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EVENT | 2023/03/08

地元から世界へ。「グラスルーツ・イノベーション」を全学的に推進 立命館大学 産学官連携戦略本部拠点

文:黒澤結衣
約20年の活動ノウハウを携え、近畿地方の産学官地連携を牽引
立命館大学では、産学官地連携を推進する「産...

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文:黒澤結衣

約20年の活動ノウハウを携え、近畿地方の産学官地連携を牽引

立命館大学では、産学官地連携を推進する「産学官連携戦略本部」を2008年に設置。今回は同拠点の立命館大学総合科学技術研究機構「ロボティクス研究センター」に所属する加古川篤准教授とBKCリサーチオフィスの堀井崇道氏に取り組み内容をうかがった。

立命館大学は京都・滋賀・大阪のキャンパスで約20年にわたり産学官地連携に取り組んでいる実績がある。知的財産マネジメント機能・産学官連携推進・事業家支援・研究支援などを一体化して推進し、近畿地方の産学官地連携を牽引する大学である。

「立命館大学は『グラスルーツ・イノベーション』の精神を強く打ち出しています。これは地域課題の解決を起点として、社会全体へ拡げる取り組みを応援するという草の根型の産学官地連携の考え方です。成果や知識・ノウハウを当大学が蓄積しオープン化することで、他大学や民間企業がそれぞれの地域の課題解決に向けた実用化や産業化へと繋げていくことを目指しており、大学発スタートアップの創出にもつながっています。」(堀井氏)

自治体の依頼を受けた研究者がいかに「社会で役立つロボット」を開発したか

加古川篤氏

この「グラスルーツ・イノベーション」の代表的な事例のひとつが、加古川篤准教授の取り組みである。加古川氏は、人間が物理的に活動不可能な極限環境で活躍するロボットを研究している。同氏の研究が、滋賀県草津市の地域課題の解決に寄与した格好だ。

日本の下水管は多くが1970年代以降に作られ、耐用年数は50年と言われておりその期限を過ぎてしまっているが、これまでの技術では下水管の中でも細くて狭い「圧送管」の内部を点検できなかった。異常確認、設備更新ができない場合、最終的には地盤から硫化水素が漏れて陥没に至ってしまうこともある。

滋賀県草津市から「これをなんとか解決する技術はないか」と依頼を受けた産学官連携戦略本部が加古川氏をマッチング。同氏が圧送管の中でも移動できるロボットの研究・試作を進め、2023年2月には直径75mmと100mmの管の中を通ることができ、最大約20kgまで垂直牽引可能なロボットの開発に成功した。

今回は地域課題と、研究者が以前から追求していたテーマが見事にマッチしたケースだが、一方で加古川氏は「大学で研究者に求められること」と「社会のニーズ」とのギャップを埋め合わせていく必要もあると感じたという。

「今回の下水管点検ロボットに関しても、現場に試作機を投入してみてようやく必要な要素が多数発覚しました。例えばカメラの位置はここにしてほしい、防水仕様にしてほしい、ケーブルが絡まりやすいから対策してほしいといった点です。ただそうした改良作業は通常、民間企業に求められる分野であり、大学の研究者の業績にはなり難いです。研究者に求められるのは『20年後のロボット像とそのプロトタイプ』を考え出すことだったりします。一方で企業の研究開発にも費用・時間がかかりますから腰が上がらないケースも多い。ですが双方そうやってできないと言っているだけでは、いつまで経っても今、目の前にある社会課題が解決できません」(加古川氏)

「今回のプロジェクトを通じて、研究者側も現実にマッチする活動をやってみるべきだと強く感じました。社会課題がある場所には絶対に技術的課題も存在します。改善のサイクルを積み重ねる中で、エンジニアリング的な部分だけでなく科学的な考察にもつながればそれは研究成果にもなり得るかもしれない。ロボットは『未来』だけでなく『現在』に役立つものを示せるかどうか。自分がそういったモデルケースになれないか、これからも色々なアプローチを試していきたいです」(加古川氏)

立命館大学は、2030年までの学園ビジョンとして「社会共生価値の創出」を目標としている。大学教育や研究で得られた知見を社会に還元し、地域課題の解決、地域経済の活性化を大学が主体となってスピード感を持って取り組んでいく。

「産学官連携戦略本部では、これからも社会課題や地域課題の解決に取り組んでいる研究者の支援や、社会や地域の課題解決を目指す自治体・民間企業と研究者を繋げる役割を果たしていきたいと考えています。」(堀井氏)

<謝辞>
このプロジェクトは、2022年度滋賀県近未来技術等社会実装推進事業補助金により実施されたものです。この場を借りて深く御礼申し上げます。(加古川・堀井)


立命館大学 産学官連携戦略本部拠点

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