CULTURE | 2019/04/10

猫は「自分の名前」を聞き分けられる? 上智大学の研究チームが実際にテストしてみた

Photo By Shutterstock
文:岩見旦

群れで行動する犬に比べて、単独で行動する猫は気まぐれな性...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

Photo By Shutterstock

文:岩見旦

群れで行動する犬に比べて、単独で行動する猫は気まぐれな性格と言われている。猫に名前を呼びかけても、そっぽを向かれてしまったということもしばしば。

これまで犬やチンパンジー、イルカ、オウムなどは人間の声を聞き分け、自分の名前を理解する能力があることが分かっていたが、猫に関しては不明だった。

しかし、愛猫家に吉報。猫が「自分の名前」と「一般名詞」「同居する猫の名前」を聞き分けているという研究結果が発表され、英国の学術雑誌『Scientific Reports』に掲載された。猫は「自分の名前」を理解していたのだ。

「一般名詞」「同居する猫の名前」の後に「自分の名前」を聞かせる実験

この研究を行ったのは、上智大学の総合人間科学部心理学科の齋藤慈子准教授らの研究グループ。これまで猫は犬と比べて、人とのコミュニケーション能力についてあまり研究されてこなかったという。そこで、研究グループは家庭訪問による実験を行った。

まず猫に、すべて異なった「一般名詞(自分の名前と長さとアクセントを揃えた)」と「同居する猫の名前」を4つ聞かせる。そして、最後に「自分の名前」を聞かせて、その反応を見るという実験を行った。これは「馴化脱馴化法(じゅんかだつじゅんかほう)」と呼ばれる調査方法だ。

最初の4つの名詞を聞くうちに、「馴れ」が生じて反応が小さくなった猫が、最後に「自分の名前」を聞くと反応が統計的に大きくなった。これは猫が「自分の名前」を聞き分けていることを示している。また、飼い主だけでなく、見知らぬ他人の声でも、同様の結果が得られた。

こちらは「ネギボーイ」という名前の猫でこの実験を行った映像だ。最初に「サクランボ」と呼ばれると顔を上げて反応を示したものの、「アルバイト」「コカコーラ」「バイオリン」と続くに従って、徐々に反応が小さくなる。しかし5つ目に「ネギボーイ」と名前を呼ばれると、鳴き声を上げて立ち上がった。

また実験では家庭で飼育されている猫と、猫カフェの猫を対象としており、どちらも「自分の名前」と「一般名詞」を区別している研究結果が得られた。しかし、猫カフェの猫の場合「同居する猫の名前」と「自分の名前」を区別しているという結果は得られなかった。環境により、能力に差が出たようだ。

猫の「自分の名前」を聞き分ける能力は、特別な訓練の結果得られたものではなく、人との日常的な関わりの中で獲得されたものであると言えると研究グループ。人間の声が猫たちに届いていたとは、飼い主冥利に尽きる研究結果だったのではないだろうか。