子どもの小学校が休校で、仕事に行けない!
Q.小学校1年生の息子の小学校が、コロナで休校になり、その間、家で面倒を見なければならず、会社を休まざるを得なくなってしまいました。その間、お給料がもらえないと困るのですが、どうにかならないのでしょうか?
労働者に対して直接支払われる制度ではないのですが、休校になった子どもの世話をするために「特別休暇」(年次有給休暇ではなく)を取得させた会社に対して助成金が支払われる制度があります。
助成金の上限額も、もともとは8330円とされていましたが、1万5000円にまで拡張されたことで、会社側も自社負担なく利用しやすい制度になってきています。また、この制度で要件となっている「特別休暇」は半日単位・時間単位での付与も可能で、使い勝手のよい制度となっています。
会社側から話が出ない場合は、この制度を紹介し、提案してみるのもよいかもしれません。
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一方的な時差出勤命令はあり?
Q.会社から、一方的に時差出勤を命じられました。ピーク時の混雑を避けるようにということで、「いつもより出勤時間を1時間早めるように」という内容なのですが、子どもを保育園に預ける時間帯とのタイミングもあって困ります。このような一方的な時差出勤命令は可能なのでしょうか?
原則として、就業規則や雇用契約に、「始業時刻」「終業時刻」を変更する場合がある旨の記載がない限り、一方的に時差出勤を命じることはできません。雇用契約や就業規則が、会社と労働者との間の合意事項になるのですから、会社としては出勤時刻については、その合意どおりにしなければなりません。
会社によっては、就業規則に「業務の都合その他やむを得ない事情により、始業時刻、終業時刻を繰り上げ、または繰り下げることがある」という主旨の規定があることがあります。そうした「やむを得ない事情」といえる状況があれば、会社は時差出勤を命ずることができます。
新型コロナウィルスの感染予防として、出勤ルートが満員電車で感染の危険が高い従業員に対しては、安全確保の観点からも「やむを得ない事情」があるものとして時差出勤を認められる可能性があるでしょう。まずは会社の就業規則の中に上記のような文言がないかどうか確認してみることをおすすめします。
質問者の方は、子どもを保育園に預けられるタイミングの関係で1時間早まることがネックになっているということですが、オフピークを実施する「やむを得ない事情」があるとしても、オフピークで1時間出勤を遅らせてもらうなど、子どもを預けるタイミングは確保できる方向で提案してみるのもよいと思います。
マスク着用は絶対的な義務なの?
Q.会社から「勤務中は必ずマスク着用」と命じられました。会社からはマスクの支給はなく、各自で購入するしかありません。暑い最中、かえって熱中症のリスクもある状況で、コストの負担をしてまで、着用する義務はあるのでしょうか?
色々な考え方がありますが、マスクの着用が感染予防対策の1つとして一定の効果があることは、世間一般である程度認められています。
職場での感染予防という、従業員の安全確保の観点からすれば、危険の多い工場などでヘルメットや防塵マスクなどの保護具を装着することと同じように、マスクの着用も安全確保の手段といえるでしょう。
ただ、これを命令として着用を義務化するとなると、少なくとも会社側でマスクを支給する必要があると考えられます。会社としては、従業員に対し、マスクを自費で入手して着用させるところまでは義務付けられません。
ただし、会社がマスクを支給して着用を命じたにもかかわらず、従業員がこれに従わずにマスクを着用しない場合には、業務命令違反となってしまいますので注意が必要です。業務命令違反になるということは、指導や懲戒処分の対象ともなるということです。
テレワークで支給されなくなった通勤手当、請求できる?
Q.テレワーク化されて在宅作業になったことで、通勤手当が支給されなくなってしまいました。私は会社までこっそり自転車で通勤して定期代を浮かせていたので、定期代の分、支給額が減ってしまうのは困ります。通勤手当は会社が従業員に必ず支払うべきではないのでしょうか?
通勤手当については、とてもよくある相談ですが、回答としては、ケースバイケースとなってきます。
多いパターンとして、通勤手当の支給について「実費」の趣旨で支払うことが明記されている場合がありますが、1カ月の間在宅勤務となって実費が発生していなければ、通勤手当の支給は不要となります。
たとえば、「通勤手当は、通勤に公共交通機関を利用する者に対して、その運賃、時間、距離等の事情に照らし、会社が最も経済的かつ合理的と判断した通勤経路及び方法によって算出し、支給する」などと規定されている場合は、通勤手当が「実費」の趣旨であるといえ、通勤手当を不支給とすることは問題ないのです。
他方で、通勤手当を実費と無関係に一律支給している場合は、そもそも通勤手当が実費の趣旨として支払っているものとはいえないため、まったく出社していない月の場合でも会社としては支給すべきです。
問題になりやすいのは、雇用契約書にも賃金規程にも通勤手当のルールが明記されていない場合です。この場合は、これまでの会社の取り扱いや会社側・従業員の認識などから意思解釈による判断となります。
この時の手がかりのひとつとして、欠勤控除などに関して、たとえば「1カ月間、欠勤などで通勤の実態が一切ない場合は通勤手当を支給しない」といった規程がある場合、当月中に一切の出勤がない場合には不支給になると解釈できます。
このような規程がある場合は、在宅勤務の場合も同様の解釈がされやすくなるかもしれません。
就業規則を見直そう
労働基準法第89条は、「常時10人以上の労働者(※パート・アルバイト含む)を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と定めています。
つまり、常時10人以上の労働者を使用している事業所は就業規則の作成・届出義務はありますが、そうでない事業所には就業規則を作成・届出する義務はありません。ですので、労働者が10人に満たない会社の場合は、就業規則がない可能性があります。
ただし、この規程は常時10人未満の会社が就業規則を定めてはいけないという意味ではありませんので、そのような会社が自主的に就業規則を作成することは可能です。
会社と労働者との間のルールを事前にしっかりと整備しておくことが望ましいのは言うまでもありません。実際、義務はなくても作成している会社はたくさんあります。
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昨今のコロナ禍で会社での働き方、組織の構造など、多くのことが一気に変化しています。会社としては、テレワークそのほか、状況の変化に合わせて、就業規則を整備しておくことが望ましいといえます。
また、普段「就業規則など見たことがない」という従業員の方も、これを機にどんなことが書かれているのか、関心をもってチェックしてみることをおすすめします。
※冒頭の著者プロフィールに次の見出しの文字が入ったため、訂正しました。誤解を招く表現になってしまったことを関係者ならびに読者のみなさまにお詫び申し上げます。(編集部注:8/20)