LIFE STYLE | 2020/08/04

日本は意外に安い?1GBあたりのモバイル通信料金ランキング

文:神保勇揮
日本のモバイル通信料金は世界的に見て安い?
世界中の人々が利用する携帯電話やタブレット。日本のスマート...

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文:神保勇揮

日本のモバイル通信料金は世界的に見て安い?

世界中の人々が利用する携帯電話やタブレット。日本のスマートフォンの通信料金は外国と比べて高いと常々言われているが、そのたびに大手通信会社は「そんなことはない」と反論するのがお決まりの光景だ。

総務省が毎年発表する「電気通信サービスに係る内外価格差調査(令和元年度)」では、世界の6都市(東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウル)の利用プラン価格を比較しているが、概ねニューヨークが突出して高く、次いで東京とソウルが2~3位でほぼ同水準となっている。

では、これらの都市以外、世界的の通信料金は一体いくらぐらいなのだろうか。ブロードバンド契約や携帯電話料金プランなどの比較・申し込みができるサイト「Cable.co.uk」では、世界228カ国の1GBあたりのモバイルデータ料金プランの比較を行いサイトに掲載、またVisual Capitalistでは同調査を解説・インフォグラフィック化した記事「What Does 1GB of Mobile Data Cost in Every Country?」を掲載している。

この調査は2020年2月3日から25日にかけて行われ、世界中の5554ものモバイルデータ料金プランの各国平均値を計算したもの。これはあくまで「1GBあたりの価格」であり、各国通信会社のプランが何GB・いくらからかということは各国で異なる。

同調査によると、世界で最もモバイルデータ料金が安い国・高い国のランキングは下記の通り。またサイトでは各国のデータを記したエクセルファイルもCable.co.ukのサイト上で無料ダウンロードできる。

【モバイルデータ料金が安い国】
1位:インド(0.09ドル)
2位:イスラエル(0.11ドル)
3位:キルギスタン(0.21ドル)
4位:イタリア(0.43ドル)
5位:ウクライナ(0.46ドル)

【モバイルデータ料金が高い国】
1位:サントメおよびプリンシペ(28.26ドル)
3位:バミューダ(28.75ドル)
4位:ナウル(30.47ドル)
5位:フォークランド諸島(40.41ドル)

モバイルデータ料金が世界最安のインドでは、2016年に大手財閥傘下のリライアンス・ジオ・インフォコムが業界に参入。フィーチャーフォンではあるが各種アプリも使える、いわゆる「ガラスマホ」の機種「ジオフォン」を保証金のみ(3年後に返還)で販売するという実質無料スタイルで投入し、通信料金も競合他社より大幅に低く設定し業界に価格破壊をもたらしたことが大きいようだ。

ただし、2020年に入ってリライアンス・ジオを含む大手が軒並み利用料金の値上げを発表。それでもジオの場合最安のプランが「データ通信量1.5G/日、音声通話1000分(ジオの機種同士であれば無制限)、SMS100通/日で28日間の料金が199ルピー(約278円)」となっており、日本と比べれば激安といえるだろう。

さて、それでは日本はこのランキングの中で何位なのか。結果は137位(1GBあたり3.91ドル)。Cable.co.ukの調査対象国は228なので、ちょうど中間ぐらいの何とも言えない順位だ。ちなみに総務省調査でも比較されていた韓国は202位(同10.94ドル)、米国は188位(同8ドル)。近隣諸国では中国(12位:0.61ドル)、台湾(176位:5.91ドル)、香港(101位:2.55ドル)となっている。

Cable.co.ukでは、モバイルデータ料金の価格の高低には4つの要因があると説明している。

優れたインフラ:古くからのユビキタスな4Gインフラを持つ国はモバイルデータ料金が落ちる傾向にある、実際に1カ月の利用可能データが平均的な1~10GB程度を遥かに超えた、数百GBまたは無制限のプランが多く見られるため、結果的に1GB辺りの料金が低くなっている。代表的な例はインド(1位:0.09ドル)、イタリア(4位:0.43ドル)

強い依存度:固定回線のブロードバンド利用率が低い国ではモバイル通信が主要なネット利用手段となっており、平均賃金が他国と比べて安い傾向もあり、なおかつ国内の競合も多いため利用料金が安くなる傾向にある。代表的な例はキルギスタン(3位:0.21ドル)、カザフスタン(6位:0.46ドル)

データ消費量の少なさ:モバイル通信が広く使用されているにも関わらずインフラに重い負担がかかっている国では、1日あたりのデータ利用可能量が2~5MB程度に制限されていることも珍しくない。この制限から1GBあたりの料金を計算すると高額になる傾向がある。代表的な例はチャド(221位:23.33ドル)、ベナン(222位:27.22ドル)

裕福な経済:モバイルインフラが整備されており、国民も比較的多くの料金を支払う余裕があるものの、インフラの整備・維持にもコストがかかることから①のような「数百GBまたは無制限のプラン」が少ない国はこのカテゴリーに分類される。代表的な例はイギリス(59位:1:39ドル)、ドイツ(140位:4.06ドル)

この4つを見ていくと、日本は④に分類されると言えそうだ。日本では今年3月からドコモ・au・ソフトバンクの3社が5Gの商用サービスを開始しているが、そのプランを見ると、ドコモとauは高価格帯の無制限プランも出しているものの、概ね各社ともに料金自体は4Gより若干高いぐらいに設定されている。

インフラ整備・維持コストが嵩むのはわかるが、スマートフォンはもはや1人1台の必須アイテムとなっている以上、値下げがあれば消費者としては嬉しい。今後の展開にも期待したいところだ。