EVENT | 2020/02/19

新型コロナウイルス関連の酷いデマがSNSで猛威を振るう。TwitterやFBも対策に本腰へ

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伊藤僑
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伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。著書に「ビジネスマンの今さら聞けないネットセキュリティ〜パソコンで失敗しないための39の鉄則〜」(ダイヤモンド社)などがある。

新型コロナ関連のフェイクニュースが世界中に拡がる

2月9日ごろから、「中国の武漢上空で極めて高い濃度の亜硫酸ガス(二酸化硫黄)が検出された。これは、中国政府が秘密裏に新型コロナウイルスで亡くなった大量の遺体を焼却している証拠だ。およそ1万4000人分の遺体を焼却したことが推定される」という噂がTwitterなどのSNS を通じて世界中に広まった。

その根拠となっているのは、気象情報サイト「Windy.com」が予測したデータとされるが、同サイトの管理者は「Windyは二酸化硫黄値の予測のみを視覚化するため、コロナウイルスによる遺体の焼却などの活動は表示されない」とコメントしている。つまり、この言説はフェイクニュースだったわけだ。

Windy.comより

新型コロナウイルス関連では、このほかにも「新華社通信などが新型コロナウイルスのエアロゾル感染が確認されたことを報じている。要するに、空気感染することが判明したわけだ」という誤った情報が拡散されて問題となった。

このフェイクニュースにおける問題点は2つ。エアロゾル感染が「確認」されたわけではなく、あくまでも「可能性」を報じていることと、「エアロゾル感染=空気感染ではない」ことの2つだ。特に誤解を招きやすいのが、エアロゾル感染と空気感染との混同だ。

エアロゾル感染は、ウイルスを含む液体が霧のような状態で空中に広がることと解釈すべきであり、あくまでも「一過性」のもの。これに対し空気感染とは、空気中にウイルスなどが「長時間漂う」ことで感染が拡大することを指す。エアロゾル感染と空気感染は、まったく違うものなのだ。

さらには、「関西空港から入国した中国人観光客が、発熱や咳の症状があるにもかかわらず、検疫検査を拒んで逃走した」という虚偽の事実をでっち上げる者や、「新型コロナウイルスにアルコール消毒が効かないのは医療関係者の間では常識」という、真実とは逆の情報を拡散する者まで現れた。

これらフェイクニュースに惑わされ右往左往してしまった人もいることだろう。新型コロナウイルスに関して疑問を感じることがあったら、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」を参照しよう。

また、SNSなどを通じて拡散されている怪しい情報の真偽は、NPO法人「ファクト・チェック・イニシアチブ( FIJ)」の特設サイトで確認できる。

参考:「中国・武漢で亜硫酸ガスが大量発生 1万4000人の遺体を焼却」という情報は本当か(毎日新聞)
参考:新型コロナ「エアロゾル感染を確認。要するに空気感染」は誤り。ネットで不安と誤解が拡散(BuzzFeed News)

FacebookやTwitter、Googleも対策に乗り出す

このような事態を受け、SNSやメディアの運営サイドも対策に乗り出した。

Facebookは、新型コロナウイルスに関する誤った治療法や予防策などの投稿、医療行為を妨げるようなコンテンツなど有害な偽情報を削除することを表明。WHOなどとも連携を図り、ニュースフィードで最新の関連情報を発信するという。また、Instagramでは、偽情報の拡散を防ぐために関連するハッシュタグを制限するとともに、虚偽情報を共有しているユーザーには警告を発する。

Twitterは、ユーザーが新型コロナウイルス関連の用語を検索すると、各国の保険当局の情報を表示。信頼できない情報への誘導も抑止する。

Googleは、新型コロナウイルス関連の用語を検索するとWHOの提供する情報が上位に表示されるよう設定。YouTubeでも、専門家や報道機関の動画が表示されやすくしている。

参考:Facebook、新型コロナウイルスに関する偽情報など削除へ(CNET Japan)
参考:各SNSやWebサービスのコロナウィルスのデマ対策まとめ(ギズモード・ジャパン)

情報リテラシーを各人が磨いていく必要がある

新型コロナウイルスをめぐるフェイクニュース騒動で厄介だったのは、本来はフェイクニュースの拡散を抑えるべきニュースメディアや政治家、著名人までもが、きちんと情報の検証を行うことなく、その拡散に加担してしまっていることだ。

今回のような疾病対策に限らず、フェイクニュースが人々を惑わす機会は今後ますます増えていくことが懸念されている。地震、台風、豪雨などの自然災害や選挙、国際紛争、資源や食糧の不足など、深刻度が増せば増すほどフェイクニュースによる影響は大きくなる。今後はこれまで以上に、報道やSNSを通じてもたらされる膨大な情報の中から、正しい情報、自分に必要な情報を取捨選択する能力を個々人が磨いていくことが必要になるだろう。