CULTURE | 2020/05/12

三密から「反密」へ。僕たちはどこに住めばいいのだろう。安全な場所とはどこなのだろう【連載】浮上せよとメディアは言う〜編集長コラム(4)

Photo by Shutterstock
GWはNYに行くつもりだった…
COVI-19の世界的なパ...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

Photo by Shutterstock

GWはNYに行くつもりだった…

COVI-19の世界的なパンデミックから数カ月が経った。

人との接触から起こるこの病気はグローバル化の時代にあって、中国の武漢から世界中にあっという間に広まってしまった。

今年のゴールデンウィーク、僕は14年ぶりにニューヨークに行く予定を立て、エアチケットとホテルを予約した。

2月の半ば頃だったろうか。Facebookに「NYに行くんだけど、現地の状況はどうですか?」と書き込んだ。

数人の知人・友人は「陽気なアメリカンはそんなの気にしてないですよ」「全然普通通りの生活」とリプライをくれた。

が、しかしである。1カ月も経たないうちにその状況は一変した。パンデミックの中心は欧州からアメリカに変わり、特にニューヨークは悲惨な状態となった。僕もゴールデンウィークは自宅待機を余儀なくされ、エアとホテルをキャンセルせざるを得なかった。

人が密集する都市と資本主義

これまで、人類は、都市に人、モノ、カネ、情報、店を集めることによって経済をぐるぐる回して来た。

そして今回、いわゆる「三密」の状態になると一挙に人と人との接触を減らすことに歯止めをかけるしか感染拡大の食い止めにはならなくなった。

都市機能というものが再定義される時代になったのだと思った。もちろん、人の少ない地域の方が感染リスクは減る。

僕は4年前に『いきたい場所で活きる 僕らの時代の移住地図』という本を書いた。

その帯のフレーズは「2020年、あなたはどこに住み、どこで働いているだろうか?」だった。その時はまさかこのようなパンデミックが起り、人々のライフスタイルにこれほどの変化が生じるとはつゆとも思わなかったが。

この本では、国内外33人もの移住者に取材を行っている。その中には東日本大震災の影響、はっきり言ってしまえば、「放射能」から逃れたいという心理を持っていた人が多かった。

本稿を書いている時点では、ロックダウンした武漢は都市封鎖を解除し始め、コロナウイルスの発信源であるかの地は少しずつ緊張感が緩まっているように見える。

都市論と人々のライフスタイルは切っても切り離せない。前述の僕が書いた本でも、二拠点や他拠点居住する人がいたが、彼らは都市以外の居場所、もっと言えば、東京に何かがあった時の「バックアップ」として、地方の田舎に安い家を買ったり、借りたりしていた。

それはもちろん、バックアップという意味合いだけではなく、都会の喧騒から離れて、心身をリフレッシュさせたいという思いもあるのだろう。

しかし、一方で人にとってとても重要な要素に社会性を持つということがある。

5年前、シンガポールを訪れた際、インド人街に行ってみたのだが、見渡す限りものすごい数の人だかりが出来ていた。数万人はいただろうか。シンガポールにいるインド人労働者の多くは出稼ぎである。その光景を見た当初は、彼らは夜間や休日などに、友人・知人に会うためにそこに集っていると思っていた。

しかし、よく見てみると、一人ただ単にボーッと立って人やタバコを吸っている人、座り込んで携帯電話で話している人が多く、仲間と集まっているのではなさげだった。

つまりは、彼らは人口が密集した故郷のインドをシンガポールで再現し、懐かしがっていたのだ。みんなが異常に集まる光景は、確かにニューデリーに代表されるインドの都市そのものだ。彼らはシンガポールでインドを再現しようとしていたのだ。

とどのつまり、人はわけもなく集まりたがる習慣がある。でも、そうするとパンデミックは防げない。

人との接触を避ける「反密」

繰り返し、政治家やマスコミが連呼する、避けるべき「三密」を防ぐためには、ワクチンが開発され、コロナの専門病院を作るまで、「反密」に務めるしかないだろう。

僕も自宅待機を要請された当初は外に出て、人と会いたくて仕方なかった。

でも、毎日のようにチャットやオンラインでの会議や飲み会でコミュケーションをとっていると、「これ、直接会わなくてもいいんじゃね?」という心持ちに段々なってきて、月の会食代は何十分の1まで減ったこともよかったし、完全に自宅飲みに慣れてしまった。

コロナウイルスが収まって後も、人は以前のように人混みに集まるだろうか。おそらくは徐々に日常を取り戻し、都会には人がまた集まるのだろう。

しかし、次の時代はもうすぐ側まで来ている。リモートで完結することはリモートでやった方が効率がいいし、移動の時間もなくて、飲み会の代金も安く済む。

人は孤独を恐れ、集まりたがるものだ。でも、これからはそこに変化が生じるかもしれない。ネットとスマホで常時接続した僕らは確実に大きなパラダイムシフトの上に立っている。