LIFE STYLE | 2019/02/14

「動物×メカ」のレゴ作品が海外でも話題に!レゴビルダーの二階堂満氏|なにげに世界で有名な日本人

二階堂氏作成の「LEGO Mecha Tyrannosaur Mk2」© Mitsuru Nikaido
「...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

二階堂氏作成の「LEGO Mecha Tyrannosaur Mk2」
© Mitsuru Nikaido

「レゴ」と聞くとレゴランドや子供向けの知育玩具を思い浮かべる人が多いだろうが、実は大の大人が夢中になるおもちゃでもある。

InstagramやYouTube上には、子どもの遊びからは大きく逸脱した“大人レゴ”とでも呼べそうな作品が数多く公開されている。中には実際に走行可能なスーパーカーを作ってしまったり、実際に使用可能な義手を作ってしまう大人たちが世界中に存在している。

レゴ製のブガッティ・シロン

レゴで作った義手

日本にも大人レゴを楽しむ人は多いのだが、今回ご紹介するのは機械生物にフォーカスした作品を作り続けるレゴビルダーの二階堂満氏。あくまで「レゴは趣味の範疇です」と言う同氏に詳しい話を訊いてみた。

取材・文:6PAC

二階堂満

undefined

倉敷芸術科学大学卒業後、DTPデザイナーとしてパッケージや広告などの制作に携わる。また副業として、1/6スケールミリタリーフィギュア専門店「トイフォース」のネット販売店も運営。

作品を通じて生物や自然の素晴らしさに興味を持ってほしい

二階堂満氏
© Mitsuru Nikaido

DTPデザイナーとして、パッケージや印刷物のデザインで生計を立てている同氏がレゴに興味を抱いたのは、子供が産まれたことがきっかけだそうだ。副業でミリタリーフィギュア専門店を営むなど、元々プラモデルやジオラマといった模型が好きだった同氏だが、「子供が産まれてからは各種薬剤や加工時に発生する粉塵の影響を考えて自粛しました」と言う。しかし、お子さんとレゴで遊ぶうちに、立体物を作りたい欲求が再燃。「レゴなら部屋も汚れず、制作途中の手直しも比較的容易です。しかも、完成後に解体すれば永続的に再利用できるので、自分の環境に最適な造形素材として導入しました」とのこと。

LEGO Mech Panda
© Mitsuru Nikaido

「レゴで機械生物」という切り口が同氏の作品の一番の特徴だが、なぜ機械生物なのかと問うと、「バイオミメティクス(生物模倣技術)のように人類は生物から学ぶことが数多くあります。長きにわたる自然淘汰を生き抜いてきた生物は、とても洗練されたものです。今後、高度に発達したAIが機械を設計するとしたら、恐らく生物を模したような物が産まれるでしょう。僕は作品を作る際、モチーフとなる生物の生態を調べますが、どれもユニークな能力を持ち、とても面白いです。作品を通じて、この地球に住む生物、自然の素晴らしさに興味を持っていただけるのが一番の喜びです」と答えてくれた。

「なにげに世界で有名な日本人」で以前取り上げた、バイオミメティックス・デザイナーの亀井潤氏と同じ様な答えが返ってきたのは意外であった。

“生物の姿”と“機械の姿”とのギャップ萌え

LEGO Mecha Elephant
© Mitsuru Nikaido

制作過程については「生物をモチーフに作成する場合は本物の骨格写真を用意します。それを参考に骨格をレゴで再現。実際の骨格と同様に関節を配置すれば肉付けで機械的な表現をしても、モチーフになった生物の特徴を強く残す事ができます」と語る。

モチーフについては「国・性別・年齢を問わず一目でわかる知名度の高い生き物をセレクトしています」とのこと。「レゴで機械生物」を作ることで、「実際の展示会などで生で作品をご覧いただく際、特に小さなお子様が“あ!これは○○だ!”という自分の知っているものがモチーフだと分かった時、本来の“生物の姿”と“機械の姿”とのギャップを楽しんでいただいております」と言う。

「レゴで機械生物」を作るうえで難しいのは、手足などを可動できる作りにし、できるだけ補助スタンドを使わず自立させることだそうだ。自身の作品の特徴として、使用する色を「白色」と「灰色」に限定していることを挙げる。これにより、色に左右されずに形の狂いに気付きやすい造形が行えること、陰影による造形の面白さが伝わりやすいことがメリットだと語る。

制作時間は、シーラカンスやティラノサウルスといった大型作品(全長70cm程度)で50時間程。両手に収まるサイズであれば十数時間で完成するという。大型作品の場合は、関節強度や自立するためのバランスなどを試行錯誤する時間が大幅にかかるそうだ。使用するレゴパーツは、シーラカンスで3~4,000個以上。ちなみに、市販されている中規模サイズのレゴ商品に使用されているパーツは500個程度だそうだ。

海外のレゴ専門誌の表紙にも採用

二階堂氏の作品が表紙に掲載された海外のレゴ専門誌『BrickJournal』
© Mitsuru Nikaido

国内外で名が知られるようになったのは、著名なレゴビルダー、さいとうよしかず氏の著作『ブロック玩具ビルダーバイブル』(翔泳社)に作品が掲載されたことと、Flickrで作品を発表したことがきっかけだ。Flickrでの作品公開以降、数多くの海外の有名レビューブログで取り上げられた。

さらに海外のレゴ専門誌『BrickJournal』の編集長から連絡があり、「単独での特集と表紙写真に採用したい」とのオファーがあった。BrickJournalにはその後も何度か作品が掲載され、他のレゴ専門誌でも作品が取り上げられている。レゴビルダーとして知られるようになってからは、設計図の作成依頼や、他のブロック玩具メーカーからのデザイン依頼が舞い込むようになった。ただし、「現在は本業と育児があるのでお断りをしております」とのことだ。海外のレゴビルダーたちとはFacebookで意見交換をしたり、年に一度神戸で開催されるアジア最大のレゴイベント「Japan Brickfest(JBF)」で交流をしているという。

© Mitsuru Nikaido

レゴユーザーがオリジナルデザインの製品化を目指す企画として「レゴ・アイデア」というものがある。レゴユーザーが提案したデザインが、1万以上のサポート(票)を獲得すると、年3回開催されている製品化検討レビューの対象となる。同氏はレゴ・アイデアにメカ(Mecha)シリーズとしてライオン、ゾウ、シーラカンス、ティラノサウルス、カマキリの5作品を提案している。製品化されたことはまだないが、「規定の日数以内に票を集めることで商品化を検討されるシステムなので、過去に製品化された作品の傾向を研究し、今後も挑戦し続けたいと思います」と語ってくれた。

ちなみに今のところ一番票を集めているのはメカ・ティラノサウルスとのこと。
https://ideas.lego.com/projects/8495501d-a2a6-49aa-9d3d-790c39840496

自分の感じる世界を自由気ままに表現していきたい

LEGO Forest sculptor
© Mitsuru Nikaido

最後にレゴビルダーとして今後どういった活動を予定しているのか訊ねてみた。

「レゴ社公式のビルダーは生物だけでなく建築・自然・抽象的なものなどさまざまなモチーフを要求された仕様に合わせて作る技能が要求されます。僕の本業もクライアントの要求に合わせてデザインすることなので、趣味であるレゴは自分の感じる世界を自由気ままに表現していきたいです」