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「ヒップホップ長者番付2018」が発表。今やビジネスマン、投資家、資産家の顔を持つラッパーたち
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  • 2018.10.03
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「ヒップホップ長者番付2018」が発表。今やビジネスマン、投資家、資産家の顔を持つラッパーたち

Photo By Shutterstock

文:6PAC

“Nothing succeeds like success(一事成れば万事成る)”

「アメリカのラッパー」と聞くとどういった人間を想像するだろうか? 犯罪者やチンピラといったイメージを持たれる方も多いだろう。確かにそうした黒歴史のあるラッパーも多い。

しかし、1990年代にCDのミリオンセールスを出すなど、ヒップホップという音楽ジャンルで成功を掴んだラッパーの多くは、現在ビジネスマンであり、投資家であり、資産家である。英語には”Nothing succeeds like success(一事成れば万事成る)”という言い回しがあるが、ヒップホップ・ミュージックで成功した者たちは別の分野でもさらなる成功を掴んでいる。そしてその収入はプロスポーツ選手の収入に並ぶ規模のものとなっている。

米経済誌の『フォーブス』は、独自の集計に基づいた2018年版のヒップホップアーティスト年収ランキングを9月12日に発表した。

トップ10の順位は以下となっている。繰り返すが、これは総資産ではなく年収である。

1位:ジェイ・Z (7,650万ドル)※約86億2,900万円
2位:ショーン・コムズ(Diddy)(6,400万ドル)
3位:ケンドリック・ラマー(5,800万ドル)
4位:ドレイク(4,700万ドル)
5位:J・コール(3,550万ドル)
6位:ドクター・ドレー(3,500万ドル)、ナズ(3,500万ドル)
8位:ピットブル(3,200万ドル)
9位:フューチャー(3,000万ドル)
10位:カニエ・ウェスト(2,750万ドル)
11位:DJキャレド(2,700万ドル)
12位:ミーゴス(Migos)(2,450万ドル)
13位:エミネム(2,300万ドル)
14位:チャンス・ザ・ラッパー(2,150万ドル)
15位:トラビス・スコット(2,100万ドル)

日本では「ビヨンセの夫」としての方が有名かもしれないジェイ・Z がトップの座についている。彼の推定資産額は9億ドル(約1,015億円)と言われている。音楽レーベル、ベンチャー投資、M&A、アパレル、アルコール、コンテンツ、ブランドとのライセンス契約などの事業で築き上げた資産だ。

ジェイ・Zのこの数字を同じくフォーブスが今年4月に発表した「日本長者番付2018」に当てはめてみると、名だたる経営者に割って入ることとなり、ちょうど50位にランクインする。他のアーティストたちも同じような事業で資産を築き上げてきた。6位のドクター・ドレーは、大阪なおみ選手も愛用しているイヤホン、ヘッドホンなどの音楽デバイスブランド「ビーツ・バイ・ドクタードレ(Beats by Dr. Dre)」を、2014年に30億ドル(約3,380億円)でアップルに売却したことでも知られている。

Photo By Shutterstock

ラッパーたちの多くは自身もパフォーマンスをするが、プロデューサーとしても活動する。日本でもCDセールスが好調だった1990年代には、プロデューサーとしてヒット曲を連発した小室哲哉氏が荒稼ぎした。その小室氏の最盛期の年収は20億円超、総資産額は100億円超と言われている。そして現在でもプロデューサーとして活躍している秋元康氏の年収や総資産額は、小室氏の最盛期と同等かそれ以上と言われている。だが日本の音楽業界で大成功を収めたこの2人でも、ヒップホップアーティスト年収ランキングのトップ10には入れないのは印象的だ。

ジェイ・Zの年収はスポーツ選手ランキングだと9位に相当

スポーツ選手との対比で見てみると、フォーブスが今年6月に発表した「世界で最も稼ぐスポーツ選手2018」では、ジェイ・Zの年収7,650万ドルだと9位にランクインすることになる。ジェイ・Zより稼いでいるスポーツ選手は、サッカーのリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウド、バスケットボールのレブロン・ジェームズやステフィン・カリー、テニスのロジャー・フェデラーといった面々だ。ちなみにこちらのランキングでは、錦織圭選手が3,460万ドル(約39億円)で35位、田中将大選手が2,310万ドル(約26億円)で95位にランクインしている。

ヒスパニックの人口比率が急激に増えているものの、いまだにアメリカはヨーロッパ系アメリカ人(いわゆる白人層)がマジョリティの国である。しかし、2018年版ヒップホップアーティスト年収ランキングはアフリカ系アメリカ人がマジョリティを占める。それ以外でランクインしているのは、ヨーロッパ系アメリカ人のエミネムと、キューバ系アメリカ人のピットブル、パレスチナ系アメリカ人のDJキャレドだけだ。

“ブラックミュージック”の長い苦闘の末、ヒップホップ・ミュージックが掴んだ成功

1600年代に奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられたアフリカ人が、強制労働させられていた綿畑などで歌っていたのが、後にゴスペル、ブルース、ジャズ、R&B、ソウル、そしてヒップホップへと枝分かれしていく、いわゆる“ブラックミュージック”のルーツだ。映画『キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語』や『ドリームガールズ』では、1950~60年代に白人プロデューサーに曲を盗作されたりしながらも、他の音楽ジャンルに及ぼした“ブラックミュージック”の影響力が描かれている。同時に、アメリカ社会で差別や迫害されてきたアフリカ系アメリカ人が音楽業界で成功を掴もうと必死にもがく姿を描いている。

そうした“ブラックミュージック”の長きに及ぶ苦闘の歴史を経て、現在のヒップホップ・ミュージックの栄華につながっているのだ。ちなみに、ジェイ・Zやショーン・コムズのサクセスストーリーがモデルと言われているドラマ『Empire 成功の代償』シリーズを観れば、ヒップホップで成功した者たちが現在どういったビジネスを手掛けているかを垣間見ることができる。

マイクロソフトのビル・ゲイツや、Amazon.comのジェフ・ベゾスといったヨーロッパ系アメリカ人たちは、1990年代から2000年代初頭にかけてのIT革命で莫大な資産を築いた。そして同時期にヒップホップという新しい音楽ジャンルで富を築き始めたアフリカ系アメリカ人たち。これはまさにヒップホップ革命と言えるものだろう。

「金が集まるところに人が集まる」という言葉通り、現在、ヒップホップ・ミュージックで一発当てようとしている若者たちはアフリカ系アメリカ人に限ったものではなくなっている。アジア系やアラブ系ラッパーの数も多く、自身のトラックをYouTubeなどで公開していたりする。こうしたヒップホップ・ミュージックの世界ではマイノリティに属する若者たちが、数年後の年収ランキングにどれだけ食い込んでくるのかも楽しみなところだ。


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