文:岩見旦
1976年よりドイツを拠点に活動している「サーカス・ロンカリ」が、世界初となる魔法のようなショーを行っていると大きな注目を集めている。
アリーナをホログラムの象や馬が駆け巡る
それは、ホログラムの動物たちによる曲芸だ。テントの中を走り回る光る馬や、空中をさまよう巨大な魚、逆立ちをする象などのホログラムが登場し、幻想的で美しいショーが繰り広げられている。実際に鑑賞した観客は、そのダイナミックな演出に興奮を隠しきれない様子。
観客が360度どこからでも見られる、幅32メートル、高さ5メートルのアリーナを埋め尽くす3Dホログラムを作りたいと考えていたサーカス・ロンカリ。そこでエージェント会社のTAG/TRAUMは、最適なプロジェクタを手がけるOptomaを選択。提携するBlueboxの協力を得て、プロジェクタ「ZU850」を11台設置し、この魅惑的なホログラム体験を実現した。
Bluebox のBirger Wunderlich氏は「Optomaのプロジェクタを6年間使用してきましたが、価格、パフォーマンス、信頼性において非常に優れた実績があります。私たちは3D効果のために、素晴らしい色を持つ、高いコントラストのプロジェクタが必要でした。1:200000コントラストを持つプロジェクタ『ZU850』は最適です」と語っている。
動物を使用するサーカスへの批難の声
このようなホログラムによる動物のショーが始まった背景には、サーカスは野生動物たちを虐待したり、不衛生な状態に置いたりしていると世界中から批難され続けているという事情がある。
イギリスでは2020年以降、巡回サーカスに対し野生動物の使用を禁止する法律が制定された。また、ヨーロッパの大部分、ラテンアメリカ、アジアを含む世界40カ国以上で、すでに動物を使ったサーカスが禁止されている。日本でも野生動物を使うサーカスに対して抗議活動が行われている。
サーカス・ロンカリは1990年代、他のサーカスに先駆けて野生動物の使用を止め、国内の馬だけを使ってきた。そして最近、動物の使用を完全に辞めるという決定を下した。
ホログラムのパフォーマンスに転換したという決定について、サーカスのメディアディレクターMarkus Strobl氏は、海外メディアに「今日、ショーの演目の大部分は曲芸師やピエロによって行われています。このサーカスの魅力は詩的でアクロバティックな演目にあります」と答えた。
窮地に追い込まれたサーカスが、最新テクノロジーを駆使し、見事にピンチをチャンスに変えた。