LIFE STYLE | 2019/12/20

黒人バレリーナが初の快挙。ニューヨーク・シティ・バレエ団公演「くるみ割り人形」の主役に抜擢

文:藤枝あおい

規律を重んじ、美しいパフォーマンスを追求する、クラシカルなバレエ界が、歴史的な一歩を踏み出した。ニ...

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文:藤枝あおい

規律を重んじ、美しいパフォーマンスを追求する、クラシカルなバレエ界が、歴史的な一歩を踏み出した。ニューヨーク・シティ・バレエ団の公演「くるみ割り人形」の主役のひとりに11歳の若き黒人バレリーナが選出されたのだ。

トリニダード・トバゴとフィリピンのハーフ

同バレエ団で「ジョージ・バランシンのくるみ割り人形」の主人公、マリー・クララを演じる初めての黒人バレリーナとなったのは、11歳のシャーロット・ネブレス。アメリカのバレエ界は白人が中心となっており、1954年の初めての公演以来、毎年行われてきた同公演で初めて黒人が抜擢された。歴史的な快挙だ。

ニュヨークのスクール・オブ・アメリカンバレエの生徒であるシャーロットは、母親がカリブ海のトリニダード・ドバゴ出身、父親の家族がフィリピン出身という異色のルーツを持つ。アメリカン・バレエ・シアターで初のアフリカ系アメリカ人のプリンシパル・ダンサーを務めたミスティ・コープランドから大きな影響を受けているという。

キャスティングに多様性

シャーロットに限らず、「くるみ割り人形」の主役に選出されたキャストは、さまざまな背景をもったバレエダンサーだ。

シャーロットの王子役を演じるターナー・クィークは、中国とのハーフ。さらに、ダブルキャストで主人公マリー・クララを演じるソフィアは韓国とギリシャのハーフであり、ソフィアとペアを組んで王子役を演じるカイ・ミスラ・ストーンは南アジアとのハーフだ。白人こそが主役に選ばれるという傾向は、もう過去のことだと言えるだろう。

『New York Times』の取材に「スクール・オブ・アメリカンバレエを代表するだけでなく、あらゆるカルチャーを代表していることはとても驚くべきことです」と語るシャーロット。「私のダンスを観た少年少女が、『自分にもできる』と言っているかもしれない」と話し、これからの世代に影響を与える可能性を自覚しているようだ。

シャーロットが抜擢されたことで、バレエ団の公式Instagramには祝福の声が多数届いているが、本人は「ダンスをしていると、自由を感じ、力がみなぎります。踊っていると、何でもできる気がするんです」と話し、「何が自分にとって幸せなのか、そのことだけを考えています」と言い切った。シャーロットは、純粋に楽しいと感じる自身の気持ちに耳を傾け、今日もバレエを踊っていることだろう。