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EVENT | 2023/02/28

半導体分野の最新研究成果と人材を日本から世界に届ける 広島大学 ナノデバイス研究所

文:伊東孝晃
国内半導体デバイス研究の最先端を邁進する拠点
充実した設備と多岐にわたる研究分野、企業との協業、産業界...

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文:伊東孝晃

国内半導体デバイス研究の最先端を邁進する拠点

充実した設備と多岐にわたる研究分野、企業との協業、産業界向けの人材育成を手掛け、日本の半導体デバイス研究の最先端を走っている広島大学ナノデバイス研究所。全国の企業と連携する研究拠点として、オープンイノベーションの仕組みづくりに奮闘する現状を同施設・副所長・教授の黒木伸一郎氏に聞いた。

広島大学ナノデバイス研究所は1986年に設立された「集積化システム研究センター」を前身としている。2度の名称変更を経て、2022年に現在の施設名となった。研究分野は

(1)ナノ集積科学研究部門
(2)集積システム科学研究部門
(3)分子生命科学研究部門
(4)集積医科学研究部門

の4種にわたる。

Si半導体の研究開発を35年以上継続しており、現在はSiC集積回路・パワーデバイスやGaNパワーデバイス、量子デバイス、MEMS・医療用デバイスの研究開発にも取り組んでいる。

所内の施設では、半導体集積回路試作ラインを備えた2棟のスーパークリーンルームを所有。超純水供給システム、高純度プロセスガス供給システムを使用することで、一貫してCMOS集積回路・デバイスの試作を可能としている。今年度は高温イオン注入装置など多数の装置・設備を導入しており、環境整備のブラッシュアップにも努めている。

「主に半導体デバイスやセンサーなど、ナノデバイスの出口を見据えた研究を35年以上行っています。研究所教員には医師も在籍しており、2008年からは医療への応用するための取り組みを開始。近年では電気自動車用のパワー半導体デバイスや、原子力発電所・核融合炉などの極限環境でも駆動可能な集積回路などにも分野が広がっています。企業のみなさんにも、どんどん使っていただくことで、共同での最先端研究を推進できればと考えています」(黒木氏)

オープンイノベーション拠点として推進する「3つの柱」

本研究所は、令和3年度「地域の中核大学の産学融合拠点の整備」に係る補助事業に採択され、オープンイノベーション推進施設となる「J-Innovation HUB棟(Jイノベ棟)」を建設中。研究分野では年間で約100件のプロジェクトを進行している。それぞれのプロジェクトに応じて

(1)競争的資金事業(各教員の尖がった研究開発)
(2)共同利用・共同研究拠点事業(公募型共同研究)
(3)共用設備事業(文科省ARIM)

の仕組みを利用することで、オープンイノベーション推進を加速している。

文部科学省ARIMマテリアル先端リサーチインフラは広島大学を含む全国25の大学・研究機関が7分野に分かれてタッグを組み、最先端装置の共用、高度専門技術者による技術支援、共用設備から生まれたデータの共有・分析・活用を目的とした取り組みです。我々は東京大学、JAEA日本原子力研究開発機構とチームを組み、特にパワーデバイスや太陽電池などのようなエネルギー分野にフォーカスして、さまざまな大学・研究機関・企業の支援を行っています」(黒木氏)

半導体分野で活躍する次世代人材育成にも注力

産業分野からの強い要望に応えるべく人材育成にも尽力。2007年からは企業・大学・研究機関向けに1週間で回路設計、クリーンルームでのデバイス試作、測定を行い、実践的に半導体を学ぶことができる「半導体CMOS実践プログラム」を提供している。2022年7月に開催したコースでは27名(企業:24名、大学:3名)が参加。高度な専門知識を有した人材の育成を目指している。また中高生向けの太陽電池教室も実施している。

「広島大学の学生たちも研究テーマの策定から、デバイス回路設計・試作・測定・評価まで、当施設をフル活用して研究に取り組んでいます。スーパークリーンルームでは半導体特殊ガスも使用するので施設内には至るところにセンサーが張り巡らされ、それらの運用についても学習しますし、海外研修も行い、総合的に俯瞰してマネジメントができる人材を育てられるよう注力しています。社会人向けのプログラムも非常に人気が高く、近年では女性の参加者も増えています」(黒木氏)

今後については文部科学省から次世代X-nics半導体創生拠点の一つに指定されたこともあり、半導体集積回路産業のグリーン化という大きな目標に10年かけて取り組んでいくという。

「研究開発〜イノベーション創出〜社会実装というサイクルに賛同してくれる企業や自治体と連携を強め、中核人材の育成と産学連携による研究開発を促進を目的とする『せとうち半導体共創コンソーシアム』の立ち上げも準備している。これにより、より幹の太いイノベーションの創出が期待されています。産業界からは日々、膨大な数の要望が寄せられているので、施設拡大を機にどんどん形にし、産学連携を強めていきたいです。現在は例えば500℃の高温でも使用できる半導体デバイスやAIを用いた医療診断などの研究に力を入れている。こちら研究所では半導体デバイス、AI・IoT、高速通信、量子技術、医療などの専門家が日々、議論を重ねながら社会に還元できる技術の開発を目指しています」


広島大学ナノデバイス研究所

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