、キーパーソンへの取材を交えながら、複数回に分けて紹介していく予定だ。まず初回となる本稿では、Interop Tokyoを運営する 株式会社ナノオプト・メディア 代表取締役社長であり、プロデューサーを務める 大嶋 康彰氏 へのインタビュー取材をもとに、今年の見どころを紹介したい。
AI時代の全体像を示す場として、今年のInteropが掲げるもの
「厳密に言えば“すべて”ではないにしても、システムの観点ではAI社会に必要なもの、なくてはならない要素がここに集まる、というのは大きいと思います」
インタビューの冒頭、大嶋氏は今年のInteropの位置づけをこう表現した。
同氏が強調するのは、今回のInteropが単に “AI関連の展示が多いイベント” ではないという点だ。AIの活用が広がる一方で、それを支えるインフラや運用の重要性も急速に高まっている中、Interopにはデータセンター、情報通信、セキュリティといった基盤領域から、その基盤上で動く活用・開発・ガバナンスまで、AI時代に必要とされる情報が一堂に会する。そしてその構成要素はまさにこれからの社会インフラ構成と重なり、「Interop Tokyo 2026」 のキービジュアルでも表現されているという。
また今年は展示ホールも拡大、幕張メッセの展示ホール
3から 8までを使って開催される。AI関連市場の動きを背景にイベント自体も規模を広げ、従来の来場者に加え新たな層への訴求も視野に入れている。
活用の先にあるセキュリティとリテラシー ―「AI NATIVE EXPO」 初開催のねらい
今年のInteropのもっとも注目すべき取り組みのひとつが、展示ホール3で開催される 「AI NATIVE EXPO」 だ。加えて、「Vision AI EXPO」 も併催され、画像認識やビジョンAI、いわゆるフィジカルAIの領域もあわせて紹介される。
これまで約10年間にわたり展開してきた前身イベント 「アプリジャパン」 は、スマートフォンアプリ開発の盛り上がりを背景に始まった企画だった。しかし、ここ数年で来場者の関心は、生成AIやAIを使った開発、活用、運用へと大きく移ってきた。そうした変化を受け、今年は名称を 「AI NATIVE EXPO」 へと改め、AI時代に相応しいイベントとして新たなスタートを切ることとなった。
大嶋氏によれば、ここで扱うのは単なるAI活用の成功事例紹介だけではない。AIの普及に伴って避けて通れない、運用統制やガバナンス、そしてセキュリティやリテラシーの問題を大きなテーマとして取り上げるという。
「生成AIを何となく使っている人、そういった会社の上層部、あるいは経営者層も含めて、仕組みやリスクを十分理解しないまま使っていると本当に危ない」
AIは業務効率化や新しい価値創出を後押しする一方で、使い方を誤れば情報漏えいやシステム障害を招く可能性もある。現場で管理されないままAIツールが使われる “シャドーAI” のような課題も現実味を帯びている。さらに、攻撃側もAIを取り込むことで、セキュリティリスクはより複雑になっていく。
「AIで防御する側と、AIを使って攻撃する側。その両方が同時に進化しています」
そうした状況のなかで大嶋氏が繰り返し語ったのが、「AIに使われない人間」 でいることの大切さだ。AIの答えをそのまま受け取るのではなく、自分で判断するための知識や視点を持ち、その上でAIに任せる部分を見極める。そのリテラシーをどう底上げしていくかも、今年のInteropが投げかける論点の一つと言えるだろう。
「AI
NATIVE EXPO」 では、午前中を中心にNVIDIA、Microsoft、Google、AWS、Snowflakeといった企業の講演が予定されているほか、午後には生成AIを活用した新しい開発スタイルであるVibe CodingやClaude Code、AIエージェント活用、ガバナンスなど、より実務に近いテーマも扱われる予定だ。AIを 「使う」 だけでなく、「どう向き合うか」 まで含めて考える場になりそうだ。
拡大する 「Data Center Summit」、AIインフラを支える現場の熱量
「データセンター分野はこのところ非常に成長しています。これまでInteropには来場されたことがないという方にも、ぜひ来ていただきたいと思っています」
続いて大嶋氏が今年の大きな見どころとして挙げたのが、昨年に引き続き盛り上がりを見せている主催者企画 「Data Center Summit」 だ。AIの普及が進むにつれ、計算資源や電力、冷却、設備、通信といったデータセンター周辺の重要性は一段と高まっている。
「Data
Center Summit」 は、昨年の倍の規模で参加企業が集まる見込みだという。プレイヤーの裾野も広がっており、ファシリティや設備関連の企業の出展も増えている。AIの広がりによって、データセンターはもはや一部の専門事業者だけの話ではなく、社会基盤として注目される存在になっていることがうかがえる。
基調講演においても、「Data Center Summit 特別パネルセッション」 が行われ、日本データセンター協会 (JDCC) の副理事長兼運営委員長を務める 東京大学大学院 情報理工学系研究科 の 江崎 浩教授、同協会の理事長を務める さくらインターネット株式会社 代表取締役社長の 田中 邦裕氏、東京電力ホールディングス の上席フェロー 岡本 浩氏 が登壇する。AI時代の基盤整備をどう捉えるかを考えるうえで、注目度の高いセッションになりそうだ。なお、FINDERSでは、今後江崎教授へのインタビュー取材も予定しており、「Data
Center Summit」 のさらに深掘りした情報をお届けしたい。
メディアのIP化と宇宙通信、拡張するインターネットの接続領域
そのほかの見どころとしては、放送・映像・メディア業界とIPネットワーク技術の融合をテーマにした 「Network × Media Summit」 と、宇宙産業と通信・ICT技術の融合をテーマにした 「Internet x Space Summit」 の主催者企画だ。
「Network
× Media Summit」 で中心となるのは、放送インフラのIP化である。放送現場では長年、SDIベースの仕組みからIPベースへの移行が語られてきたが、設備投資の負担や現場スキルの転換といった課題もある。だからこそ、現時点でどこまで実装が進んでいるのか、現場がどのように変わりつつあるのかを知る機会として、この企画の意義は大きい。
また今回のInteropでは、出展企業から提供された最新の製品・サービスを使用し、トップエンジニアが幕張メッセに集結して構築されるライブデモネットワーク 「ShowNet」 の中でもさまざまな 「Network × Media Summit」 関連のデモンストレーションが行われるという。より詳しいデモの内容や詳細については、ShowNet NOC チーム の 国立天文台、北陸先端科学技術大学院大学 の 遠峰 隆史氏 と、Media
over IP 特別企画プロデューサー を務める 長谷川 幹人氏 への取材も予定しているので、改めて紹介したい。
宇宙産業と通信・ICT技術の融合をテーマにした 「Internet x Space Summit」 では、アルテミス計画をはじめ、月面や火星を視野に入れた宇宙開発の進展を背景に、通信やインターネットの役割が改めて問われる場を設ける。大嶋氏は、「月にインターネットをどう構築するのか」 「宇宙にデータセンターを設置する可能性はあるのか」 といったテーマに触れつつ、通信・ICTの観点からも宇宙を捉えることの重要性を指摘する。
昨年、一昨年に続いて、今年も宇宙は重要なテーマの一つとして扱われる見通しで、長年にわたり Interop Tokyo 実行委員長 を務める 慶應義塾大学 の 村井 純教授 も力を入れており、村井教授へのインタビュー取材も行う予定だ。
技術と社会の変化を実感する場としてのInterop
全体を通して見ると、今年の 「Interop Tokyo 2026」 は、「AI」 という言葉を前面に掲げながら、その中身をインフラから応用までを紹介するイベントだ。そして 「AI NATIVE EXPO」 と 「Vision AI EXPO」 では、活用だけでなくリスクやリテラシーまで含めた論点を提示し、「Data Center Summit」 ではAI時代を支える社会基盤について深掘りする。さらに、「Network × Media Summit」 と 「Internet x Space
Summit」 では、IPネットワーク技術が放送や宇宙へと広がっていく最新情報などを得ることができる。
加えて、Interopの代名詞ともいえる 「ShowNet」 の存在も見逃せない。会場内に実際のネットワークを構築し、多数の機器や技術を接続しながら相互運用性を検証するこの取り組みは、技術の高度化が進む今だからこそ、その価値は一層高まっていると言える。
「世の中がどう動いているのかを実感するために、Interopに来る。そういう場になればいいと思っています」
今年の 「Interop Tokyo 2026」 は、すでに500を超える企業の出展が決定しており、会期を通じ、約15万人の来場が見込まれている。FINDERSでは今後、こうした主催者企画や見どころについて、キーマンへのインタビュー取材などを通じて複数回にわたって紹介していく予定だ。
Interop Tokyo 2026
会期:2026年6月10日(水)~12日(金)
会場:幕張メッセ (国際展示場 展示ホール3~8 / 国際会議場)
主催:Interop Tokyo 実行委員会
運営:(一財)インターネット協会 / (株)ナノオプト・メディア
参加費:無料(展示会・講演) WEBからの登録制・会期3日間有効
公式ホームページ
https://www.interop.jp/