LIFE STYLE | 2019/11/14

心不全で余命半年の自閉症の男性を養子に引き取った看護師、心臓移植を受けさせ命を救う。2人の絆に感動

文:岩見旦
誰かが危機に瀕している時、助けたいと思っていても、実際にはなかなか行動に移せるものではない。
そんな中、...

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文:岩見旦

誰かが危機に瀕している時、助けたいと思っていても、実際にはなかなか行動に移せるものではない。

そんな中、身寄りのない男性の命を救った一人の女性が、多くの称賛を集めている。

自閉症の男性に救いの手を差し伸べた看護師

米国ジョージア州にあるピードモント・ニューナン病院の集中治療室で働いているロリ・ウッドさん(57歳)は、35年のキャリアを持つ看護師だ。

昨年、ウッドさんの働く病院に、自閉症を患っている男性ジョナサン・ピンカードさん(27歳)が運ばれた。ピンカードさんは医師から心不全のため余命半年と告げられ、心臓移植が必要と言われた。

しかし、ピンカードさんは心臓の移植待ちリストに登録することが出来なかった。ピンカードさんは面倒を見てくれていた祖母が数年前に亡くなり、他に身寄りがなかった。「手術後の介護をしてくれる人がいることが、移植待ちリストに登録する条件です」とウッドさんは『TODAY Health』の後の取材で語った。

入退院を繰り返していたピンカードさんは行き場を失い、しばしば保護施設に送られていた。そしてこのまま一人で死ぬしか道は残されていなかった。

「2人目の母親です」

2人が知り合って3日後、ウッドさんはピンカードさんの養子として引き取る法的手続きを行った。ウッドさんはピンカードさんの母親になったのだ。ピンカードさんは、ウッドさんの息子のオースティンさんと同じ屋根の下、生活を送ることになった。

その時はまだお互いのことについて何も知らなかったが、フットボールとテレビ番組の話題で盛り上がり、すぐに仲良くなったという。ウッドさんはピンカードさんの薬を管理したり、病院に連れて行ったりした。さらに、一人で生きていくための手助けまで行った。

そして、ピンカードさんは移植待ちのリストに登録され、今年8月に心臓手術を実施。無事新しい心臓を得て、命の危機から救われた。12月には事務員として働くことを希望している。

あと数週間でピンカードさんはまた一人暮らしが出来るまで元気になるとのこと。しかし、ウッドさんはピンカードさんを手放すつもりはないようだ。「彼はクリスマスには自宅で一緒に過ごし、結婚式にも一緒に行きます。だって家族の一員なんですから」とウッドさん。ピンカードさんも、ウッドさんを「私にとって二人目の母親です。天が授けて下さったのです」と語る。

見知らぬ人にただ手を貸すだけでも勇気が必要なのに、まったく知らない人を自宅に招き入れ、献身的なサポートをするのは余程の慈悲深い心がないと出来なかっただろう。2人のかけがえのない絆に胸を打たれた。