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手抜き家事、手抜き料理は当たり前?オランダ流ズボラ生活が幸せな共働き世帯を生むワケ【連載】オランダ発スロージャーナリズム(9)
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  • 2019.01.22
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手抜き家事、手抜き料理は当たり前?オランダ流ズボラ生活が幸せな共働き世帯を生むワケ【連載】オランダ発スロージャーナリズム(9)

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いよいよ働き方改革関連法案が2019年の4月に施行されます。皆さんのお勤めの企業でも、いろいろな対策を取られているのではないでしょうか?

また関連法案には含まれてはいないものの、子育て環境のさらなる充実を目指す、あるいは女性の活躍を促すさまざまな施策も行われており、皆さんの働く環境を改善しようという動きは強くなっているようにも見えます。

こうした中、オランダの働き方をお手本にできないか?ということで、ここ数年日本から多くの方が視察に訪れます。近年ではオランダのワークシェアの考え方が広く知られてきたこともあるのかもしれません。

そこで今回は、理想的な共働き生活を送っているように見えるワークシェア大国オランダの働き方をご紹介します。

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

「子どもが世界一幸せな国」は「世界一ママが幸せな国」でもある

近年、オランダを形容する時によく言われるのが、「子どもが世界一幸せな国」というもの。皆さんの中にも聞いたことがある人も多いと思います。これは2013年に行われたユニセフの調査に基づいたものです。

しかし、筆者が2年前の2017年にリサーチのために訪問した、ユトレヒト大学の女性教授に言われた言葉は今でもハッキリと覚えています。

「オランダは『子どもが世界一幸せ』と聞いていると思いますが、それはなぜだか分かりますか? それは『ママが世界一幸せ』だからです」。このように言われたことは、新鮮なショックを伴いながら非常に強く印象に残っています。

では、実際にはオランダのママの生活は、どうなっているのでしょうか?ちょっとデータを引用してみます。OECDのデータを見ると、オランダ人女性の就業率は2016年には70%を超えています。しかもこれは1980年代と比べると倍増しているのです。30年ほどをかけて、ここまで女性の就業率が上がったのです。その要因は歴史的にもいろいろとあるのですが、かなりの誌面を割くことになってしまうので今回はそこには触れずに現状をお伝えします。

筆者の周りのママ友(子どもの通う学校の保護者)を思い出してみても、働いていないママは思い浮かびません。おそらくみんな何かしらの形で働いています。

しかし、ここで日本とは大きく違う現状があります。

それは、オランダで働いている女性(特に小さいな子どもを持つママ)は、ほとんどがパートタイムだということです。

「それは、大して日本と変わらないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、オランダはワークシェアが世界で一番進んだ国。どういうことかというと、週3日、4日勤務という形態で働いている女性が非常に多いのですが、その全てが正社員なのです

「それはアルバイトじゃないの?」と思う方もいると思いますが、オランダにはアルバイトという考え方はなく、パートタイムという考え方です。そしてフルタイムが通常、週40時間労働(または36時間とか、職種によって微妙に違う)なのに対して、パートタイムは週24時間勤務、週30時間勤務などさまざまです。ですが、日本と大きく違うのはパートタイムであっても同じ企業に勤めているのであれば正社員と同じ扱いを受けているということ。つまり違うのは働く時間だけ、という考え方なのです。もちろん働く時間が違えば、それに応じて給料は違います。しかし、その他従業員としての権利は同じ企業であれば全て同じです。

なので同じ企業内には週3日勤務の正社員と、週5日勤務の正社員が混在しているという状態なのです。

だから、ママさんにとっては非常に働きやすい制度になっているのです。多くの週3勤務、週4勤務をしているママが多いのもこのためなのです。

共働きであっても子どもを預けるのは週1日

小学校に通わせているような小さな子がいる共働きの夫婦で、多いパターンはパパが週4勤務。そしてママが週3勤務というパターンです。

ただ実際には、自宅勤務の日があったり、そもそもテレワークが認められていたりするのでハタから見ると、いつ働いていて、いつ休んでいるのか?よく分からないのが実情です。

さらに、例えば週20時間勤務という契約であるが、週5日全て午前中の勤務のみ、といったような勤務形態もあり、場合によっては「今週は金曜日の午後が晴れそうだから、木曜日の勤務時間をちょっと長くして、金曜日はサッサと午前中で勤務終了してしまう」ということもあります。当事者でなければ、誰がいつ働いているのか?フルタイマーなのか?パートタイマーなのか?はさっぱり分からないのです。

ただ、一般的にオランダでは水曜日は午前中で子どもの学校が終わるので、休みを取る人が多く、水曜日のお迎えはパパが多い気もします。平日、お休みを取って子どもと一緒に過ごす日にしているパパも多くいます。特に小学校にまだあがらない幼児や子どもと、平日の休みを一緒に過ごすパパを「今日はパパの日ね」と言って、社会全体で見守ります。もっとも最近ではあくまでも子育てを普通にしているだけなのに、それを敢えて「パパの日」というのはおかしい。「ママの日」とは決して言わないのだから、という話も聞かれます。実際に、平日の昼の公園にパパと小さな子どもが一緒にいることは、全く特別な光景ではありません。

筆者の子どもが通う学校の様子。実際にパパが家から送ることの方が多いです。

一方で筆者は日本で2014年に1年間の育休を取りましたが、平日に子どもを連れて公園に行ったり、上の子の幼稚園にお迎えに行ったりすると、働いていない男性は完全に不審者扱いされるというさまざまな経験をしました。

実は、社会のこうした視線も、知らず知らずのうちに男性を子育てから遠ざけていることかもしれません。

さて、話を戻すとオランダの共働き世帯では、こうやってそれぞれの働く時間を工夫しながら、子育てを行うのが普通です。平均的には、共働き家庭であっても子どもをいわゆる学童保育に預けるのは、週1日、または週2日くらいです。時には、祖父母にヘルプをしてもらうことで、子どもを長い時間、学童に預けることはできるだけ避ける傾向にあります。

それでも低い女性の役職者率

先にオランダでは女性の就業率は70%とご紹介しましたが、同じくOECDのレポートによると、オランダでは働いている女性の60%以上が週30時間以下のパートタイマーだというのです。特に小さな子どもを持つママさんの場合、ほとんどがこのパートタイマーにあたるようで、これは筆者の感覚でも全く同じです。

しかし、世界一進んでいるワークシェアの国であっても問題になっていることがあります。それは企業内で昇進できる人、それから、やりがいがあるような仕事は結局フルタイム勤務の人、つまり男性に多く機会が与えられてしまうということです。オランダで就業している女性の割合は、他のEU諸国に比べて高いものの、逆に女性の管理職の割合は非常に低いものになっているようで、これを増やすためにオランダ政府も対策を行っているようです。

この問題は、一般的には高い教養を持つ女性にもっと活躍の場を与えよう、女性が活躍できるオープンな社会を作ろう、社会的には損失だ、という文脈で語られることが多いのですが、筆者はそこに少し違和感を感じています。

というのは、周りのママ友を見ている限り、皆、それぞれ週3、週4勤務の勤務体系を非常に前向きに捉えており、「仕事もできて、子育てもできる」「仕事もやりがいがあるに越したことはないけど、今しかできない子育てにもコミットしたい」「子どもと一緒にいられる時間が十分に取れた方が良い。仕事は私の人生の全てではない」と考えるママさんが非常に多いからです。

こういう話を聞いていると、女性当事者たちは自分の人生においては仕事だけに活躍の場を求めている訳ではないように見えるのです。

また、子育ても仕事も非常に幸せそうに両立している、オランダのママさんたちに共通しているのは、言い方は悪いのですが家事に関して非常にズボラな人が多いように思えるということす。もちろん例外もたくさんあるとは思いますが、オランダ人ママさんと比べると、日本人ママさんは清潔で、几帳面で、何事もきちんとしすぎている人が多い気がします。

日々の食卓も非常に質素です。これは贅沢を好まないプロテスタントの影響があると言う人もいますが、なんなら朝、昼、晩、三食サンドウィッチなんてこともありますし、夜しか火を使った料理をしない、なんて家庭も非常に多いのです。なのでキャラ弁なんて絶対に存在しません。お弁当作りに1時間かけるなら、15分で終わらせて残りの45分で子どもと遊ぶことを選びます。

自分にとって何が一番大切か、大事にしたいかが非常にはっきりしているのです。

オランダ人ママさんはこんなタイプが多いので、ここに政府の「もっと女性に活躍の場を与えよう!」という施策との根本的なギャップも感じます。もちろん、政府の推進する施策に大賛成の女性もいることでしょうが。

オランダの良いところは、このように自分の意見をストレートに表現した上で、各個人が他人の意見を尊重しつつ自分の意思で働き方自体を選べるところかもしれません。

今回はオランダの働き方をご紹介しましたが、共働き家庭が非常に多い、世界一ワークシェアが進んだこの国であっても、上述の通りまだ多くの課題があります。

なので、当然ながらこうした働き方だけを参考にして、そのまま真似ても実現するとは思えません。例えば、ここには義務教育の教育費が無料であったり、共働きであればグッと学童費や保育費が安くなる仕組み、そしてエリアによっても大きく異なりますが、地域コミュニティがかなり機能していることや、通う学校を自由に選べること、そもそも仕事に対する価値観の違いや、日本と比べるとサラリーマン家庭の割合の低さなど、教育制度やコミニティ、そして社会制度の違いなども大きく関係していると思うからです。

時間をかけずにトライ&エラーを繰り返しながら、日本に合った共働きしやすい制度や仕組みを作れると良いのではないでしょうか。もしかしたら、ズボラ家事がポイントかもしれませんが。


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