文:武者良太
最高時速16km/h、航続距離7kmの筋斗雲
高性能なバッテリーマネージメント技術と、高効率なモーター技術が高まってきている現在。公共交通機関が望めない「ラストワンマイル」をケアしようと、世界各国でさまざまな電動モビリティが生まれてきている。
残念ながら日本では法律の壁があり、それらの多くは公道では使えない。しかし交通イノベーションを加速させる施策をとってほしいと強く感じる。日本からも「WALKCAR」(ココアモーターズ・渋谷)のような製品が登場しているからだ。
見た目は13インチノートPCサイズの板。ここには68Whのリチウムイオンバッテリー、新規開発の世界最小インホイールモーター、タイヤを組み込んだWALKCARは、体重移動で加速・減速・停止・コーナリングができるモビリティ。勾配10度の坂を登れるパワーを持つモーターは、16km/hの最高時速(スポーツモード)も叩き出している。航続距離は最高7km(ノーマルモード)で、片道1~3kmほどの道のりを待ち時間なく移動するために作られたものと考えられる。
帝人のカーボン素材テナックスや、同じく帝人のポリカーボネート樹脂パンライトなどを使うことにより、重さはたったの2.9kg。バッグに入れて運ぶこともできる。まさに世界最小のEVといっていいだろう。
走行している姿は、空に浮いて疾走しているかのよう。まるで、ドラゴンボールに登場した筋斗雲だ。
2016年に発表されて以来、世界中から注目を集めたプロダクト。ついに量産型が完成し、6月9日より国内販売がスタートした。価格は税別19万8000円。90万円を超えるセグウェイと比較すれば、そのリーズナブルさが実感できる。
しかし前述したように、WALKCARで日本の公道を走ることはできない。構造上、ナンバーを取得するのも難しいはずだ。
だからこそWALKCARのようなモビリティを、誰もが自由に活用できる都市設計を期待したい。日本のものづくり、製造業を支える土台ともなるはずだ。