AI翻訳が日常投稿を世界に開き、ミームは 「真似る」 から 「編集する」 へ
TBWA HAKUHODOのソーシャルリスニング専門チーム 「65dB TOKYO」 は、2026年上半期のSNS上で発生した50億件以上の投稿データを分析したレポート 「2026年上半期SNSトレンド徹底解剖」 を公開した。
対象となったのは、2026年1月1日から5月31日までのX、TikTok、Instagramにおける投稿である。発話量やエンゲージメントの分析から浮かび上がったのは、生活者がSNSの機能やフォーマットを使い、何気ない日常そのものを特別なコンテンツへと変えていく姿だ。
同レポートでは、2026年上半期の大きな潮流として、国境なき日常のシェアを生む 「広がる世界交流」 と、安全な個性の表現を可能にする 「編集型ミーム」 の2つを挙げている。AIの進化によって言語の壁が急速に低くなった一方で、ショート動画では、ただテンプレートをなぞるだけの投稿から、自分なりの変数を加える創作的な参加へと関心が移りつつあるという。
日本語のまま海外へ届くX、生活者同士が直接つながる新しい交流
ひとつ目のトレンドである 「広がる世界交流」 は、XにおけるAI自動翻訳と、言語を超えたレコメンド機能の本格化によって生まれている。これまで海外に広がりやすい投稿は、画像や動画のように言葉がなくても伝わるノンバーバルなコンテンツが中心だった。しかし現在は、日本語で投稿した何気ない日常が自動翻訳され、海外ユーザーのタイムラインに届く環境が整いつつある。
象徴的な事例としてレポートが挙げるのが、アメリカのBBQをめぐるやりとりだ。日本で海外のBBQイラストが話題になったことをきっかけに、それを自動翻訳で知った米国ユーザーが 「本物のBBQを見てくれ」 と実際の写真や動画を投稿。X上では3日間で50万件以上のメンションを獲得し、肉のボリュームや焼き方をめぐって、日本と海外のユーザーが互いの文化を面白がる交流が生まれた。
また、「アメリカ人に質問です」 「韓国のお姉さんたちこんにちは」 といった形で、メディアやインフルエンサーを介さず、現地の一般ユーザーに日本語で直接問いかける投稿も増えている。現地で本当に流行しているコスメや生活情報を、その国の人から直接聞く動きは、SNS上の情報源のあり方を変えつつある。
韓国語で投稿された 「猫をブラッシングするゲーム」 が、日本語や英語を含まないにもかかわらず日本で拡散し、24万件以上のいいねを集めた事例も紹介されている。自動翻訳とレコメンドの組み合わせは、海外で流行したものが時間差で日本に届くという従来の流れを変え、日本と海外で同時に話題化する状況を生み出している。
一方で、言葉の細かなニュアンスまで意図せず海外へ届くことは、企業やブランドにとって新しいリスクでもある。ローカルな文脈で発した言葉が、翻訳を通じて異なる文化圏で解釈される時代には、SNS運用にもグローバルな視点が求められる。
TikTokでは 「型の安心感」 と 「自分らしさ」 を両立する編集型ミームへ
ふたつ目のトレンドである 「編集型ミーム」 は、TikTokやInstagramのショート動画に見られる変化だ。従来のミームは、既存のテンプレートを真似して投稿する 「消費型」 の広がり方が中心だった。しかし2026年上半期には、ユーザーが自分なりの編集要素を加え、同じ型の中でも個性を出す動きが強まっている。
背景にあるのは、「個性を出したいが、スベりたくない」 「流行には乗りたいが、量産型にはなりたくない」 という生活者心理である。完全にゼロから表現するのではなく、あらかじめ共有されたフォーマットの安心感を使いながら、その中に自分らしい工夫を差し込む。そこに、現在のSNSにおける参加しやすさがある。
その代表例が 「miniVlog」 だ。数秒ずつの動画を組み合わせ、音楽、効果音、画角、内容の掛け合わせによって日常を編集する手法で、2026年5月時点でTikTokでは約940万投稿、Instagramでは約1,060万回の投稿が確認されているという。日常の断片を並べるだけでなく、効果音や寄り引きの画角を工夫することで、同じフォーマットでも投稿者ごとの違いが生まれる。
また、1時間ごとに約2秒の動画を撮影し、自動で1本のミニVlogを生成するアプリ 「Setlog」 では、ユーザーが 「カラー縛り」 や 「顔のパーツ縛り」 など独自の撮影ルールを設けて楽しむ動きが見られる。何気ない日常を、仲間内のルールによって特別な思い出へと変える行為そのものが、コンテンツ化しているのだ。
さらに、SASANEの楽曲 「mosi mosi?」 に合わせ、自分の手書き文字で歌詞やイラストを載せる動画フォーマットも若年層の間で話題となった。楽曲使用動画は17.6万件を超え、平成初期のプリクラ落書き文化を想起させるような、アナログな編集体験が支持されている。
65dB TOKYOは、これらの潮流に共通する視点として、生活者自身が日常の主役となり、SNSがその日常を拡張するツールになっていることを指摘する。企業やブランドのSNSマーケティングにおいても、単に拡散されやすいUGCの型を提供するだけでは不十分である。ユーザーが自分らしさを差し込める余白をどう設計するかが、今後のコミュニケーション施策の成否を分けることになりそうだ。
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2026年上半期SNSトレンド徹底解剖
調査実施時期:2026年5月
調査対象期間:2026年1月1日(木)〜5月31日(日)
対象プラットフォーム:X、TikTok、Instagram
分析母集団:約50億件
分析方法:ソーシャルリスニングおよびトレンド分析
調査主体:TBWA HAKUHODO 「65dB TOKYO」
レポート:リリース内のダウンロードリンクより確認可能
TBWA HAKUHODO
https://www.tbwahakuhodo.co.jp