EVENT | 2019/04/08

「大人も使えるおもしろ文具」が次々ヒット!プロダクトデザイン事務所が本気で作った「geodes!gn(ジオデザイン)」シリーズ

よく見ると海苔巻きにみえる「のり巻きタオル」シリーズ。価格は1本648円(税込)から。Copyright (c) 201...

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よく見ると海苔巻きにみえる「のり巻きタオル」シリーズ。価格は1本648円(税込)から。
Copyright (c) 2019 GEO DESIGN All Rights Reserved.

取材・文:6PAC

プロダクトデザイン事務所が「本気のパロディ文具」を開発

「笑顔のために本気でやる」という想いを込めて、文具雑貨の「geodes!gn(ジオデザイン)」というブランドを展開するのが、東京都多摩市にオフィスを構える株式会社ジオだ。

同社は工業製品をメインとしたプロダクトデザインを本業とする会社だが、豆腐のような付箋紙「豆腐一丁」、箸そっくりの「塗り箸ボールペン」、チューブ入りわさびにそっくりなマーカー「わさびいろマーカー」、岡持ち型アルミ収納ケース「オカモッティ」など、次から次へと面白い文具を企画し、商品化している。同社でジオデザインの企画製造を担当するグラフィックデザイナーの宮本恵子氏に詳しい話を伺った。

同社における通常のデザイン業務は、家電製品や医療用機器など課題や悩みを抱えるクライアントから案件が持ち込まれるケースが一般的だという。自社発信でアイデアを形にした製品シリーズの第一弾が、冒頭でも述べた豆腐のような付箋紙の「豆腐一丁」だったそうだ。

ポストイットならぬトウフイットな付箋紙「豆腐一丁」。紙質や書き味がそれぞれ違うもめんと絹ごしの2種類が販売中。価格は580円(税抜)
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付箋が持つ既存のイメージをひっくり返した「豆腐一丁」は、従来の機能はそのまま、「ビックリ」と「にっこり」という付加価値がプラスされている。「豆腐一丁」は、本物の豆腐容器と食品表示基準に則ったグラフィックなど、パッケージの仕上がりや紙質にも徹底的にこだわった。付箋の表面も「絹ごし」はつるっとしたなめらかさを再現し、「もめん」はエンボス加工をほどこした凹凸感を再現していて、書き味がまったく異なるものとなっている。

ディティールと品質への追求の末、ふるさと納税返礼品にも採用

本物のかまぼこ板に特殊製法で付箋紙を貼り付けた「かみぼこ」。半円形なのでちょっとしたメモ書きにも便利。価格は680円(税抜)
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ディテールにこだわるのはジオデザインの最大の特徴でもある。かまぼこにそっくりな付箋紙の「かみぼこ」は、本物のかまぼこ板を使用している。「わさびいろマーカー」は、本物同様に紙箱に入った状態で販売され、箱の裏面には食品表示風の文章なども記載されるというこだわりようだ。「割り箸ボールペン」は、箸袋に入っているし、「オカモッティ」はビジネスシーンでの利用も念頭に置き、A4ファイルやPCが入るサイズで設計されている。こうしたこだわりに関しては、「たくさんのこだわりが詰まっているからこそ、たくさんのユーザーに愛され、使ってもらっているのだと思います」と語る。

薬味チューブそっくりの蛍光マーカー「わさびいろマーカー」。ねり梅と生生しょうがのバリエーションも。価格は450円(税抜)
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前述の「豆腐一丁」をきっかけとして、誰もが知っている食品パッケージをモチーフにしたジオデザインの商品展開がスタートした。これまでの売上トップ3は2010年発売の「豆腐一丁」シリーズがこれまでに15万個、2013年発売の「のり巻きタオル」シリーズが9万本、昨年発売の「わさびいろマーカー」シリーズはこれを上回るスピードでヒットしているという。これらの商品は公式の通販サイトのほか、羽田空港の「Tokyo’s Tokyo」、国立新美術館ミュージアムショップの「SOUVENIR FROM TOKYO」、青山の「文房具カフェ」、谷中の「東京キッチュ」などで継続的に販売している。

ジオデザインの商品は、どれも「ありそうでなかった」ものであり、「所有する楽しさ」と「使うことの楽しさ」の両面があるように思える。こうした商品群は、理詰めのブレインストーミングから具現化していくのか、はたまた単なる思いつきに着想を得てディテールを突き詰めていくのか、不思議に思う人も多いであろう。どういった発想が元になっているのか訊いてみると、「思いつきがほとんどです。いつでもどこでもアイデアのもとがないか探しています。最初はラフな手描きだったり、紙で試作したりしたもので、みんなに提案した中から、『これ、いいね!』とセレクトされたものをどんな素材でどのように作っていこうか検討がスタートします。生産をしてくれるメーカー探しから、見積もりと試作を繰り返し、量産へ進めていきます」という答えが返ってきた。

いつでもどこでも仕事場になるという意味なのだろう、“机上空間トランスポーター”をキャッチコピーとした岡持ち型アルミ収納ケースの「オカモッティ」は、ジオデザインの最新商品だ。

A4ファイルやPCも入る岡持ち型アルミ収納ケース「オカモッティ」。荷物をコンパクトにまとめられるのでフリーアドレスオフィスの人にも便利かもしれない。
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「オカモッティ」は、クラウドファンディングサイトの「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で、今年1月に目標金額を達成した。PCやマウスなど仕事に必要な機材一式を詰め込んで、どこへでも移動可能だ。同社がオフィスを構える東京都多摩市のふるさと納税の返礼品にもなっている。「オカモッティ」の価格は2万円台半ばからと、「geodes!gn」ブランド商品としては高額な部類に入るため、受注生産で販売予定だという。

“作りたい人”と“作れる人”がもっと繋がれば、もっと面白い”ものづくり”ができる

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「豆腐一丁」以降、新商品が登場するごとにジオデザインの商品はネットで話題になるケースが多い。SNSやウェブメディアで取り上げられることを想定して商品デザインを行っているのか訊ねてみると、「特に意識していません」とのこと。ただし、販促のための写真や画像、コピー文などは、商品の魅力がダイレクトに伝わり、面白いと思ってもらえるように考えているそうだ。

商品の購入者層は、年齢層は子どもから大人まで幅広いが、好奇心があって、面白いものが好きという共通項があるという。誰かへのプレゼントとして商品を購入した人たちからは、「誰かをビックリさせるのに成功した」、「イベントのプレゼントで喜んでもらった」といった声が集まる。同時に、インパクトや仕上がりに対するこだわりだけでなく、文具としての機能に対するこだわりに驚いたという声も数多く届くという。これまでは食品や食品パッケージをモチーフにしたものが多かったが、今後は「もっと広い視野で、定番として使えるような文房具もアイデアを出していきたいと考えています」とのこと。

本業である家電、医療機器、電子文具、情報通信機器などのプロダクトデザインと、ジオデザインの商品展開の関係性については「ターゲットや目的が違う商品であっても、デザインで生活をより楽しくするという着地は同じなので、良い影響を与えあっています」と語る。

日本の“ものづくり”という観点では近年、ネガティブなニュースや暗いニュースを目にすることが多い気がするが、「業種の壁を超えて情報交換ができたり、相談できたり、ものを“作りたい人”と“作れる人”がもっと繋がっていければ、これからもっと面白い“ものづくり”ができると思います」と、本気で取り組んでいるからこそといった答えが返ってきた。

消費者が「!」と思ってしまうものづくりがコンセプトとなっているジオデザイン。次に「!」と思わせてくれるものは、一体どういうものになるのだろうか。


株式会社ジオ

geodes!gn(ジオデザイン)