EVENT | 2019/03/25

4大IT企業「GAFA」のうち3社の提供するサービスが相次いで利用不能に。特定サービスに依存することの怖さを思い知らされる

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伊藤僑
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伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。著書に「ビジネスマンの今さら聞けないネットセキュリティ〜パソコンで失敗しないための39の鉄則〜」(ダイヤモンド社)などがある。

3月13日、Gmail・Google Driveの障害が発生

最初の異変は、3月13日午前11時ごろ(以下、時間表示はすべて日本時間)に始まった。

「Gmailの送受信ができなくなった」、「添付ファイルを送信できない」、「Google Driveが利用できない」……時を追うごとにGmailやGoogle Driveの利用者からの悲鳴がSNSに溢れた。

G suiteダッシュボードによると、障害が発生していたのはGmailとGoogle Driveのみで、GoogleドキュメントやGoogleカレンダーなど、G suiteの他のサービスは影響を受けなかったとされる。だが、その障害は日本だけにとどまらず、米国の一部やオーストラリア、東南アジアなどへも拡がっていたため、ビジネスや家族間、友人間などのコミュニケーションに支障をきたしたユーザーは膨大な数に上ったことだろう。

Googleは、同日の15時過ぎには問題が解決したことを報告。14日には、その原因が「Google内部で画像や音声などのマルチメディアオブジェクト(Binary Large OBject)を管理しているストレージサービスで発生したトラブル」だったことを明らかにしている。

G suiteダッシュボードに障害状況の報告

翌日にはFacebook、Instagram、Messenger、WhatsAppでも

問題の解決にホッとしたのもつかの間、翌14日には、Facebookが提供する複数のサービスにも世界規模の障害が発生する(障害は13日午後から発生していたとみられるが、同社が問題を認めたのは14日に入ってからだった)。

不具合が発生したのは、Facebook、Instagram、Messenger、WhatsAppなどとされ、当初は、「これはDDos攻撃によるものではない」とだけ報告されていた。障害は世界のほぼ全域に及び、復旧には12時間以上かかっている。

同社が15日に行った発表によれば、この大規模な障害は「サーバ設定の変更」が原因だったようだ。

さらに、AppleのiCloudもアクセス不能に陥る

驚くべきことに、トラブルの連鎖はこれだけでは終わらなかった。

3月15日深夜から、今度はAppleが運営するクラウドサービスのiCloudがアクセス不能に陥る。バックアップや各種のデータ同期、「iPhoneを探す」などの機能に支障が出た模様だ。約4時間ほどで障害は回復したものの、まだ原因は発表されていない。

Appleの提供するサービスの状況はここから確認できる。

緊急時の対応も含めた連絡方法の見直しを

世界経済を牽引する4大IT企業「GAFA」のうち3社が、相次いで提供するサービスが利用不能に陥る。原因の究明により、それは単なる偶然に過ぎないと分かっているのだが、世界中が依存するIT基盤の脆さを実感させられた出来事だった。Facebookの障害による影響を受けたユーザーの数だけでも27億人と推定されているので、3社の総数となると……。

筆者は、3社のサービスをすべて利用しているので、一時は途方に暮れてしまった。中でも深刻だったのが、Facebook MessengerとGmailが利用不能になったこと。仕事上の連絡を、かなりの割合でその2サービスに依存していたからだ。

慌てて他の連絡手段を探そうとiPhoneの連絡帳を開いてみても、登録されているのはGmailアドレスだけだったり、電話番号の登録がなかったりする人が少なくない。Messengerでしか連絡をとっていない人は、連絡帳への登録すらなかったりする。

名刺を探してみると、最近の名刺には、住所や電話番号が記載されていない人が少なくないことを再確認させられてしまった。

便利なサービスだからといって、依存しすぎてはいけない。今回の障害事例を教訓に、緊急時の対応も含めた連絡方法の見直しを行うべきではないだろうか。

プラットフォームへの依存は「方針転換」という危機も孕む

3月6日には、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者から、Facebookをこれまでのオープンなプラットフォームから、プライバシー重視のプラットフォームへと転換する構想が発表された。

同社では、これまでに個人情報の流出などユーザーのプライバシーに関する多くの問題が発生しており、世界中で多くの批判を受けてきた。今回の発表は、これら批判に対する同社なりの返答のようにも思われる。

プライバシー重視の方針は、多くの人たちから支持されることだろう。しかし、Facebookのオープンなプラットフォームをビジネスに活用してきた企業にとっては、深刻な打撃を受ける恐れもある。

依存しすぎが危険なのは、コミュニケーション手段だけではない。