CULTURE | 2019/02/28

「○○好き芸人」どころか「もはやプロ」も多数。よしもとの新プロジェクト「ブカツ!」で花開く芸人のパラレルキャリア

文:立石愛香 写真:神保勇揮
笑いのカタチも∞(無限大)
よしもとクリエイティブ・エージェンシーは所属タ...

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文:立石愛香 写真:神保勇揮

笑いのカタチも∞(無限大)

よしもとクリエイティブ・エージェンシーは所属タレント6,000人を対象とした、よしもと部活動プロジェクト「ブカツ!」を開始。発表会見が2月27日に渋谷ヨシモト∞ホールで行われた。

「ブカツ!」とは、芸人たちが自主的な趣味のサークルとして行ってきた活動をリスト化し、「○○芸人」としての活躍の場を広げる手助けをするためのプロジェクト。2月27日現在、18の部活が存在し、それぞれの部活名と部長芸人は下記の通り。

会見では司会部のキクチウソツカナイ。とタケトが進行を務め、RGツーリングクラブのレイザーラモンRG、チュートリアルの福田充徳など、すでに発足している18部のうち、12部が活動をアピールするために登場した。

<マンガ部>魂の巾着・本多、夫婦のじかん・大貫さん

マンガ部の部長を務めるのは、飛び出るパラパラマンガ「パラデル漫画」で注目を集める魂の巾着の本多修(写真左)。先日、一般社団法人デジタルメディア協会が主催する「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’18」で新人賞を受賞した。優秀賞にドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)、映画『カメラを止めるな!』が選ばれていることから、今まさに旬であるということがよくわかる。また今年3月には、米テキサス州で行われる、最先端テクノロジーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」にも個人で招待されているから驚きだ。

夫婦のじかんの大貫さん(写真右)は、「妊娠」、「出産」、「育児」をテーマに描いたマンガがInstagramで人気を博し、『母ハハハ!』(PARCO出版)が3月2日に出版が決定。司会部のタケトも、娘の幼稚園のママ友も読んでいると話し、マンガの面白さに太鼓判を押した。

<アニメ部>はりけ~んず・前田、天津・向

アニメ部部長は芸歴32年目で20年前からオタク活動をしている、はりけ~んずの前田登(写真左)。

毎日観たアニメを日記に書いたり、毎年声優さんとのイベントで司会をしたりと、コンスタントに趣味を仕事につなげており「オタク関連の仕事で萌え萌え御殿(マイホーム)も建てられた」とコメント。天津の向清太朗は、アニメキャラ物真似芸人を集めた「劇団アニメ座」でアニメキャラを演じている。またライトノベル『芸人ディスティネーション』(ガガガ文庫)、『クズと天使の二週目生活』(ガガガ文庫)シリーズも出版している。

はりけ~んず・前田が原作を担当した漫画『おんたま!』(ワニブックス)。アニメ化もしている。

天津・向が所属する、劇団アニメ座

<吉本プラモデル部>パンクブーブー・哲夫、ハイキングウォーキング・Q太郎

次に、YouTubeチャンネルの登録者が約6万3,000人を誇る吉本プラモデル部。アピールタイムではバンクブーブーの佐藤哲夫が作った「改造IQOS」や、ハイキングウォーキングの鈴木Q太郎が作った「番号を増やした電卓」、「大島渚が野坂昭如を殴ったマイク」が紹介された。一見ムダに思える作品を作る過程こそ、芸人にとって、さらには私たち人間にとって一番大切なことなのかもしれない、となぜか考えさせられる。

とんでもないテクノロジーが秘められていそうな改造IQOS

ワンプッシュで33までの数が押せる改造電卓

大島渚が野坂昭如を殴ったマイク。ちなみに材料はすべて100円ショップで購入し、マイク部分は湯ぎりの網で作ったという。

<卓球部>セルライトスパ・大須賀、ダブルアート・真べぇ

ここまで文化系の部活が続いたが、もちろん「ブカツ!」という勢いのある名前にふさわしい、体育会系の部活もある。ダイエットのために始めたという卓球部のアピールタイムでは「ここにあった饅頭知らない?」「さあ?(サーっ!)」という掛け合いのショートコント「他人の饅頭を勝手に食べる福原愛」を披露した。

<盛り上げ部>ダイノジ・大谷、キャベツ確認中キャプテン★ザコ

こちらは芸人らしい、場を盛り上げることを目的にしている部活である。フェスやお祭りに出演者して盛り上げるのはもちろん、イベントの企画段階から携わることもあり、精力的に取り組んでいるという。部長のダイノジ・大谷ノブ彦は世界エアギター選手権での優勝エピソードも有名だが、現在も「DJダイノジ」名義のロックDJとして全国各地のロックフェスやクラブイベントに多数出演している。アピールタイムでは「フェスでは1万2,000人の前でDJできたけど、翌日のトークイベントには17人しか来なかった」という自虐ネタも披露。

大西は今後について、「地方自治体の創生や復興を市民の方と一緒に盛り上げていき、最終的には日本全体を元気づけたい」と意気込んだ。

大谷の出身地である大分県の「別府八湯温泉祭り」に出演。4月には70トンの湯をぶっかけるという、「湯ぶっかけ祭り」が開催予定。

キャベツ確認中のキャプテン★ザコは、大谷が説明をする1分間で風船で花を作りあげ、場を大いに盛り上げた。ちなみに2013年にはバルーンアートの全国大会「ツイスターズ2013」のパフォーマンス部門で優勝した経験もあるという。

<DIY部> バッファロー吾郎・竹若、バッドボーイズ・佐田

最後に紹介したいのはDIY部である。世界に一つだけの自分の空間を作ることに楽しみを覚えた彼らは、もはや芸人ではなく職人の顔で登場した。

バッファロー吾郎の竹若元博は自宅をDIYで造り上げたことで600万円ほど節約したうえにメディアからの取材依頼も多数寄せられる一石二鳥となった。過去にはガールズバーのトイレをリノベーションする依頼などを請けたこともあり、もはやひとり工務店状態である。

他にも、自身の部活をアピールするため、歴史部(ブロードキャスト!!・房野史典、ロバート・山本博)は鎧を着て登場し、バスケ部(麒麟・田村祐、大西ライオン)はバスケに関する「あるあるネタ」を披露して会場を沸かせた。

タレントのサイドビジネスというと、未だに「飲食店をやるんでしょ?」というイメージが根強いが、もはや「○○好き芸人」というよりその道のプロとしても活動している芸人がこんなにもいることに驚かされた。実際、お笑い芸人としての収入を上回っているケースも少なくないという。

会見でも「お前はいつお笑いをやってるんや(笑)」というツッコミが多数飛び交ったが、「芸人かそうでないか」という本業・副業二元論で判断するのではなく「芸人もやっているが違うこともやっている」というパラレルキャリアが当たり前のようになれば、より多くの人の人生が豊かになっていくのではないだろうか。

そうした観点では「活躍できる芸人、タレントを増やす」という吉本の目的以上に、社会的意義のあるプロジェクトであるようにも感じた。


よしもと部活動プロジェクト「ブカツ!」