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「日本人は興味ないから後回し」という時代の終焉。日本企業でもいよいよ取り組みが始まる気候変動対策【連載】オランダ発スロージャーナリズム(35)
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  • 2021.07.16
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「日本人は興味ないから後回し」という時代の終焉。日本企業でもいよいよ取り組みが始まる気候変動対策【連載】オランダ発スロージャーナリズム(35)

「何が起こっているか」すら不明瞭な場合はまずリサーチを

今度は我々の行なっている手法に焦点を当てて、いくつかの案件をご紹介します。我々が近々翻訳して無料公開する「SiD」というサステイナブル戦略ガイドがあります。SiDとは、Symbiosis in Development、(共生的開発)の頭文字を並べたもので、オランダの「ビジネスをサステイナブルにすること」を専門に行うデザインコンサルティング会社「Except Integrated Sustainability」によるオリジナルメソッドです。

分かりやすく言うと、この開発手法を使うことで複雑なサステイナブルシフトにまつわる問題を解決することができるようになります。企業体や事業そのものをサステイナブルなものにしたり、プロジェクトをサステイナブルにしたりするのに役立つ手法です。特徴としては、当該の一つの事象やモノだけを捉えて考えるのではなく、時にその事象やモノが置かれているシステムレベルに注目し、問題を包括的に捉えるという特徴があります。

例えば「サステイナブル靴を作る」というプロジェクトの場合、靴そのものは海洋プラスチックをリサイクルすることで作れるようになったものの、海洋プラスチックの回収やその運搬のために膨大なCO2を排出したり、今まで使用していた素材を破棄することになったり、あるいはその靴からマイクロプラスチックが排出されるようになってしまったりと、一見サステイナブルな靴へとシフトできたかのように見えるものも、実はトータル(システムレベル)で見てみると全くサステイナブルではなかった、なんてことがあります。こうしたことまでを包括的に考えて、本当のサステイナブルシフトを実現することができるメソッドです。

SiDはリサーチからスタートすることが多いのですが、例えば農作物のリサーチ案件。あるいは土壌や水質などの環境リサーチ。いずれも日本企業のプロジェクトですが、農作物に関しては、意外にも知られてない世界各国にまたがる複雑な生産事情、流通事情、マーケット事情、そして認証制度の影響なんてことが見えてきたりします。また環境リサーチをする過程で、あまり知られていない深刻な環境劣化が露わになったりもします。

つまりこの手法を使うことで、サステイナブルにまつわる課題そのものを発見できるのです。このリサーチの結果をビジネスにどう活かすのか?あるいは将来もたらされるだろう脅威を前もって発見することで、ビジネスのサステイナブルシフトのタイミングを前倒しする、なんてことも行なっていたり、競合との関係をあからさまにすることで、業界内でのサステイナブルシフトのパイオニアとなるべくコンセプト立案から実行まで一貫して行っていたりします。

「サステイナブルトレンド」が次のビジネスへつながる

弊社が以前アムステルダムへの出店をお手伝いしたお店で提供される、ヴィーガン向けラーメン

少し違う形の例をご紹介します。今、北ヨーロッパの若者の間ではヴィーガンやベジタリアンが増えています。理由は地球温暖化に影響を与えると言われている家畜です。牛がゲップとして排出するメタンガスの話題が良く出ますが、もちろんそれだけではありません。例えば、牛一頭を飼育するのに必要な水の量、土地の広さ、あるいは草や穀物などの餌などが莫大な量になり、地球環境資源に大きな影響を与えています。そのため気候変動などを気にしている若者の間では、家畜の肉を食べない、つまりヴィーガンにシフトする人が増えているのです。

もともと多民族国家であるヨーロッパでは宗教上の理由などから肉を口にしない人も多かったことから、ヴィーガン、ベジタリアンは一定数いましたが、最近では環境問題に敏感な若者の間で増えています。

こうしたトレンドを知っていると、例えば日本食のレストランをオープンにするにあたって、ベジタリアンやヴィーガン向けメニューを取り入れて売上をアップさせるなんてこともできます。和食は比較的親和性が高いと思いますし、弊社では以前、アムステルダムに出店するヴィーガン向けラーメンレストランのプロデュースのお手伝いをしたことがあります。こうした取り組みを日本に逆輸入してもいいかもしれませんし(有名ラーメンチェーンの一風堂では今年2月、期間限定で植物由来の原料で作られた「プラントベース赤丸」を販売してましたね)、若者にターゲットを絞ったB級ベジタリアングルメを開発してオランダに持っていくのも面白いのでは?と思います。

また弊社で近々出版予定の「プラントベース×和食」をテーマにした雑誌は、ベジタリアンやビーガンの子どもを持ち、子ども向けの料理レパートリーが無くて困っている親御さんに向けて新しい料理レシピを紹介しようと思っています。肉食世代の親にとって、ビーガンやベジタリアンの子どもに作れる料理レシピがない、という悩みがあったりするからです。

オランダでは、このように新しいサステイナブルなマーケットが生まれていますので、ここに合わせたビジネスを作ること(もちろん、そのビジネス自体がサステイナブルである必要がありますが)などは、ビジネスとしても大きな可能性を秘めていると思います。

トレンドだけでなく、各業界の最新事例情報も蓄積しつつあり、弊社はそうしたオランダの企業やプレイヤーと日本企業を直接繋げるというようなこともやっています。先人の知恵を参考にして、1からサステイナブルなビジネスを作るわけではないので、比較的容易にスタートすることもできます。まずは試しにコラボしてみるという企業もあります。

今回ご紹介しただけでも、SXのやり口は多種多様だということがお分かりいただけると思います。相談される案件としては、コロナ禍以降、俄然、日本の大企業からのお話をいろいろといただくようになりました。日本企業もいよいよ、本格的にサステイナブルへのシフトが求められているのだと思いますし、むしろ積極的にサステイナブルへシフトに取り組む企業が増えることを願っています。もちろん、何らかのお手伝いが必要でしたら、ぜひ我々にお声がけください。サステイナブルの本場、オランダのノウハウを余すことなくお伝えします。

ぜひ近日、無料で公開予定の「サステイナブル戦略ガイドSiD」にもご注目ください。


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