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革新的なTrueDepthカメラシステムや機械学習の技術を駆使することにより、シンプルな操作で高度な安全性を実現した顔認証システム「Face ID」。スマートフォンの認証技術に変革をもたらしたとされる同システムの例を見ても分かるように、Appleは常に最高レベルのセキュリティを提供することに力を注いできた。
iPhone XS/XS MAX/XRの発表に合わせてリリースされたiOSの最新バージョン「iOS12」でも、Appleはさらなる安全性の向上を目指している。
伊藤僑
Free-lance Writer / Editor
IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。
インテリジェント追跡防止機能でプライバシー保護を強化
スマートフォンやパソコンでインターネットを利用する際に、プライバシー面で懸念されているのが行動履歴の監視・収集だ。
訪問したウェブサイトで、ユーザーがどんなページを閲覧し、どんな情報をシェアしたのかといった行動は、サイト運営者等に筒抜けになっており、常に追跡されていると考えた方がいい。ユーザーの属性に合わせた広告が頻繁に表示されるのも、このためだ。
そこで、これまでもiOSが搭載するウェブブラウザ「Safari」は、訪問先のウェブサーバから自動付与されるCookieをブロックするなど、サイト運営者や広告主などによる行動履歴の監視や収集を防いできた。
iOS12では、さらにインテリジェント追跡防止機能を搭載することによって、プライバシー保護を強化。今後はユーザーが同意しない限り、サイト内のシェアボタンなどを利用して、ユーザーの行動や利用環境を追跡・分析することは阻止されることになる。
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Face ID対応モデルでは「もう一つの容姿を設定」可能に
従来のFace IDでは、1人しかユーザーを登録できなかったが、iOS12では「もう一つの容姿を設定」というオプションが追加され、夫婦や親子での共用といった使い方もできるようになった。
Face IDでは、機械学習によって厚めの化粧をしたり、サングラスをかけていても通常は認証が可能なので、素顔と化粧時などの2つを別の容姿として登録する必要は無い。だが、顔の半分近くを覆ってしまうマスクは例外で、花粉症対策用にマスクを装着した容姿を登録しても認証は困難であり、もう一つの容姿としても登録は出来ないようだ。
パスワードの利用や管理も強化
iOS12では、近くにあるiOSデバイスやMacとの間でパスワードを共有することができるようになった。iPadや以前使っていたiPhoneを音楽再生用に使っている場合など、複数のiOSデバイス、Macを利用しているApple好きにはとても便利な機能だ。
パスワード利用における負荷を軽減するために、「1Password」など、サードパーティ製のパスワード管理アプリに登録してあるパスワードを自動入力する機能も新たに搭載された。
また、「2ファクタ認証」利用時には、SMSで受け取ったワンタイムパスワードをその場で表示し、自動入力する機能も追加されている。
iOS12では、この他にも、攻撃者から推定されやすい単純なパスワードや、パスワードの使い回しなど、セキュリティ上問題のあるパスワード管理について警告する機能も付加された。
ロック状態での外部機器の接続を防ぐ「USB制限モード」
iOS12で搭載された「USB制限モード」は、iOSデバイスがロックされた状態にある時、外部機器を接続してハッキングを行う行為を防ぐために設けられた機能だ。利用者のプライバシーを守るため、iOSデバイスがロックされた状態で1時間以上経過すると、あらゆる外部機器の接続をブロックする。
iPhone等のロックをバイパスして、デバイス内の情報にアクセスすることができる装置が開発されたことから、これに対抗して開発された。企業スパイなどが狙う機密情報をiPhoneやiPadに記録している場合には、必ずUSB制限モードをオンにしておきたい。
FaceTimeのグループ通信も暗号化
iOSでは、iMessageやFaceTimeなどのコミュニケーション機能においても暗号化技術が用いられており、チャットの内容などを他人がのぞき見ることはできない。
iOS12では、一度に31人と会話できるグループチャット機能がFaceTimeに加わったが、このグループ間における通信内容も暗号化される。
最新のセキュリティ機能を普及させるアップデート率の高さ
iOSデバイスでは、数世代前の製品まで最新のiOSに対応し、多くのユーザーが最新のiOSにアップデートして利用している。
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ここがセキュリティ面におけるAndroidデバイスとの大きな違いになっていると言われている。
最新のOSで、どんなに優れたセキュリティ機能を提供したとしても、ユーザーが古いOSをそのまま利用していては、高度な安全を提供することは出来ないのだ。
こうした堅実なセキュリティ機能の拡充が、iPhone/iPadの人気を支える要因の1つになっていることは間違いない。
なお、アップデートする際には、利用している機器・アプリなどの対応状況を調査し、問題が無いことを確認した上で実行することをオススメする。
次回の更新は10月3日です。