文:赤井大祐
新型コロナウイルスへの感染者が未だ世界的に増え続けている。日本も例外ではなく、特に東京では1日の感染者数が200人を超す日が続いている。
そんな中、新型コロナウイルスに感染した美容師の勤めるヘアサロンの事例が、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によって報告された。
ソーシャルディスタンスの確保が困難なヘアサロン
5月12日、アメリカ・ミズーリ州スプリングフィールドのヘアサロンにて、1名の美容師が呼吸器症状を発症した。そして3日後の5月15日、また別の美容師が同じく呼吸器症状を発症した。
2人はPCR検査を受け、ともに陽性反応を確認。1人目は発症から8日後の5月20日まで、2人目は発症から7日後の5月22日まで、それぞれ検査結果が判明するまで接客を続けていた。
1人目の発症から2人目の陽性反応確認までの通算10日間で、この2人から施術を受けた客は合計139名にも上った。2人目の美容師の陽性反応が確認されてから、ヘアサロンは店内の消毒などを行うため3日間店を閉めることになった。
ソーシャルディスタンスを保つことが困難なヘアサロンにおいて、果たしてどれだけ感染が拡大してしまったのだろうか。
美容師も客もマスクを着用
グリーン群保健局が追跡調査を行ったところ、2人の美容師から施術を受けた139名の内、確認のとれた104名及び、その二次接触者、そしてヘアサロンで働く同僚、誰一人として感染していなかったことが判明した。CDCがヘアサロン内での感染を防ぐため効果を発揮したと結論付けているのが、マスクだ。
「十分な距離を取ることができない公共の場では口元を覆うためのマスクなどの着用を義務付ける」というスプリングフィールドの条例と、ヘアサロンの方針によって、施術を行う際に美容師と客が必ずサージカルマスクや布を用いて口元を覆っていたという。
これまでの研究によると、新型コロナウイルス以外のSARSやインフルエンザといったウイルスの感染者がサージカルマスクや手作りの布製マスクを着用することで、空気中でのエアロゾル化(空気中の水分や塵にウイルスが付着し媒介となること)を減少させることがわかっており、この結果は新型コロナウイルスに対しても同様の認識であるとしている。