文:佐郷顕
友人や知人、同僚らが集い、故人を偲ぶ葬式は、本来厳かに執り行われるもの。しかしそんな常識を覆したアイルランド人男性がいた。
参列者を笑いで包んだユーモア溢れる葬式が、SNS上で話題を呼んでいる。
棺桶の中から聞こえる「出してくれ!」の声
今年の10月8日に病気で亡くなった元軍人のシェイ・ブラッドリーさんの葬儀が、アイルランドのキルマンガで行われた。参列者が故人を見送り、棺桶を埋めようとしているまさにその時、驚くべきことが起きた。棺桶の中から「おーい。おーい。ここから出してくれ!」と声が聞こえたのだ。参列者たちは信じられない思いだったが、確かにそれは紛れもなくシェイさん本人の肉声だった。
そして、「ここは一体どこなんだ? 出してくれ、こんな暗いところ。その声は神父さんかい? 私はシェイだ。箱に入れられている。目の前だ。死んでいるんだ」と続けた。さらに、「また会ったね。やあ、さよならを言いたくて電話をしたんだ」と、ニール・ダイアモンドの『Hello Again』をアレンジして歌った。
シェイさんの仕掛けたいたずらは徐々に参列者たちに伝わり、故人の葬式はたくさんの笑い声で包まれた。
シェイさんの娘であるアンドレアさんは、その時の様子を動画に撮影し、13日にFacebookに投稿すると、瞬く間に拡散され、現在1万5000件のシェアを記録している。さらにこの動画はTwitterに転載され、3万3000件以上の「いいね」を集めた。
笑わせてくれた父へ娘からの愛のメッセージ
アンドレアさんは14日、自身のTwitterにシェイさん本人の写真と添えて「これが伝説となった当人の写真です。私の父、シェイ・ブラッドリー」と、「#Shayslastlaugh」とハッシュタグを付けて投稿。
「この音声を葬式で流すことを、父は生前から望んでいました」と、葬式中に流れた音声は自らが病気であることを知ったシェイさんが、約1年前に録音したものだと明かした。そして、「なんて人なのでしょう…。私たちが悲しみに暮れる中、笑わせようとしてくるんですから…。素晴らしい人でした。パパ、あなたを永遠に愛します」と綴った。
人生最後の時まで大切な人たちを笑顔にして、その幸せを願ったシェイさんの行動は、多くの人の心に温かく残り続けたに違いない。