CULTURE | 2019/11/18

突然女性に抱きつき胸を鷲掴みにした男性アイドルの裁判全容!暴かれる酒癖の悪さとだらしない女性関係【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(7)

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阿曽山大噴火
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阿曽山大噴火

芸人/裁判ウォッチャー

月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。

酔って暴れて出入り禁止の店も

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今回は、ある男性アイドルグループの1人が、東京都内のマンションの前で、女性の背後から抱きついて、乳房を揉んだ事件の裁判レポートの後半戦。前回の続きから。

弁護人「犯行時、彼女と電話してましたね。その後の行動は?」
被告人「そのまま部屋の外に出て徘徊して、知らないマンションの入り口でいけないことをしました」
弁護人「いけないことというのは、被害女性の後ろから抱きついたと?」
被告人「ハッキリとは覚えていませんが、お酒のせいで。証拠とか見ると……」

記憶がないくらい酔っていたようです。

弁護人「証書には“非日常シチュエーションが好き”って答えてるけど、そうなの?」
被告人「そうなのかなぁと言いました」
弁護人「取調官が言ったことに対して、否定しなかったと。他に、ここが事実と違うって部分はありますか?」
被告人「女性を物色していたというのは違います。あとは、調書には3件やったと書いてあります。それは、近くで似た事件があって、僕じゃないかと訊かれたんですけど、身に覚えがないと伝えましたが、酒のせいで覚えていないだけかもと答えました」

調書上は他の事件も起こしたような内容になってるけど、違うと主張です。

弁護人「本件の原因はなんですか?」
被告人「酒による犯行。女性に対する考えの甘さ」
弁護人「酔うと暴れるの?」
被告人「出入り禁止の店もありました」
弁護人「女性を触ったりするの?」
被告人「それはないです」
弁護人「あなたには彼女もセックスする女性も他にいて、連絡しなかったの?」
被告人「そうすればよかったです」
弁護人「ちなみに専門学生の時の事件は酒飲んでじゃないよね」
被告人「はい」

酒癖が悪いというのも一因だとアピールです。

弁護人「女性に対する考え方の甘さって?」
被告人「タレント同士で集まってお酒を飲む機会もあり、不特定の女性と2人で飲むこともあってですね」

これが甘さ? 交際している彼女がいながら、違う女性と酒を飲むことがあったのが原因って意味なんでしょうか。よくわからなかったけど。

弁護人「被害女性との示談金は?」
被告人「事務所が立て替えました」
弁護人「そのお金はどうしますか?」
被告人「返していきたいと思います」
弁護人「で、仕事の方は?」
被告人「解雇になりました」

本人の口からクビになったと証言がありました。故にグループを脱退したということなんでしょう。

弁護人「再犯しないためにどうしますか?」
被告人「この4カ月、留置場、拘置所で暮らして、もう2度とこういう生活はしたくないと思いました。女性に対する考え方を改め、一切飲酒はやめたいと思います。そして、僕は詞を書きました。社会に戻ったときに思い出せるように」

自分のために書いたから、「僕のうた」というタイトルだったんですね。

弁護人「あと、彼女に対しても、感謝していると」
被告人「知らない女性と遊びに行くという軽はずみな行動をしていました。あ、ファンに手を出すことはなかったですが。拘置所の中で一人の女性のことを想って、これではいけないと」

彼女のため、女遊びを辞めると宣言です。事件とは別の話ですけどね、それは。

弁護人「『杜子春』と『一房の葡萄』を差し入れたけど、読んでどう思いました?」
被告人「『一房の葡萄』を読んで、身近な人を裏切ってはいけないと。自分の生活を見直そうと思いました」

せっかく、両親が法廷に来てるんだから、『杜子春』の方で感想を述べて欲しかったけど、『一房の葡萄』の方が胸を打つ内容だったんでしょう。被告人にとってのジムは、彼女か事務所の人かメンバーか親なのかはわかりませんが。

弁護人「両親に対しては?」
被告人「4カ月動いてくれてありがとうという気持ちです。2度と同じことはしないと誓います」
弁護人「今後、住むところは?」
被告人「父親の元で」
弁護人「仕事はどうしますか?」
被告人「表舞台のステージに立てたらな、と」

また同じような活動をしたいという希望はあるようです。ファンとしては一安心といったところでしょうか。

女性200人と出会ってきた被告人が気付いた彼女の大切さ

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続いて、検察官から。

検察官「さっき、調書に間違いあるって言ってましたけど、性癖とかの部分は?」
被告人「その点についても、200人位経験があると書いてましたけど、それは会った女性の人数です」
検察官「それも取り調べで検察官が言ってきた話なの?」
被告人「はい」
検察官「ふ~ん」

この辺は話半分にしか聞いていないかんじの検察官。

検察官「なぜ、お酒が原因と思うんですか?」
被告人「出禁になったときに、ケンカをしたらしいんですけど、まったく憶えていなくて」
検察官「それが性犯罪とどうつながるの?」
被告人「平常心を保っていればしていないと」
検察官「こういうことをしたいという性的嗜好があるとは思いません?」
被告人「絶対ないと思います!」

過去に似た事件を起こして、「また、やるかも」と自分に不安を抱いている被告人の方が個人的には信用できると思ってるんだけど、“絶対”というのであれば、ウソはないんでしょう。

検察官「女性に対する考え方が問題って、不特定多数の女性とセックスしたのが問題なの?」
被告人「ひとりの女性が好きというのを、4カ月の間に気づかされ、求められたら拒否せずにやってたのが間違ってました」
検察官「求められた人と嫌がってる人。別の話じゃない?」
被告人「……考えた結果、それです」

なんとも噛み合わせの悪い質疑応答だこと。

検察官「今後の仕事ですけど、さっきステージに立ちたいと。お父さんが頭下げてきた建設関係で働くの?」
被告人「まずは父の元で生活します。建築業というのはこの場ではじめて聞いたので」
検察官「で、働くことを考えてます?」
被告人「自分勝手な意見になりますけど、事務所も解雇になって、ツテはありません。建設の方が稼ぎになるし、安定します。でも、メンバーも(面会に)来てくれたり、エンタメの仕事をしてる中で振り付けを今もしてるとAbemaTVに出たときに、北海道の……」
検察官「まず、結論を」
被告人「考えておりません」

本人の中では芸能関係を再開する気持ちが相当強いんだろうなと感じますね。

すると、弁護人が追加で質問です。

弁護人「すぐに芸能の仕事に戻れないのはわかっていますよね?」
被告人「はい」

と、すぐ再開するつもりではないと確認していました。

23歳で2回の逮捕。裁判官が諭す「人生長い訳なので」

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最後は裁判官から。

裁判官「すぐ戻れないってのは?」
被告人「事務所を6月末に解雇され、来年6月まで禁止(という契約?)なので」
裁判官「なんでだと思う?」
被告人「女性ファンが多い中で、女性を傷つけたこと、迷惑をかけたこと」
裁判官「性犯罪した人がステージに立つって、現実的じゃないでしょ。そんな甘い世界じゃないですよ」
被告人「……はい」

と、アイドルとしての復活は厳しいとアドバイスです。

裁判官「ホントに物色してない? なんで、電話して、外に出たんですか?」
被告人「隣の部屋の壁が薄くて」
裁判官「いつも歩いている道なんですか?」
被告人「1本、隣の道です。物色とかしてないです」
裁判官「憶えてないんでしょ」
被告人「今までも酔ったとき、こんなことしてないので、してないと思ってます」
裁判官「“思ってます”って話になっちゃうよねぇ。2回も捕まってるからさ、そういう願望ないのかなぁと」
被告人「知らない女性を襲いたいとは思いません。ただ、タレントとかアイドルが集まる飲み会とかで、知らない女性との性交渉はあったので、言い切れないのかなぁって……」
裁判官「無理矢理でなければ、好きだと?」
被告人「はい」

アイドルへのインタビューじゃなく、被告人質問だから、ヅケヅケと訊いてくる裁判官。

裁判官「大半の人は1回もやらずに人生終えるけど、君は若くして2回。どう思う?」
被告人「情けないって思います。23年間で2回も手錠つけるなんて」
裁判官「何が根っこか考えなきゃいけないですよね。自分を十分にわかってますか?」
被告人「え~……あ、はい…」
裁判官「深刻だよねぇ」

と、諦めて、被告人質問終了。

この後、検察官は懲役1年6月を求刑し、弁護人は事務所を解雇されて社会的制裁を受けていることなどを理由に執行猶予を求めていました。

そして、10月9日。判決が言い渡される日です。傍聴席20席中、19席が埋まっているという注目度の高さ。

結果は、懲役1年6月執行猶予3年保護観察付。前科は無くまったくはじめての裁判であるけれども、同種の前歴があるので保護観察がついたってかんじでしょうかね。

主文と判決理由を朗読した後、裁判官は被告人に対して、短い説諭をしました。

裁判官「人生長い訳なのでね、反省を深めて、自分のためでもあるので2度とないようにしようか」

この一言も、社会に戻った時に思い出すものになりそう。芸能活動については肯定も否定もしなかったけど、“人生長い訳なので”にさまざまなメッセージが込められている気がしますね。


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