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文:山田山太
ゴミを漁ったり人間を威嚇したりすることから、厄介者扱いされがちなカラス。その一方で、非常に知能が高いことでも知られている。
そんなカラスの賢さをさらに確固なものとする新たな論文が6月2日、科学誌『The Journal of Neuroscience』に掲載され、注目を集めている。ドイツのテュービンゲン大学の研究チームが発表したその論文によると、カラスはなんと「ゼロの概念」を理解しているかもしれないというのだ。
ゼロを認識するニューロンが反応
「ゼロの概念」は、一説には628年にインドの数学者ブラーマグプタによって発見されたと言われており、1400年ほどの歴史しかない。無を数値として表現するのが、人にとってもかなり難解だったことが分かるだろう。
この論文の共著者であるアンドレアス・ニーダー教授は、『LIVE SCIENCE』に「ゼロは他の整数と異なり、実際に物を数える動作と対応しません」「ゼロを捉えるためには、現実と切り離した、非常に抽象的な思考が必要です」と語っている。
ニーダー教授らが2015年に行った実験では、2羽のハシボソカラスの前に2つのモニターを設置し、それぞれ1〜4個の点を表示。両方のモニターに同じ数の点が表示されている場合はカラスにモニターをつつかせ、異なる数の点が表示されている場合はじっとしているよう訓練した。するとカラスは、約75%の確率で点の数をしっかりと見分けることに成功。実験の中でカラスは点の数を混同してしまうこともあったが、その際も比較的近い数同士で間違える傾向が見られた。これは「数的距離効果」と呼ばれ、人間や猿においても確認できる現象だ。
そして今回の実験では、画面に何も映さない状態、つまり「点が0個」のケースを追加した。すると、カラスは見事に対応。カラスはゼロを理解している可能性があることが分かった。さらに、点が0個の場合も「数的距離効果」が見られ、点が1個と混同することが多かったという。
研究チームは、実験中のカラスの脳の働きを観察したところ、それぞれ点の数に応じた異なるニューロンの反応が見られた。しかも、その反応は点が0個の場合にも確認できたとのこと。
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