LIFE STYLE | 2022/03/02

ウクライナ危機に震撼、オランダ政府・市民も支援に動き始める【連載】オランダ発スロージャーナリズム(42)

アムステルダムで2月27日に行われた反戦デモの模様。Photo by Shutterstock
2月24日未明、世界が...

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アムステルダムで2月27日に行われた反戦デモの模様。Photo by Shutterstock

2月24日未明、世界が驚いたまさかの事態が起きました。ご存じのようにロシアがウクライナに侵攻したのです。これをヨーロッパでは「1945年以来の最悪事態」、「ヨーロッパの暗黒の日」と表現し、ヨーロッパの主要なニュースはほぼ全てこの事態、つまり「戦争」報道に切り替わりました。

今回は、ロシアのウクライナ侵攻について、オランダやヨーロッパでの空気をお伝えします。

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

ヨーロッパで行われている戦争

興奮冷めやらぬ北京オリンピックや、オランダ国内の家々の屋根を吹き飛ばし、大木を薙ぎ倒ししていった大型ストーム、さらにはヨーロッパ各国では、待ちに待ったおよそ2年にも及ぶコロナ規制が次々と解除されていく日々。こうしたニュースを全て吹っ飛ばす衝撃的なニュースが夜明けと共に入ってきました。

日本やアメリカでも、少し前にウクライナからの避難勧告が出ていたり、フランスのマクロン大統領とロシアのプーチン大統領の会談の様子が放送されていたりするなど、確かに危機が迫っているとは言われていたものの、多くの人はそこまでの事態になるとは考えていなかったのではないでしょうか。少なくとも筆者は全く考えていませんでした。ですがロシアがウクライナに侵攻という、まさか!という衝撃の朝を迎えたのです。

日本と比べると、やはり当事国との距離が近いヨーロッパでは、かなり自分事として捉えています。

今回、ロシアが侵攻を始めた理由として言われていることには、ウクライナが、同じルーツから発展し言語も同じくする人が少なからずいる、「兄弟国」ロシアから袂を分かち、そのいわば最大の敵である西側諸国のNATOへの加盟を求めていること、ウクライナ東部にある分離派が実効支配する地域「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」(ロシアが一方的に国家承認)の平和維持などが言われています。これ以外にも各メディアや各国専門家による連日の情報発信で「真相」や「詳細」がいろいろと語られています。

ですが、この記事では中途半端な知識で、その事実を追求することはしません。両国の言い分はあるにせよ、戦争自体に正義はないと思うからです。ただいずれにせよ、ヨーロッパ諸国としては自分たちのグループ=EUに入りたいと言っていた国がやられた!という衝撃は、かなり大きいものがあります。

また、ウクライナが侵略をされているにも関わらず、今のところ世界は、というかアメリカやEUが見放しているようにも見える、あるいは少し及び腰であるように見えること、あるいは逆に加勢することで世界に火種が広がったら、どうしよう?という不安もあったり、さらには、実際に被害に遭っているウクライナの人たちの映像や、国を捨てて国外に逃げ出そうとしてる人たちの長蛇の列など、とにかく早く終わって欲しいという想いと、「戦争反対」としか言えないもどかしさを強烈に感じています。ヨーロッパでは#Worldwar3というハッシュタグがトレンドのトップになったりしています。

オランダ政府・市民による支援の動きも続々

Photo by Shutterstock

もともとオランダには、多くの国の人が住んでいます。当然、筆者の周りにはロシア人も、ウクライナ人もいます。子どもが通う学校のパパ友、ママ友であったり、中には会社の同僚であったりもします。彼・彼女らが、今、どんな想いでいるのか?非常に気になります。オランダでも反戦デモが行われていますが、ロシア内でも多数の逮捕者を出しながら大規模な反戦デモが連日起こっているというニュースが報道されています。自分も反戦の意思表示を明確にしないといけないと思っています。

こちらでは、すでに影響は多岐にわたっています。ロシア系企業のスポンサー表示を取りやめたサッカーチームのニュースや、W杯予選ではロシアとは試合をしないという対戦国の表明もありました。大きな国際大会の決勝戦がロシアで行われる予定でしたが、それも急遽、パリに変更になりました。それ以外にもロシア系実業家がオーナーを務める英サッカーチームのチェルシーFCでは、オーナーが問題視され運営権をクラブの慈善団体の理事に譲渡すると発表するなど、非常に複雑な立場に置かれています

西側諸国が、ロシアに対して経済制裁を行うとしていますが、すでにオランダやヨーロッパではガス代、ガソリン代、電気代などのエネルギー関係は大幅に値上がりしており、おそらく今後、さらに信じられないくらい上がるのではないか?という気もしています。筆者もちょうどバカンスでスイスのスキーリゾートに行くためにドイツの高速道路を利用したのですが、途中で寄ったガソリンスタンドでの価格が平時の倍ほどになっており驚きました。

経済制裁の影響を最初に受けるのは、実は西側諸国だと言われています。さらには、ヨーロッパの穀倉地帯と言われているウクライナがこの事態ですから、今後食糧危機も起こるだろうと予想されています。ウクライナからの難民も大幅に増えるでしょう。今後、経済的にも大きな影響が出るかもしれません。

このように遠い国の戦争ではなく、ヨーロッパではモロに影響を受けています。さらに今後も、その影響はあらゆるところに響いてくると思います。今の時代、我々は世界と深くつながっているのです。

オランダでもウクライナ支援の動きが早速始まっています。現時点において政府はウクライナへの武器供与と難民受け入れを表明しています。世界各国の難民受け入れ状況については、The HEADLINEというウェブメディアの記事がよくまとまっています。とはいえ「中東やアフリカからの難民受け入れをあれだけ拒んでいたのにウクライナ難民は喜んで受け入れるというEU諸国の態度は、人種差別ではないのか」といった批判もあり、また「黒人だからという理由でウクライナ国境を脱出できなかった」という証言が報道されているようですが…。

またオランダ市民もウクライナ支援に動き出しています。多くの人が国際的に活動する難民支援財団「Stichting Vluchteling」が運営する基金「GIRO999」「GIRO555」などに募金しています。実際に救援物質を届けたり、車でウクライナ国境まで走り難民を救助したりする市民もいるそうです。

とにかく1秒でも早く、この戦争が終わってくれることを願ってやみません。


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