EVENT | 2022/12/28

「コピペ」だけで伝わる文章が完成する!?誤解なく伝える文章術を新人編集者が添削してもらってみた

「上司からメールの返事が来ない…」
「メールやSlackの文章がつい長くなってしまうor説明不足で怒られ...

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「上司からメールの返事が来ない…」

「メールやSlackの文章がつい長くなってしまうor説明不足で怒られる」

「もう口頭でやり取りした方が楽だし早いんじゃないか」

テレワークやチャットツールの普及によって、ビジネスシーンにおける「文章力」の重要性はますます高まりつつある。だが一方で、対面コミュニケーションは難なくできるのに、適切な文章での伝え方に苦労している人も多いのではないだろうか。

そんな中「必要項目を埋めるだけでビジネスコミュニケーションはバッチリです」と謳う書籍『THE FORMAT 文章力ゼロでも書ける究極の「型」』が登場した。

著者はキャスター社の取締役CRO(Chief Remotework Officer)を務める石倉秀明氏。同社は国内外に住む約1500人ほぼ全員がテレワークを実施しており、石倉氏は「対面せずに業績をアップさせる会社」としてテレワークの効率的なコツを紹介する書籍を何冊も執筆している。本書はそんな同氏による文章指南本だ。これまで培ってきた「伝えるために必要な要素」を全9種類のフォーマットに落とし込んでおり、22年11月の出版から瞬く間に3刷になるほど売れ行きも好調のようだ。

今回のインタビューでは石倉氏に新人編集部員の文章を添削していただくことを通じて、普段書いているビジネス文章を具体的にどのように直すとより伝わりやすくなるのかを教わった。

石倉秀明

株式会社キャスター取締役CRO(Chief Remotework Officer)

2014年の創業以来、ほぼ全員がフルリモートワークを実施。現在は800名以上のメンバーが47都道府県、23ヶ国に在住。 著書に『会社には行かない 6年やってわかった普通の人こそ評価されるリモートワークという働き方』『コミュ力なんていらない 人間関係がラクになる空気を読まない仕事術』『これからのマネジャーは邪魔をしない。』『THE FORMAT 文章力ゼロでも書ける究極の「型」』、FNN系列『Live News α』にコメンテーターとして出演中。

 ​​聞き手・構成・文:舩岡花奈(FINDERS編集部)

「イマイチ伝わらない文章」には明確な理由があった

石倉秀明氏

ーー 仕事で報告書やチャットツールの文章を作る時、上司や取引先から「この部分はどうなの?」「もうちょっとここを詳しく説明して」と指摘を受けてしまうことが多く2〜3往復になってしまって毎回苦労していたんですが、『THE FORMAT』を読むとこういう風に埋めていけば良いのかということが一目瞭然で、すごくわかりやすかったです。

石倉:ありがとうございます。そもそも僕は昔から「書くより直接話した方が早いって本当か?」と疑問だったんですよね。それよりも誰が読んでもわかるマニュアルがあった方が説明の時間を減らせます。だからその応用で「テキストコミュニケーションも型化してしまった方が楽だろう」と思ってnoteなどでもTips的に紹介していたんですが、思いのほか反響があって。

ーー いつから「フォーマット」が必要だと思ったのでしょうか?

石倉:営業職時代に上司とのやりとりで何度も指摘されたくないと思い「フォーマット」を作成するようになりました。上司から「こういう項目を入れてくれ」と指摘される箇所や、逆に聞かれなかったけれどもこれを入れれば納得してもらいやすいなと感じた項目をまとめておけば、次同じような内容を伝える際に楽だと思って整理していました。

ーー 本書では営業会議用の報告書、アイデア会議での叩き台文書、部下向け・社長向けの文章例など9種類のフォーマットが収録されています。例えば上司に施策のOKをもらうための「承認のフォーマット」はこんな感じです。

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【承認のフォーマット】
1.この文章を、何のために書くのか
2.誰が読むの?
3.現状はこうなっています
4.現状の課題はこれです⇒現状の課題に行き着いた元データはこれです
5.この課題が発生している仮説はこれです
6.仮説の元になっているデータや根拠はこれです
7.解説するための施策はこれです
8.7によってこういった効果を期待しています
9.これで進めて問題ないか
10.いつまでに返事が欲しいか

 今回はこの「承認のフォーマット」を使った文章を、石倉さんに添削いただきたいと思います。テーマは「編集部の上司に『THE FORMAT』に関する石倉さんのインタビュー企画のOKをもらう」です。

石倉:まず、3番「現状はこうなっています」、4番「現状の課題はこれです」、5番「この課題が発生している仮説はこれです」の内容がフワッと抽象的すぎると思います。なので、このままの文章で伝えた場合「で、結局何やるの?」と指摘されてしまうと思います。

ビジネスの現場でよくある例で、「認知度アップのために〇〇の施策をします」と報告されるんですが、「認知」とは何を指しているんだ?といつも思うんです。どんな年代の、どんな職業の、どんな嗜好を持つ人の認知度を何%から何%にアップさせたいのか。

抽象度が高いままだと相手が理解できないし、イメージがわかないので、できるだけ具体的にした方がわかりやすいです。もし施策に失敗しても課題が明確になるし、成功すれば自身の評価に結びつきやすい(何をどうして成果が出たと説明しやすい)ためメリットが多いです。

【上司から承認をもらうためのテンプレ使用文】の3〜5番を再掲

3番目の「現状はこうなってます」は、ファクトだけを端的に記載すべきです。今回の例で言うと66.3%の企業が社員の文章力が昇給昇格に影響すると回答している・部下の文章にストレスを感じている人が85%いるというデータが実際に起きていることじゃないですか。

ここでどうやっても主観が混じらざるを得ない、説明的な文章から始めてしまうと「本当にそうなの?根拠は?」というツッコミが入る余地になってしまうので、有無を言わせないデータが用意できるならそれを並べるだけの方が良いですね。

ーー  確かにこれを否定する場合「データ(調査)そのものがおかしい」という言い方になり、立証の必要もあるのでツッコミにくくなりますね。

石倉:そうですね。現状を全て整理しきったあとに、現状から言える課題は何かという順序で考えていきます。今回でいうと「社会人が重要視してるスキルの一つで伝わる文章力があるのに解決していない」わけですよね。そして、それによって上司・部下ともにストレスを感じて、テレワークの阻害にも繋がっていることが課題になると思います。

ーー ただ、こういう風に必要な要素だけを的確に把握して整理するのが意外と難しい気がします。

石倉:おっしゃる通りでトレーニングが必要です。これは感想なのか、意見なのか、事実なのか、そしてそれらをどこまでどんな風に書くべきか。トライアンドエラーを経て丁度いい塩梅に洗練されてくると思います。

あと現状を整理しきる前にいきなり課題や問題について考え始めてしまうと、この辺りの記載がゴチャゴチャになってしまい質問やツッコミの原因になるので、順序は守った方が良いですね。

石倉:次は課題から推測される5番の「仮説」を見ていきましょう。

文章力が必要だと思っている人が多いにも関わらず苦手意識が払拭できていない、つまり「書いて伝えるために必要な、スキルや考え方を知らないからではないか?」という仮説を立てることができます。

この時重要なのは、仮説を支えるデータも一緒に提示し、「間違っていない可能性がそれなりにありそうだ」と伝えることです。例えば、書き方のトレーニングを受けたことがある人が20%しかいないみたいなデータがあると根拠になると思います。

ここまで整理してからやっと解決するための施策を具体的に考える段階に進みます。

現時点での施策は、「石倉秀明『THE FORMAT』で紹介されている、伝わる文章の書き方やノウハウを紹介する」だけで終わっています。ここも「結局何をするの」「文章の書き方やノウハウって例えばどんなもの?」と相手から突っ込まれそうですよね。

また8番の「施策の効果」を示す部分も同様で「読者の文章スキル向上のきっかけになる」という抽象的な言葉で終わらせずに、具体的なところまで書くことが伝えるためには必要ですね。

それぞれをブラッシュアップするには、こんな風にするのが良いと思います。

「明日まで」が思わぬ大失敗につながってしまう?

ーー これで現状を整理し、課題から施策まで整理することができました。あとはフォーマットを元に文章に変換すれば相手に伝えることができますね。

石倉:まだ気になるポイントがあります。この文章の目的は、企画の承認をもらうことですよね。10番の「返事をもらいたい期日」について「明日まで」は良くないです。なぜ悪いと思いますか?

ーー 期日が急すぎるからですか?

石倉:違います。相手がいつ読むか分からないのに「明日」と伝えてしまうと認識がズレてしまいますよね。例えば、書き手は「明日=12月6日」という認識で伝えても、上司が文章を確認したタイミングが「12月6日の朝」だとどうなるでしょう。

ーー 明日=7日になってしまいますね。

石倉:そうなんです。明確な日付を書いてください。他にも「本日中」は、その日の終業時間までを指してるのか、夜中24時までを指してるのか、次の日出社するまでを指しているのか捉え方によって変わってしまいますよね。曖昧な言葉や難しい言葉を使うと認識がズレてしまうので、誰にとっても間違いようのないワードを使うことが大切なポイントです。

ーー 石倉さんにブラッシュアップしていただいた文章を改めて見返すと、最初のバージョンと全然違った印象に見えることがよくわかります。

分かっているのになかなか出来ない「読み手の目線」に立つ重要性

ーー 最後に、このフォーマットを元にメールで上司に伝える文章を起こしていきたいと思います。

石倉:整理が出来ていればメール文にするのはすごく簡単です。フォーマットをそのまま貼って相手に合わせて補足の文章を付け加えたり、敬語を入れたりするだけで終わります。

ーー こんな感じでどうでしょうか?

石倉:メールやメッセージを作成する際に注意してほしいのは「文章量をできるだけ削る」ことです。このメールはまだ削れる要素が残っていますね。

これはSlackなどのチャットツールでも同じことが言えますが、今の時代、スマホでメールやメッセージを開くことも多いですし、その時にスクロールしなければ読みきれないような長文が書かれていると「これは大変そうだな」と後回しにされてしまうか、身構えられてしまいます。

文章量を減らすためのコツとしては、チャットツールやメッセンジャーであれば何通かに分ける(挨拶と概要/フォーマット部分/補足や期限の3通に分けるなど)というテクニックもありますし、フォーマットの部分をWordファイルやGoogleドキュメントのリンクなどにしておけば「具体的に精査してほしいのはここだけです」ということが明確になるのでチェックする側の心理的負担が下がります。

ーーなるほど。元の文章と比較すると視覚情報的にもシンプルで分かりやすくなっていますね。

石倉:ここまで書いてあれば、承認に必要な情報が網羅的に載っているのでほとんどイエスかノーで返事が返って来ると思います。

「上司に企画を通す」という意味では、さらにプラスアルファとして相手の欲しい情報を整理できるか、目的から逆算して各プロセスを分解できているかがとても重要です。これらのフォーマットも、検討する必要があることや調べておく必要があることを、「どうすれば伝わるか」という目的から逆算し、プロセスを分解して項目化したものです。

相手の立場から伝えるためにどうしたらいいのかという思考を常に持っていれば、これらのフォーマットを自分なりに改良することも、これらのケースに当てはまらないシチュエーションでも、伝える文章が書けるようになると思います。

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【お知らせ】
現在、石倉さんに読者のみなさんのビジネス文書を添削してもらうリアルイベントの開催を計画しています。
詳細決定次第お知らせしますので、FINDERSもしくは石倉さんのTwitterアカウントでの告知をお待ちください。