CULTURE | 2019/09/20

「忙しい」はお葬式で使っちゃダメ? テレビ番組で紹介されたトンデモマナーに国語辞典編集委員が疑問

Photo By 写真AC
文:岩見旦
冠婚葬祭のマナーは独特で、なかなか難しいもの。式場での立ち振舞い方や祝儀袋の...

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文:岩見旦

冠婚葬祭のマナーは独特で、なかなか難しいもの。式場での立ち振舞い方や祝儀袋の包み方など、戸惑う人も多いのではないだろうか。

そんな中、テレビで放送されたある冠婚葬祭のマナーが物議を醸している。

「忙しい」は忌み言葉とテレビ番組が紹介

テレビ東京系『あなたの日本語大丈夫?笑われるニホン語』は、普段誤った使い方をされている日本語をクイズ形式で教える教養バラエティ番組だ。

9月18日の放送では、仏式のお葬式において、喪主から参列者への挨拶として「本日はお忙しい中、父のためにありがとうございます」という言葉は使ってはいけないとし、「ご多用の中、父のためにありがとうございます」と言い換えるよう紹介した。

専門家として登場した現役住職の男性は、「忙しい」は冠婚葬祭での使用を控えた方がいい「忌み言葉」であると解説。「忙」には「亡」が含まれ、不幸を連想させるためNGとした。

飯間浩明「トンデモマナーの類では」

この放送内容に疑問を呈したのは、『三省堂国語辞典』編集委員の飯間浩明氏。自身のTwitterにこのマナーを「不勉強でそんな話は聞いたことがない」と皮肉交じりにチクリ。「最近のトンデモマナーの類ではないかと疑っています」と投稿した。そして、この理屈がまかり通るなら、「望み」や「忘れました」、「荒井さん」もNGになると指摘した。

また、飯間氏によると「忙しい」という字には、「心を亡くす(から余裕を持て)」という教えがあるという根拠の無い説(民間字源説)があるとしつつも、忌み言葉とは微妙に違うという。ところが、このことがルール化し、今回の放送内容に至ったのではないかと推測した。

飯間氏が19日に投稿したこのツイートは現在1万8000件を超えるリツイートを記録。「私も聞いたことがない」「マナー講師の思いつきか」「テレビが世の中を悪くしている」など、共感の声が挙がっている。

昨年8月、テレビ朝日の番組で「徳利(とっくり)からお酒を注ぐ時、先の尖っている注ぎ口から注ぐのはマナー違反。注ぎ口から注ぐと『縁を切る』という意味になる」というトンデモマナーが紹介され、ネット上が騒然となった。

トンデモマナーが世の中に蔓延すると、何も間違っていない振る舞いがマナー違反であると判断されてしまう。そのようなトラブルを避けるため、みんながトンデモマナーを心がけるようになるという、ありえない現象が起こってしまう。トンデモマナーが世間に広まらないよう、私たちは常に目を光らせる必要があるようだ。