EVENT | 2018/05/29

K-1王者と対戦!鮮烈なキックボクシング体験が新たな挑戦へのゴングを鳴らす。TED『世界の12人の若者』に選ばれた若き社会起業家、牧浦土雅氏

若くして東アフリカの新興国における農業関連の社会事業を成功させたことで知られる牧浦土雅氏が、K-1オフィシャルサポートで...

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若くして東アフリカの新興国における農業関連の社会事業を成功させたことで知られる牧浦土雅氏が、K-1オフィシャルサポートでのエグゼクティブキックボクシングマッチでトップファイター・小比類巻貴之氏(ISKAスーパーウェルター級元世界王者、K-1 World Max 2004, 2005, 2008年日本王者)と対戦し注目を集めた。なぜ、格闘技未経験だったにもかかわらずキックボクシングマッチガラへの挑戦を決意したのか。そこから何を得て、新たなビジネスに踏み出そうとしているのか。教育サービスから宇宙ビジネスへと大きく舵を切る24歳の熱い思いをうかがった。

聞き手:米田智彦 構成・文:伊藤僑 写真:神保勇揮

牧浦土雅

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1993年 東京生まれ。13歳で単身渡英し英国ボーディングスクールで学ぶ。ブリストル大学中退。2014年から東アフリカで国際協力機関と農民を繋げるプロジェクトを牽引し、数百トンもの農作物を難民キャンプに届ける。同年、TED「世界の12人の若者」に選出。現在は、世界中で数百万人の熱心なユーザー(先生、生徒)を有すIT教育サービス「Quipper」の世界展開に従事するとともに、様々な社会的課題の解決にも取り組む。

格闘技歴半年で元世界王者と対戦!

2017年12月20日にパレスホテル東京で開催されたK-1スタイルのチャリティーマッチ「Executive Match GALA QUOTATION(クォーテーション)」のパンフレットより。リングで経営者同士が戦うという斬新なコンセプトが注目を集めた。

—— 格闘家の小比類巻貴之さんと、パレスホテル東京の特設リングで対戦なさったそうですね。格闘技歴半年のデビュー戦で、いきなり元世界王者との試合を組むなんて驚きです。なぜそんなことができたのですか?

牧浦:きっかけは、Amano Creative Studioの敏腕プロデューサー・天野舞子さんから「新生K-1も注目を集めていることだし、エグゼクティブの間でキックボクシングが流行っていることもあるので、K-1スタイルでエグゼクティブが対戦し、フルコースディナーの観客席という新しい格闘技イベントのチャリティガラの企画を考えている」とお話を頂いたことです。そして、「Executive Match GALA QUOTATION」の開催につながりました。

牧浦氏の試合の模様

—— なぜご自身が試合に出ることになったのですか?

牧浦:昔はラグビーをやっていたし、過酷と言われるトライアスロンだって3年もやっているので何とかなるんじゃないかと(笑)。まぁ、その場のノリで「やるか!」と承諾した感じです。ウエイト別に対戦相手を組んでいたら、紆余曲折あり私の対戦相手がドタキャンし、試合開始1カ月前に新たな対戦相手を探していたら、「もう面白くなるカードはVS小比類巻(プロ格闘家62戦40勝VSアマチュアデビュー戦)しかない!」となりました。

さすがに躊躇しましたが、K-1オフィシャルサポートのもと、元世界王者・K-1 WORLD MAX日本代表決定トーナメント3度の優勝を誇る小比類巻さんと対戦する機会はK-1ファンにとって最高の栄誉(私は別に格闘技が好きだったわけでもありませんが)。一応ヘッドギアもつけているし、死ぬことはないだろうと決意しました。

格闘技未経験者が、半年間のトレーニングでキックボクシングの試合を闘い抜くための身体作りをするのは並大抵のことではありませんね。

牧浦:イベント開催が決まった6月からは小比類巻さんのジムに通い始めたのですが、僕も仕事柄、いつも日本にいるわけではありません。住まいのあるシンガポールやフィリピンでもトレーニングに励みました。

実は当日の試合では、1ラウンド目は僕が優勢でした。というのも、小比類巻さんのジムに通っているだけではなく、このように各国数名のトレーナーとトレーニングした結果、型にはまらない戦い方ができた。つまり、基本と言われるコンビネーションや戦略ではないので、相手にとってはかなり戦いにくかったと思います。

これまで取り組んできたトライアスロンは、朝7時に始まって夜8時に終わるような長時間のレース。そのため、ゆっくり長く動き続けるための筋肉が必要になります。ところが今回のキックボクシングの試合では、1ラウンド・2分間を2ラウンド戦わねばなりません。使う筋肉がまったく違いました。

小比類巻さんとの対戦が決まったのは昨年11月末のこと。試合まで1カ月もありません。そこからはトレーニングのギアをもう一段上げて、スピードと瞬発力に力点を置いたトレーニングを心がけました。あとは恐怖心に打ち勝つ(最初は目をつぶってしまう)ために、ただひたすらガードしてトレーナーにパンチをしてもらう、といったメンタル面での強化もしました。

元世界王者との戦いはいかがでしたか?

牧浦:自分でもFacebookに試合の様子をアップしたんですが、ローキックからミドルキック、ハイキックに至るまで、みんな喰らってしまっています。当たり前なのですが(笑)。でも、リング上ではアドレナリンが出ているためか不思議と痛くなかったんです。最後は、みぞおちに膝が入ってダウンを喫しKOされてしまいました。

小比類巻氏との固い握手

負けたとはいえ、とてもいい経験をさせていただいたと感謝しています。あの試合は、間違いなく人生で一番アドレナリンが出た瞬間でした。普段の生活では感じられない気持ちよさ、ランナーズハイならぬ「キックボクシングハイ」ですね。試合を経験してみて、K-1の試合と同じようにアドレナリンが出ることに挑戦したくなりました(笑)。

着地点が見えてきたIT教育サービス「Quipper」

—— 先輩経営者からは、「いろいろなビジネスやプロジェクトをやり過ぎているので一つに絞った方がいい」と言われているようですが。やりたいことは見えてきましたか?

牧浦:いずれ注力すべきことは見えてくると思うので、いまはいろいろ試してみている段階です。

直近の取り組みとしては、2017年の初めぐらいからオンライン教育サービス「Quipper」の東南アジア(主にフィリピンとインドネシア)展開に尽力してきました。

オンライン教育サービス「Quipper」のHP。フィリピン、インドネシア、メキシコで展開している。

日本でいう林修先生みたいな、知識豊富で教え方がうまかったり、カリスマ性があったりと、その国で一番良いとされる先生の授業動画をオンライン上のプラットフォームに乗せて、いつでもどこでも高レベルの授業が受けられるというサービスです。その狙いは、都市部と農村部の間で生じている教育レベルの格差を解消することにありました。

「世界の果てまで最高の学びを届けよう」という我々のミッションに沿って、これまで高校に行けなかった人たちが、このサービスを利用することで高校や大学に行けるようになる。そんなイノベーションを起こしたかった。

しかし、2年間取り組んでみて分かったことは、我々単体でビジネスとして成立させることは難しいということ。というのも、地方や農村部では教育サービスにお金を払うという文化が根付いていないため、“教育の意義”からプレゼンする必要があります。なので、戦後日本が学校教育という公共サービスを植え付け高度人材を生み出したように、発展途上国の教育政策は国の予算を使い、国家の施策として一気に官民でともに全国展開するのが至極当然だと個人的には思い始めました。後は地道な政府への交渉かと考えています。

—— 牧浦さんのFacebookには、さまざまな国の要人との写真がアップされていますね。

牧浦:政府関係者とのパイプ作りには力を注いできました。というよりかは仲良くなっているだけ、でしょうか(笑)。大統領府関係者や主要都市市長とご飯を食べたり、日本にお連れしたりすることで良好な関係を築く。それで日本という国を好きになってもらい、信用してもらえればそれで良いです。「接待」なんかではなく、あくまで自分の国のことを知ってもらいたいだけ。少しでもいやらしさが出た時点で一気に関係は崩れてしまいます。

そして後は現地の人に引き継いで頑張ってもらう。その国のことは、その国の人にやってもらうのがベストですから。

—— ということは、いよいよ次にやりたいことが見つかったわけですね。

牧浦:昨年の頭ぐらいから次になにをやろうかを考え始め、IoTから仮想通貨、AI、宇宙、農業、医療など、いろいろリサーチしてみた中で、一番アドレナリンが出るなと思ったのは、航空(飛行機)と宇宙でした。

IT教育サービスから航空・宇宙へと大きく舵を切る

—— 教育から、いきなり飛行機と宇宙とは驚きです。

牧浦:航空会社を作りたいんです。今考えているのは、映像作品が見放題のNetflixのように、飛行機を乗り放題にしたら面白いんじゃないかと。例えば、ビジネスマンに特化したサブスクリプション方式とか。LCCよりもっと安いVLCC(Very Low Cost Carrier)も実現してみたいですね。3時間ぐらいで着くなら立ち乗り飛行機だっていいかもしれない(笑)。

東南アジアの人たちは文化や国柄的側面からか、訪日時の観光でアクティビティやお土産にはお金を使うけれど、交通費や宿泊費には極力使いたくないんですね。野宿でもいいという人さえいます。だから、飛行機料金を安くしたら、もっと多くの観光客が日本にやって来るはずです。

宇宙もやってみたいテーマの一つです。宇宙ベンチャー的な動きが各国で始まっていますが、大量の衛星が宇宙空間に放出される今、重要視され始めているのが衛星が収集した画像・動画などのデータ。まだGPSや天気予報ぐらいにしか活かされていません。他にも活かせることがきっとあるはずです。

—— もう動き始めているのですか。

牧浦:新しい事業を始める時、僕はいつも第一線で活躍するフロントランナーに直接会って話を聞きに行きます。宇宙関連では、元宇宙飛行士の山崎直子さんをはじめ、NASAで実験論文が認められた研究者やJAXAの現役職員、東大の宇宙研で学んでいる人などにお会いしました。現在は、そうした宇宙関連の人たちを10人ぐらい集めて、何をやったら面白いか、そして一番インパクトを与えることができるのかを議論する勉強会を2カ月に1度ぐらい開いています。

宇宙勉強会での仲間たち

—— まだスタッフを集める段階ではないと。

牧浦:以前から僕は、すべてを捨てて起業し人を採用するというビジネススタイルというのは、もう古いと感じていました。今、一緒に勉強会をやっている人たちは25〜40歳ぐらいで、有名IT企業で働いている人もいれば、大学院生もニートもいる。そんな人たちに、今の会社や学校を辞めてウチに就職してほしいというよりも、プロボノ的な感じでまずは関わってもらい、フルコミットできる体制が整ったらそうすればいい。大学生が就職先を見つけるためにインターンをしている延長線、「放課後の延長戦」ですかね(笑)。

普段は個人個人で考え、作っているけど、皆が集まって一つのゴールのもとプロジェクトを遂行するとそれが大きな力を発揮する。ライゾマティクスの齋藤さんはこれを「スイミー理論」と提唱しています。僕はこれまで業界や年齢、国籍を超えた人々を巻き込み、ファシリテートし、道筋を描いてくるのを得意としてきたので、同じスタイルでやっていきたいと考えています。

彼・彼女たちは面白いこと、やりがいのあることに対してすごく貪欲で、アイデアもどんどん出てくる。そしてこれを形にしていくプロセスを今年の夏終わり頃までにはつくりあげたいと思っています。

—— どのようなアイデアでしょうか。

牧浦:多くの新興国を回ってきた自分の経験も活用していきたいですね。例えば、アフリカではヤギや羊、牛の放牧がメジャーな飼育方法ですが、これは砂漠化を加速させます。しかしこれは人為的で、この放牧のさせ方が土地の劣化を進行させてしまう。衛星画像を駆使し、その実態を可視化することで、乾燥度や放牧面積などで砂漠化を防ぐ一助になるかもしれません。

さらに、マクロな画像解析が可能なので、単純な牛の数などではなく、その移動経路解析など、違った分野にも応用できます。また解析技術の進化や規制緩和が進めば、衛星画像で途上国の子供たちのお腹の膨らみ具合(タンパク質の摂取が不十分)から、栄養失調の子供たちへ優先順位が高い順に救援物資を届けることができるかもしれません。

もちろん、衛星画像の有用性に着目しているのは僕たちだけではありません。すでに、貯蔵タンクに蓄えられている石油の量を調査し、マーケットの判断材料として提供しているベンチャー企業なんかも出てきています。海流の流れを可視化して魚群の追跡に使うところも現れました。言い換えると、お金儲けできる領域は既にレッドオーシャン、といった感じでしょうか。

—— ビジネス活用できる分野は、まだまだありそうですね。

牧浦 でも、僕はあえてビジネス化にこだわらず、しばらくはソーシャルチックにいこうかと考えています。いきなり会社設立はせずに、プロジェクトベースで密かにやろうと。やはりインパクトですよね。どれだけ社会にインパクトを与えられるか。目下の数字にはこだわらず、ミッションにこだわりたいです。

—— 起業家は、最後には宇宙に辿り着くものなのでしょうか。イーロン・マスクも、堀江貴文さんもそうだったように。

牧浦:堀江さんには、毎回会うたびに刺激をもらっていますが、宇宙という未知の世界は我々もドキドキします。このドキドキは絶対に他では味わえないのでしょう。キックボクシングなど以外では(笑)。

—— 確かにこれから50年後を見据えたら、宇宙ですね。

牧浦:絶対にそうです。確実に行けるようになる。旅行じゃなくて本当に住めるレベルになるかもしれない。イーロン・マスクは、宇宙空間にまでテスラを打ち上げてしまった。火星への移住も本気で考えている。ああいう人たちがいるから面白い。この勢いで進化させていけば、10年後はどこまで進化していることか。

—— だから教育から宇宙へと大きく舵を切ったわけですね。

牧浦:今も教育関連の仕事は忙しいし、ウチと提携しないか、ウチに来ないかとか、良い話もいろいろ来ます。同じところに留まっているのは確かに楽なんですが、先日キックボクシングの試合をやって吹っ切れました。No Challenge , No Life。なのでもう次に進もう、と決めています。

今、注目すべき都市は、ポートランドと深セン

—— エグゼクティブキックボクシングマッチガラの前にポートランドへ行かれていましたね。

牧浦:サンフランシスコに近かったので3日間ぐらいSTAYしようと思って行ったら、すごく好きになってしまって、結局2週間弱滞在してしまいました。古くからあるアメリカの伝統的なクラフト系文化が残っているのに、新しいイノベーションが起きているニューテクノロジー系の場所もあって、それらが一つのリアルな橋でつながっている。OldとNewのかけ算がすごく上手い都市だなと思いました。また、シェア自転車やCar-free street(車進入禁止道)などが促進され、一交通手段ではなく、街を活性化させるアクティベーションの手段・都市開発として未来を見ています。日本を含め、世界中の都市の幹部たちが頻繁にポートランドへ視察に来ていることからも、今、注目すべき都市であることが分かります。

全米から若い人たちが続々とポートランドに移住してきているんですが、彼・彼女らにはお金を儲けたい、モテたい、クルマが欲しいというような物質的欲望は一切ない。自分が一番好きなコミュニティに属して、やりたいことをやるというのが最近の潮流のようです。Weird(変)な連中が多くて貧困率は高いのに、意外に悲壮感はない。ホームレスは「自分たちが選んでホームレスになったんだ」と言っていて、住民たちもそれを許容しています。好きなことをやるというのが人間の究極の承認欲求なんじゃないかとも思います。

—— ポートランドには大企業も少なくありませんよね。

牧浦:ナイキの本社があるし、アディダスやインテルの拠点もある。意外と知られていないところでは、Zibaというデザインコンサルのヘッドクォーターがポートランドにあります。我々が普段つかっているもの、フロッピーディスクやATMを創ったのもZibaです。ちなみにそのZibaでイノベーションを起こしているのが、濱口秀司さんという日本人です。

—— 有名な方ですね、コンサルティングフィーが全米一高いと言われる。

牧浦 濱口さんのツイートも日々拝見していますが、示唆に富んだ考えと、水分補給でマルティーニを飲んでいる、というようなツイートとのギャップが良い意味で激しい人という印象です(笑)。

——(笑)。ポートランド以外に注目している都市はありますか?

牧浦:深センでしょうね。DJIにはドローンをやっていた3年前に行ったんですが、最近はHuaweiがヤバいらしい。深センだけで4万人(全世界18万人)ほどが働いており、3,000人はオフィスキャンパス内のHuawei寮に住んでおり大学の進化版のようでした。

平均年齢は30歳前後で、若手もどんどん出世させ新陳代謝し、社員構成を物理的に若く保っているそうです。CEOは3人で6カ月ごとの輪番制にし、ガバナンスも保っている。さらに社員教育は世界一でHuawei大学は講師だけで外部含め700人超いる。今、一番先進的な企業と言えるでしょう。

ポートランドも深センも、好きなことをやりたい人たちが集まっていて、行政側は何も口を出さず自由にやれという特区のような環境になっている。そこからイノベーションが生まれるんでしょうね。

解消すべき政治的課題にも積極的に取り組む

—— Sandbox特区以外に、政府に働きかけていることはありますか。

牧浦:例えば、“屋内全面禁煙"という海外では当たり前の受動喫煙防止案を通すために、陸上の為末大さんや大学教授をはじめとした有志の皆さんとともに「たばこ煙害死なくそう」というキャンペーンもやっていて、僕も自民党の役員会などで提言したりしています。

個人の活動とは直に関係もないのですが、世の中の不を解消したいと日々思っています。なぜ望まない副流煙を吸ってタバコを吸わない人たちが年間1万5,000人も亡くなっているのに、いまだに抜本的解決につながる何の対策も打たれていないのか。既得損益とかしがらみとか、最も嫌いなワードですね(笑)。

ほかにも、「OPEN POLITICS」という団体で、衆議院25歳、参議院30歳となっている被選挙権の年齢制限を引き下げ、誰でも簡単に立候補できる環境を整えようという提案を行っています。

他団体と協働し、この提案が受け入れられ、自民党の公約にも「検討する」と掲げられましたが、その実現にはまだまだ時間はかかるでしょう。そもそも地盤(選挙民との繋がり)、看板(肩書き、知名度)、鞄(資金力)が無い人は当選は難しいという問題も存在します。また、たとえ議員になれたとしても、なかなか上にあがって大きな政策を実行できない、大臣にはなれないという壁も。さらに出馬時の初心を忘れてしまう、もしくは派閥争いや政治内の政治に押しつぶされることもあるでしょう。民間登用や直接民主制を取り入れるなど、思い切った改革が必要だと思います。

—— しかし、日本という国は古来から外圧や天災でも無い限り、なかなか変わろうとしませんよね。

牧浦:おっしゃる通りです。でも、最近は旧来の政治家とは異なる意識を持った若手もようやく増えてきました。変革の芽は出てきていると思います。

—— 幕末の志士みたいですね(笑)。ご自分の肩書きとしては変化はありますか。これまでは、ソーシャルビジネスマンみたいなことをずっと言われてきたと思うのですが。今は「職業は牧浦土雅です」みたいな、そんな感覚でしょうか。

牧浦:カッコいいことを言うと、僕は日々10年先を見ていろいろやっているつもりなので、今は教育関連のビジネスに取り組んでいますが、「実はこんなことも、あんなこともやっています」と説明していくと、何だかよく分からない人だと言われてしまう。けどそれでいいと思っています。自分の中で見てる世界観を言語化し、しかも他人に伝えるのは困難だし時間がかかる。だからいつも「I know what I’m doing, so don’t worry!(俺は自分が何をしているか分かっているから心配しないで!)」と話しています。

一例ですが、Quipperのオンライン授業を通じて、現在学校で先生から教わっている教科を学校外で学び、学校ではディスカッションや友達とのインタラクションに集中する。外部のスピーカーを招き、さらに視座を高め、政治からお金の授業まで幅広いコンテンツを学べる。同志を見つけ、大学卒業後に出馬、なんてオプションもあっていいでしょう(イギリスの最年少議員は18歳の女子大生)。ですが、今は年齢制限があって出馬できない。だからその土台をつくるために「Open Politics」で被選挙権年齢を下げる活動をする。同時に今の政治の何がダメで何が活かせるのかを勉強する…意外と全部繋がってるんですよね。

—— だからもう、肩書きは要らないと。

牧浦:もったいないですよね、肩書きが一つだけなんて。最近では週休3日制の会社も出てきています。製造系の会社なら、将来的には週休5日もあり得るのでは。これからは余暇というか「本業以外の時間の使い方」で人生が変わってくると思います。趣味を極めていくと、それが仕事になることもあるでしょう。

—— 牧浦さんの場合、それがキックボクシング、そしてエグセクティブ同士の試合だったと。

牧浦:キックボクシングが仕事になるのはちょっとまずいですね(笑)。試合には出てみたいですが、小比類巻さんとはもうやりません(笑)。他にやりたいこと、やらねばならないことがたくさんあるので。頑張ります!