EVENT | 2021/07/06

「テレワークで社員監視ばかりするダメ上司」が生まれるワケ。部下を病ませもサボらせもしないマネジメントを考える【特集】進まない・続かないテレワーク 2021年の課題

特集記事【日本でテレワークが進まない「5つの要因」。経営陣・中間管理職・現場が明日からすべきことはこれだ!」はこちら
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部下を「4つのパターン」に分け、同時に割り振る業務内容の見直しが必要

片桐氏の最新刊『テレワークで部下を育てる』。オフィスで対面していた時よりもより慎重かつロジカルな行動が求められる、テレワーク環境下での部下育成法についてわかりやすくまとめた一冊

―― マイクロマネジメントしすぎも丸投げしすぎも多くの読者は問題だと感じていると思うのですが、『テレワークで部下を育てる』に書かれていた「何かと干渉し過ぎるカーナビ型上司」は確かに自分も陥ってしまうかもしれないと感じました。

片桐:マイクロマネジメントも良くない、丸投げも良くないということで、良かれと思って仕事内容の指示や思考のプロセスを必要以上に細かく部下に伝えてしまうパターンですね。あまりやりすぎると、部下からすれば「何も考えないロボットとして働けというのか」「昔は正解だったかもしれないけど、その考え方はもう古いよ」という感じで煙たがられてしまいますし、実際部下の成長を阻害してしまいます。

では、どの部下にどんな風に接していけばいいのか。私は業務の習熟度とアウトプットの量に応じて、

A:スター(習熟度高・アウトプット多)
B:職人(習熟度高・アウトプット少)
C:成長株(習熟度低・アウトプット多)
D:未知数(習熟度低・アウトプット少)

の4分類で考えていくことをオススメしています。

Aの「スター」はほぼ丸投げで良いというか干渉しすぎると逆効果ですし、逆にDの「未知数」はマイクロマネジメント気味にコミュニケーションを取らなければ仕事の精度も低く孤立していってしまいます。

―― 自分は中小企業の在籍経験しかないのですが、社内の年代構成的にもBの「職人」の人数がダントツで多い気がしています。

片桐:そうなんです。テレワークでは特にこうした一人親方みたいな人が増えてしまいがちなんですよ。

―― それを経営側から見ると「とりあえずテレワークを始めてみたけど、改善とか新規事業の提案も上がってこないし、生産性も落ちちゃってるんじゃないか?」と思われてしまう一因になってしまっているんじゃないかという気もします。

片桐:それも「あるある」だと思います。「職人」層は自分の仕事の領域を決めちゃって、それを人にも渡さないし自分が与えられた仕事のノルマをこれだけやっていればいいと進めてしまいがちです。オフィスに出社していた頃はそれでも「◯◯さん、この件について教えて下さい」というやり取りが気軽にできていたけれど、テレワークでその機会が減ってしまうと職人化に拍車がかかってしまうところもあるかと思います。

「職人」層の社員には部下の育成関連の業務などにアサインしていくと必然的にアウトプットの量も増えていくので、小さいチームを持たせてOJTさせるとか、勉強会を開催してもらうというのが良いと思います。逆に、アウトプットの量は多いけれど習熟度が低い「未知数」層の人たちはアウトプットが多い分、上司からすると何が問題で何に困っているのかわかると思うので、習熟度を上げるためにどんなトレーニングが必要か、どんな経験をさせるのが良いかということをしっかり考える必要があります。

今までのやり方をそのままに、物理的に社員同士の距離が離れるテレワークをやるというのは上手くいかないところが絶対出てくるんですよ。まずは実験的にトライしつつ、このタイミングで今の業務内容を棚卸しすることを強くオススメします。そうすると「これは前任者から引き継いでレポートを作っているけど、誰が見ているのかよくわからない」みたいな報告書が結構出てくると思うんです。

あとはPCやタブレット端末で作れる、あるいは自動化できるのに手書きで作っている書類なんかもありますよね。このタイミングで価値創造に繋がっておらず、止められるものは止めてしまうべきだと思います。

―― 確かに改めて棚卸しして言語化すると「これ何のためにやってたんだっけ?」という業務が出てきそうです。

片桐:さらにこのタイミングでレギュラー業務とイレギュラー業務を分けることも重要です。イレギュラー業務はそのままにしておくといつまでもイレギュラーとして時間が取られてしまうので、原因を改善したり対応マニュアルを作ったりすることでレギュラー業務の中に組み込んでいけるといいですね。

―― 中小企業の例を続けると「そうした改善のための業務棚卸しの必要性は感じているけれど、その議論を主導できる中堅~ベテランのほとんどがプレイングマネジャーで極度に忙しく、時間が取れないからできない」という悩みも多そうに感じます。

片桐:確かにその業務だけに時間を割いてもらうことは難しいかもしれませんが、そこはプラスアルファの評価をしてあげる、あるいは役割を新たにつくってあげるようなかたちでプロジェクト化する必要があると思います。例えばテレワークに移行して通勤時間が減った、いろいろ時間のやりくりが自由にできるようになった人もいるかもしれないので、そういうところでうまくその時間を活用してプロジェクトを立ち上げるということもお勧めしています。

そういう活動を、若手も結構求めていると思うんですよね。新規アイデアが上がってこないという企業のコンサルに入る時には、社内横断型のプロジェクトチームを作ることをよく提案します。1週間に1回、この時間に30分集まりませんかみたいなみたいな取り組みを少しずつ進めていると、新しいアイデアが生まれたり横連携が生まれたりということがあるんです。テレワークであれば会議室争奪戦もなくなるでしょうし。

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