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文:滝水瞳
新型コロナウイルスによる外出制限などを理由に、輸血用の血液が不足する事態が起きている。世界各国で血液の確保が喫緊の課題となる中、今注目されているのが新たな赤血球の開発だ。
このほど米国のニューメキシコ大学などの国際研究チームが、赤血球と同等の機能を持つ「人工赤血球」を開発した。赤血球元来の能力を兼ね備えただけでなく、それ以上の機能を持つ高性能な赤血球が誕生したと話題を呼んでいる。
本物の赤血球から再構築された「人工赤血球」
今年5月に科学誌の『ACS Nano』で発表された人工赤血球は「再構築赤血球(RRBC:Rebuilt Red Blood Cells)」と呼ばれ、まさに人間の赤血球から“再構築”する手順で作られている。まず血液から採取した赤血球を「シリカ」と呼ばれる物質でコーティングする。その周りに正と負に帯電したポリマーを塗装し、内部のシリカを除去して赤血球の「レプリカ」を完成させ、さらに赤血球の膜で覆って仕上げられた。
実験では、この人工赤血球に柔軟性があることも立証された。形状を変えて細かな毛細血管にまで行き届き、その後の形も元に戻る。そのため体内の隅々にまで酸素を循環させることができるという。大きさや形だけでなく、酸素の運搬能力も本物の赤血球と類似しているため、赤血球としての機能を十分に果たすとされた。またマウスの体内に投与した場合、人口赤血球は体内に48時間持続し、4週間経っても毒性は見られなかった。