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文:神保勇揮
国際広告代理店のマッキャン・ワールドグループ内のグローバルチーム「McCann Worldgroup Truth Central」は、3月31日に「Human Truths in a Time of Coronavirus: Part 1(コロナウィルス時代における人間にまつわる真実 第一回)」の調査結果を発表した。
同調査はGoogleサーベイ360を活用し、日本を含む世界14カ国(日本、カナダ、フランス、ドイツ、メキシコ、スペイン、英国、米国、コロンビア、トルコ、チリ、イタリア、アルゼンチン、インド)で実施した新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに関する各国・各世代の意識調査で、3月12日から21日にかけて各国約1000人、合計約1万4000人からの回答を得た(調査期間・日数は各国によって若干異なる)。
なお、4月7日には第2回の調査結果も公開された。
日本人の「コロナ不況」への不安の高さ、「完全なロックダウン」への支持の少なさが浮き彫りに。マッキャンWGの国際意識調査・第2回より
https://finders.me/articles.php?id=1834
「自国政府の対応が整っている」と回答したのは世界14カ国で約31%
まず、自国政府の対応体制が「整っている」および「とても整っている」と回答した人は、全世界で31%に留まった。「体制が整っている」と最も多くの回答者が答えたのはインド(55%)とトルコ(51%)であるのに対し、日本では18%の人しか同様の回答をしていない。本調査での「体制が整っている」という回答の中で、「とても整っている」と回答した人は、全世界全体では14%、国別に見ると、日本5%、英国6%、米国11%と低い結果となっている。
同調査では、世界の人々が自分、そして周囲の人々の安全を守るため、様々な感染防止対策を行っていることも分かった。感染拡大防止の対策として、世界の76%の人が、こまめに手洗いと手指消毒を行っていると回答。59%は公共の場を避け、32%は、免疫力を高めるよう努力している。また、30%は家族に連絡し、頻繁に自分の状態を知らせていると回答している。
マッキャン・ワールドグループはこの結果を受けて、世界各国で感染拡大防止に向けた個々人の意識が高まり、行動に移している反面、政府機関や政治の指導力に対する信頼の喪失が起きていることを示していると分析。世界の39%の人が「政府等の機関が私たちを守るべきだ」と感じているのに対し、61%の人が「自分の安全は自分の責任」と感じていることが明らかになったという。
経済的打撃に世界中で大きな不安。若者は人種差別にも懸念
パンデミックによって世界の人々が感じている主な不安を聞いたところ、下記のような結果となった。
・経済への打撃(48%)
・多くの死者が出ること(43%)
・社会的弱者が孤立すること(32%)
・失業すること、または、お金に困ること(21%)
・生活必需品が入手困難になること(28%)
・人種差別が悪化すること(14%)
経済的打撃への不安が最も強かったのは、米国(56%)、カナダ(54%)、日本(54%)。多くの死者が出ることを最も懸念していたのはアルゼンチン(53%)と英国(52%)。失業を最も恐れているのは日本(35%)とカナダ(29%)という結果となった。また、日本人の47%が、生活必需品の入手が困難になることを心配している。さらに、「勤め先は従業員の安全を最優先している」と感じている人は世界で18%に留まった。
マッキャン・ワールドグループでは、全体として年齢の高い層よりも若い層の方が、失業やお金に困ることを心配しているようだと分析している。また若い層の方が、このパンデミックによって人種差別が強まることを懸念しているという。米国では、18~24歳の回答者の22%が「懸念している」と回答しているのに対し、45~54歳で同回答は10%。スペインでは、18~24歳の17%が「懸念している」のに対し、45~54歳では9%という結果となった。
「メディアは不要にパニックを煽っている」と感じている人は日本で56%
世界全体としては、3人に1人(36%)が「例えコロナウィルスに感染したとしても、自分は大丈夫だと思う」と考えていますが、日本(13%)やイタリア(19%)など、拡大状況が長期化している国ではそのように考える回答者が最も少ない傾向にあったという。その一方で、過半数の人が「自分は大丈夫だと思う」と答える傾向にあったのは、米国(58%)、カナダ(54%)、英国(47%)だった(※これはマッキャン・ワールドグループの見解ではなく筆者の個人的見解だが、米国で調査が行われたのは感染者が急増する前の3月12日から14日にかけてであり、現時点で同様の質問をした場合、日本・イタリアのように回答者が急減するかもしれない)。
また「メディアは不要にパニックを煽っている」と感じている人が多かったのは日本(56%)と英国(53%)であったのに対し、そのように感じている人が少ない傾向にあったのはスペイン(29%)とイタリア(29%)だったとしている。
「アフターコロナの時代」に良い影響があるとすれば
新型コロナウイルスの感染拡大に対して、恐れや不安が増している中、意外にも前向きな視点を持っている人も多かった。パンデミックによる「プラスの影響」を感じている人は90%以上に上り、54%が「人生で本当に大切なものを考える機会になっている」と回答。39%は「家族との時間が増やせる」と捉えています。
また、37%は「二酸化炭素排出量が減る」ことを喜ばしく思っており、17%がコロナウィルスによって生み出された様々な新しい文化や習慣を楽しんでもいるという。信仰に拠り所を求めている人は14%で(米国では3人に1人へ増加)、12%は仕事からの休息を享受しているとしている。
マッキャンエリクソンの松浦良高プランニング本部長は、今回の調査結果を受けて「本調査は、世界14カ国で実施されているために、各国における生活者の心理状態を相対化されることで顕著に読み取れます。その中でも日本の生活者は経済的なインパクトを心配していることがよくわかります。コロナウイルスによる心配事として「自分の仕事が失われるかもしれない、あるいは経済的に苦しくなる」というスコアは3分の1を超え、各国の中で最も高くなっています。このような状況下にあって、日本人は組織やマスコミなどに頼るのではなくて「自分の安全は自分で守らないとならない」(70%)という意識が高まっているのは、非常に興味深い状況です」とコメントしている。
また現在、マッキャンの日本チームでも独自の意識調査を実施しており、こちらも完成次第公表したいとしている。