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Googleの発表で現実味を帯びてきた「量子コンピュータ」の実用化。その脅威に備える量子暗号などの開発も進む
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  • 2019.11.13
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Googleの発表で現実味を帯びてきた「量子コンピュータ」の実用化。その脅威に備える量子暗号などの開発も進む

CeBIT 2018でIBMが展示した量子コンピュータのモデル
Photo By Shutterstock

伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。著書に「ビジネスマンの今さら聞けないネットセキュリティ〜パソコンで失敗しないための39の鉄則〜」(ダイヤモンド社)などがある。

Googleの発表でビットコインが暴落

今年9月、世界最高の処理能力を有するスーパーコンピュータで1万年かかる計算を、Googleが研究中の量子コンピュータは、わずか200秒で行ったという驚くべき論文が発表された。その反響は大きく、発表直後にはビットコインの暴落もまねいている。

量子コンピュータの進化が、なぜビットコインを暴落させたのか。それは、ビットコインなどの暗号通貨が基板とするブロックチェーンが、量子コンピュータによって破られるリスクがあるといわれているからだ。

分散型台帳技術であるブロックチェーンでは、理論上、一度記録するとブロック内のデータを遡及的に変更することはできないため、極めて高い安全性が確保されているといわれてきた。ところが、Googleの発表によって、その盤石であるはずの基板技術が破られかねない恐れが出てきたのだ。

量子コンピュータとは何か

ここで、量子コンピュータとは何かを軽くおさらいしておこう。

量子コンピュータの概念が生まれたのは1980年、アメリカの物理学者のポール・ベニオフが量子系においてエネルギーを消費せずに計算が行えることを示したことに端を発するとされる。

アラン・チューリングによって動作原理が考案された従来型コンピュータ(古典コンピュータ)では、情報の基本単位を「0」か「1」の状態しか持ち得ない「ビット(bit)」で表すのに対し、量子コンピュータは、「量子ビット(quantum bit)」による重ね合わせ状態によって情報を扱うことで、従来型コンピュータでは実現し得ない規模の並列コンピューティングが可能になるといわれている。

最適解を求めるために膨大な組み合わせを試す必要がある場合などでは、その圧倒的な並列処理能力が威力を発揮する。

Googleの研究でも明らかになったように、量子技術はコンピュータの処理速度を数万倍から数百万倍以上に高速化できると推定されているのだ。

量子コンピュータの進化がもたらす脅威

量子コンピュータの進化によって脅かされるのはブロックチェーンだけではない。

現在、ネットワーク上におけるビジネスやコミュニケーションの安全性確保に広く用いられている公開鍵暗号アルゴリズムであるRSAすら解読が可能になるといわれている。

暗号の作成・解読技術が第二次世界大戦の勝敗を大きく左右したといわれているように、世界の軍事覇権を握るためにも暗号技術を掌握することが必要とされる。安全保障面でも欠かせない技術なのだ。

このように、量子コンピュータの開発競争は暗号技術の覇権争いでもある。

量子コンピュータの脅威に備える研究も

暗号を守る側も手をこまねいているわけではない。量子コンピュータによる脅威に備えるための研究も活発化してきている。

量子コンピュータによる攻撃を防ぐ技術としては、光の粒子を使って情報をやり取りする「量子暗号」や「格子暗号」、「多変数暗号」などの研究が進められている。

わが国における具体的な研究例としては、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)とNECが共同で開発した、顔認証などの生体認証データを量子暗号を用いた高秘匿技術で伝送し、生体認証時の参照データを「(k,n)閾値秘密分散」を用いて保管するシステムなどがある。

Googleの研究結果には重大な欠陥が

全世界に大きな衝撃を与えたGoogleの発表だったが、量子コンピュータの開発で競合するIBMにより、その研究結果には重大な欠陥があると否定された。ひとつの問題を解くために作られた研究室内の実験にすぎず、現実の用途には使用できないというのだ。その後、問題の論文はネット上から削除され、ビットコイン価格も反発している。

米国と中国がしのぎを削っている量子コンピュータの開発競争で覇者になるのはどちらか。今後の世界の趨勢を予測する意味でも目が離せない。


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