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健康をアップデートすれば200歳まで生きられる?ホリエモンが予防医療に「未来」を見る【ブックレビュー】
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  • 2018.09.25
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健康をアップデートすれば200歳まで生きられる?ホリエモンが予防医療に「未来」を見る【ブックレビュー】

神保慶政

映画監督

1986年生まれ。東京都出身。上智大学卒業後、秘境専門旅行会社に就職し、 主にチベット文化圏や南アジアを担当。 海外と日本を往復する生活を送った後、映画製作を学び、2013年からフリーランスの映画監督として活動を開始。大阪市からの助成をもとに監督した初長編「僕はもうすぐ十一歳になる。」は2014年に劇場公開され、国内主要都市や海外の映画祭でも好評を得る。また、この映画がきっかけで2014年度第55回日本映画監督協会新人賞にノミネートされる。2016年、第一子の誕生を機に福岡に転居。アジアに活動の幅を広げ、2017年に韓国・釜山でオール韓国語、韓国人スタッフ・キャストで短編『憧れ』を監督。 現在、福岡と出身地の東京二カ所を拠点に、台湾・香港、イラン・シンガポールとの合作長編を準備中。

http://y-jimbo.com/index.html

「200歳まで生きたい」というホリエモンの野望

ホリエモンが予防医療の普及に取り組んでいることをご存知だろうか。堀江貴文『健康の結論』(KADOKAWA)は、著者が予防医療に関心を持った経緯と、今後のビジョンが書かれている。

本書の冒頭では、いきなり「200歳まで生きると決めた」と宣言がなされる。終活やエンディングノートなど、今まで関心を集めてきた「どう死ぬか」よりも、著者の興味は「どのように死のリスクを避けて、より長く人生を楽しむか」にあるのだ。

予防医療とは何かということは説明しなくても、多くの読者の方々は想像できるはずだ。そう、健康診断も予防医療のひとつだ。では、なぜそれを普及する必要があるのか。予防医療をビジネスチャンスとして見ているのか、それとも純粋に多くの人の役に立つように普及させたいのか。著者はよく質問されるというが、その答えは両方だ。

マネタイズと普及活動は両輪で、ビジネスでお金を稼ぎながら稼いだお金を普及活動に突っ込むということをやらなければ、認知してもらえない。(P10)

多種多様な健康ビジネスが世の中に存在しているが、ホリエモンはその根本を突く。例えば、想定外の災害に備えるということは、思いつく限りの「あの時こうしておけばよかった」を減らす取り組みが必要だ。健康についても同じことが言える。「健診を定期的に受けておけばよかった…」という類の無駄な後悔を、世の中から減らそうと著者は試みているのだ。

ツタンカーメンにしても、始皇帝にしても、太古から人は長寿もしくは不老不死を夢見た。不老不死は難しいが、生きることの喜びをより多く味わうために非死の状態を長引かせるのは可能だというのが著者の信念だ。

時代が変われば身体が変わり、身体が変われば健康も変わる

健康を蝕む大きな要因のひとつが、精神の不調だ。言うまでもなく、日本は自殺大国で、若者の自殺率が事故死率よりも高い。

2050年には100歳の人口が100万人以上になるという。そうなった時に、従来の年功序列型の「上司-部下」がどこまで機能するかは定かではなく、「定年まで会社勤め」スタイルは何歳までになるのか、その仕組みが維持され続けるのかなども疑問だ。

人材の流動性が高くなり、毎回メンバーが入れ替わるプロジェクト型業務や、他部門・外部の会社との連携も増えた。こうなると阿吽の呼吸でコミュニケーションは成り立たない。(P36)

毎日同じオフィスで、同じ仲間と、同じ目標に向かう時代は終わった。以心伝心や阿吽の呼吸に重きを置く昭和的なコミュニケーションに見切りをつけて、言いたいことは言って、伝わったらラッキーぐらいの気持ちで気兼ねせずやりたいことをやって、かつやりたくないことはやらず、相手に物言いをしたほうが世の中うまくいく。要するにモチベーションが全てなのだと著者は主張する。

本書の特徴的な点として、章の合間に専門医のコラムが設けてある。産業医の大室正志氏は、現代人の脳がいかに情報を多く処理しているかということ、そしてその緊張状態を緩和する最大の方法である「寝ること」の重要性を読者にリマインドしている。

現代は、いわば「脳高負荷時代」です。私たちが1日に触れる情報の量は江戸時代の1年分ともいわれています。膨大な情報を処理し、疲弊する脳を「いかに休めるか」、つまり脳へのストレスをどう軽減するのかが、長く高パフォーマンスで働くために重要性を増しています。(P49)

しかし、全ての人がそう器用にこなせるわけではない。そうしたくてもそうできない人もいる。著者は「逃げること」「ふさぎ込むこと」を否定せず、引きこもりの何が悪いのだと主張する。もっと弱みを人に見せていい。そうした考えは、著者の予防医療への興味にもつながっている。

人の弱みに関心を持つことは、自分の弱みの認識にもつながるはずだ。しかし、世の中では「弱みの共有」ではなく「大丈夫であるかのように振る舞うこと」が求められる。

例えば、交通機関の遅延があって出社が間に合わなかったとする。遅延証明を提出して、一言謝って遅れが許容される場合もある。一方で、遅延証明を出したり遅れの理由を話すと、遅れが生じた場合も加味してもう少し早く出るべきではなかったかと意見されることもある。

どちらにしても、結局は遅延証明では何も証明できず、そこはコミュニケーションで詳細まで共有しなければいけないのだ。しかしどうしても、紙幣が価値を持つかのように、遅延証明という一切れの紙が不安定な意味を纏い、正常な判断を奪われてしまう場合が多い。

病気になって会社に行かないと迷惑をかけるのではないだろうか。そういった心配する時代は終わったのだと著者は明言する。

僕はかつて刑務所にいた。刑務所は決して逃げられない牢獄だ。けれども、一般社会は牢獄ではない。会社からも家族などからも、望めばいつでも逃げられる環境だ。(P72)

現状に対して悩みがあっても、それは籠の中の出来事で、外に出れば違う地平が広がっているということを著者は人一倍理解しているのだ。

一人だけでなく、皆が知って初めて「予防」できる

本書ではMRI、突然死防止、ワクチン、がん医療、歯科医療など様々な方面の予防医療が説明されている。予防医療促進活動の一例として挙げているのがAED (自動体外式除細動器)の普及と、その使用方法の周知だ。1台30万円程度するにも関わらず、実際に使われるのは5年に1回ぐらいだが、1分ごとに劇的に死亡リスクが高まる心肺停止状態の生存率を大きく上げるのがAEDによる電気ショックなのだという。筆者も、本書を読んだ後に、最寄りのAEDはどこかチェックしてみたところ、自宅のオートロックのそばにAEDがあることにはじめて気付いた。

AEDのコストを下げ、コンビニなどに設置できるようにクラウドファウンディングをするのがよいのではないかというアイデアを著者は提案しているが、予防医療全般に共通する課題は「いかに皆が知っている状態にするか」だという。

いかに自然に「あっと気づいたらAEDの使い方を覚えている」状態にできるか。これはゲーミフィケーション、ある種のゲーム化が功を奏する領域ではないだろうか。これは、予防医療の啓発全般に通じる課題だ。(P95)

物事を「誰でも知っている」という状態にする。これは「ほぼ誰でも知っている」ホリエモンだからこそ加担できる課題なのかもしれないと、本書を読んで納得した。自分の健康が気になる方、いかに病気を予防できるかに興味がある方はもちろんのこと、やりたいことをどんどん実現していくホリエモンの実行力を学びとりたい方にオススメの一冊だ。


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