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世界一の自転車大国オランダが誇るスゴいマシンの数々。「ハイテク電動三輪車」から「子どもと乗れる改造中古車」まで【連載】オランダ発スロージャーナリズム(39)
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  • 2021.11.30
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世界一の自転車大国オランダが誇るスゴいマシンの数々。「ハイテク電動三輪車」から「子どもと乗れる改造中古車」まで【連載】オランダ発スロージャーナリズム(39)

衝撃の電動三輪車「LEF」。実際に公道で走れますし、たまに見かけます

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、実は世界一の自転車大国はオランダだと言われています。たとえば、オランダの人口1700万に対して、自転車は2280万台もあります。一人当たり約1.3台。老若男女を合わせて全員が1台以上を持っていることになります。全ての交通需要の1/4が自転車で、国内には3万5000kmにわたる自転車道が整備されています。本当に、大袈裟でなくどこに行くにも自転車道があります。

オランダの国土は低地を灌漑して作られており平らで坂が全くなく、自転車利用は健康にも環境にも良い、などの理由が挙げられますが、個人的にはオランダ人は合理的という名の「ケチ」なので、交通費とか移動にかける費用を極力安くしたい、という思いが強いのではないか? と穿った見方をしています。

実はコロナ禍において、パリ、ロンドン、ミラノ、ニューヨークなどの大都市は、自転車中心の都市にシフトしようとしています。そう、都市としてレジリエンスが必要となってくるからというのがその理由です。もちろん、環境や都市に住む人たちの健康配慮的な視点もあります。

ということで、今回は知られざる世界一の自転車大国オランダの、自転車事情あれこれをご紹介します。

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

自転車大国化のきっかけは住民投票

実はオランダが自転車大国になってから、そこまで古い歴史はありません。比較的、最近?でもあります。

第二次大戦後、戦後の復興で経済が大成長したオランダ。1970年代には平均年収は戦後に比べると、220%を超える成長でした。当然、それに伴い都市化、工業化も進み、街には車が溢れるようになってきました。世界中のどこの都市もそうだったように、自動車中心のまちづくりが進みます。

その結果、1971年には3300人が交通事故で亡くなってしまったのです。しかも、そのうち400人が14歳以下の子どもたちでした。こうしたことをきっかけに、市民の間では自動車や、自動車中心のまちづくりに対する大規模な反対運動が起こり始めました。

またほぼ時を同じくして、世界を襲ったのがオイルショック。オランダはこれを機に生活スタイルを変えるという決断をします。車中心の都市インフラを、自転車中心にシフトすることにしたのです。

アムステルダムの中心部では、車の乗り入れに対しての住民投票が行われ、49対51で反対派が勝利し、自動車専用道路が次々設置され、自家用車の中心部への乗り入れも制限されるようになったのです。その結果、2010年には自転車事故によって死亡した子どもの数は年間14人にまで減りました。

デザインや機能の進化はもちろん、雇用形態や製造過程にもこだわり

このような流れで自転車フレンドリーな国になったオランダですが、もちろん自転車自体もさまざまな進化を遂げています。

例えば、最近ですと海に捨てられたプラスチックごみも使い、100%リサイクル素材&再生可能エネルギーで作られた自転車「Dutchfiets(記事のトップ画像がそれです)」もあります。環境先進国&自転車先進国ならでは、といった感じでしょうか。

意外に女性にも合うゴツさの「Dutchfiets」

次は、捨てられた自転車から作られた自転車。電動自転車バージョンもあります。シンプルで美しいデザインの「Roetz」の製造にはホームレスの人など社会的弱者を中心に雇用しており、いろいろな意味でサーキュラーな自転車でもあります。

シンプルで美しいデザインの「Roetz」

運河に捨てられた自転車

さらに、オランダで自転車といえば、超実用的に子どもを運ぶための自転車もいろいろとありますが、「Bakfiets」がその代表。小さい子どもを、最大で6人くらいまで載せることができます。もちろん、屋根というか幌がついているようなものもあり、雨が降ろうが槍が降ろうが、乗っている子どもたちは快適なものもあります。

「Bakfiets」は超実用的ですが30万円近くします

一方で、子どもを載せるための3人乗り自転車もよく見かけます。子どもたちも慣れたもので、みんな上手に乗っています。こうした自転車は中古市場にもたくさんあって、メーカー純正品だけでなくいろんなパーツを組み合わせ、工夫して作られています。

3人乗り自転車。ちゃんと子どもの足置き場までついている

最近では電気自転車もかなり普及しています。高齢者の90%くらいはそうかもしれません。かなりのハイスピードで乗りこなしています。この「Super73」はアメリカ発の電動自転車ですがミニバイクかと見間違うようなスピードで走っています。

さらにこの電動三輪車「LEF」などはもはや漕いでいないので自転車の域を飛び越えていますが、こんな極端なものも売られています。実際に公道で走れますし、たまに見かけます。EV化したことでできた新しいジャンルと考えても良いかもしれません。

そして、最後にご紹介するのは自転車道路。こちらは今年の夏にユトレヒトにできた570mにも及ぶ、世界一長いレインボーカラーの自転車道路です。

こちらは、ユトレヒトの大学や研究機関が集まるサイエンスパークというエリアにありますが、ここに所属する学生の発案でできたものです。LGBTQ+の人たちなど幅広く受け入れるダイバーシティの象徴が、学生街でできたというのはなんともオランダらしさが溢れるものだと思います。

冒頭にご紹介したように、世界の各都市は今、自転車フレンドリーな都市にシフトしようとしていますが、こんな多様性を受け入れる、ということもぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、日本から遊びにきた人たちが、この自転車道を歩道だと思って、うっかりはみ出してしまい、自転車に轢かれそうになるということが多発しています。コロナ明け、こちらに遊びにくることができるようになったら、その点だけはお気をつけください。


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