CULTURE | 2021/10/25

水道橋博士が一目惚れしたフランス在住の日本人画家・村中誠【連載】藝人春秋FINDERS(2)

Illustration by Makoto Muranaka
『藝人春秋FINDERS』と題して新連載をはじめた浅草...

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Illustration by Makoto Muranaka

『藝人春秋FINDERS』と題して新連載をはじめた浅草キッドの水道橋博士です。

今回は、この連載の挿絵を担当しているフランス在住の画家・村中誠さんについてぜひ、読者にいち早く「発見」してもらいたいので、ご紹介したいと思います。

水道橋博士

お笑い芸人

1962年岡山県生れ。ビートたけしに憧れ上京するも、進学した明治大学を4日で中退。弟子入り後、浅草フランス座での地獄の住み込み生活を経て、87年に玉袋筋太郎と漫才コンビ・浅草キッドを結成。90年のテレビ朝日『ザ・テレビ演芸』で10週連続勝ち抜き、92年、テレビ東京『浅草橋ヤング洋品店』で人気を博す。幅広い見識と行動力は芸能界にとどまらず、守備範囲はスポーツ界・政界・財界にまで及ぶ。

ライターとして連載のコンビを組む挿絵家や書籍の表紙の装丁家、絵担当は自分からお願いする

ボクはライターとして文章を書きながら連載のコンビを組む挿絵家や、単行本化の際の装丁家、表紙絵担当のアーティストを自分からお願いすることが好きなタイプです。(このあたり編集部の推薦どおりにお任せする作家も多いのであえて書いています)

『藝人春秋』(文藝春秋・2021年刊)の最初の単行本の時は、表紙絵に版画家の福井利佐さんにお願いしました。  

これは最終章に描いた児玉清さんの趣味が切り絵だったので、人物像を幾重にも切り重ねた特殊な技法の切り絵版画で描いてもらいたかったことからです。

福井さんとは元々面識は無かったのですが、福井さんの地元、静岡の駿府博物館で開催された『切り絵で魅せる~福井利佐の世界~』に出掛けて直訴して実現しました。

『東京都広報』に連載していた、ボクが子育てと家族について綴ったコラムを単行本化した、『はかせのはなし』(KADOKAWA 2016年刊)では、挿絵と表紙に消しゴム版画家の「とみこはん」を起用しています。 

彼女は元浅草キッドのマネージャーです。彼女が独立後に何時かふたりでコラボができたらと願っていたので、そのささやかな夢が結実できたことは何よりの喜びでした。

長男が、5歳の時に初めて3D映画の『アバター』を見て、帰宅後、その様子を「ママ、こんな感じで飛び出るんだよ!」と母親に語るシーンの挿絵などは特にボクのお気に入りです。

今も部屋に額装して飾ってあります。

2015年から週刊文春に『週刊藝人春秋』の連載を始めた時には、ワガママにも著者特権で挿絵家を指名させていただきました。

ほとんどバカのフリをして実現可能性の低い業界の大家ばかりを狙いました。

子供の頃からの憧れの江口寿史と夢のタッグを組めた。天にも登る気持ち!

正直言って、週刊ペースで文章先行の後、絵を入れるのは大変な作業です。ボクごときの書き手では大物ではなかなかやってくれる仕事ではありません。

「江口寿史さん、大友克洋さん、会田誠さん」と候補を上げて別々にあたりましたが、江口寿史先生がなぜか引き受けてくださいました。

子供の頃からの憧れの漫画家と夢のタッグを組めたのです。それがどれほど天にも登る気持ちになることか。

多忙極まり、しかも原稿を落とすことでも業界では知れ渡っている江口先生が、週刊ペースの挿絵を書くことは異例なことです。

結果、1年間50週、その後、期間を開けてシーズン2は1年強の60週、実働丸3年、計110本の挿絵を寄せていただきました。

今回の『藝人春秋Diary』の単行本では連載時の60枚の挿絵を全て使用するという高いハードルを叶えました。

美人画で名を成した江口寿史先生の長いキャリアの中で、唯一のむさ苦しいオジさんが並ぶ異例の画集にもなっています。

しかし、オジさん絵でも爆笑問題・太田光くんの挿絵を見てもわかるように、絶妙に表情を捉えていて素晴らしい出来栄えです。

FINDERSの連載ではフランス在住のMakoto MURANAKAさんを挿絵に起用

そして、今回この連載でボクのご指名で大抜擢したのが村中誠さんです。

と言っても、編集者を含めて、今はほとんど誰も知らないはずです。

そもそも、今でもボクと面識がないままなのですから。

出会いは、今年の冬のことです。当時、ボクは早朝3時、4時に起床して、夜明けの静寂(しじま)の中、爆音で音楽を流しながら日記を書くというルーティンを続けており、その際にClubhouse を立ち上げて「目覚まし代わり」というタイトルでリスナーと一緒にボクが選曲した音楽を聞いてもらうということをやっていました。

そして日記を書き終えた朝7時頃、朝食の前に「話したい」という挙手された方、おひとりと会話するというルールを決めていました。

そして今年、2月28日──。

アプリの中で挙手された方が、このMakoto MURANAKAさんを名乗る人物でした。

もちろんまったくの見ず知らずなので、フランスから参加していることだけでも驚きでした。

しかも、フランスでシェフをしながら絵描きもされているという経歴だけでもボク好みなのですが、昔は役者をやっていて、料理も絵も全て独学というところで思わず喰い付いてしまいました。

なんでも、ワイナリーが主催するボトルラベルのコンクールに応募していて、その絵のネット人気投票をやっているのでぜひ、ボクにも見てほしいとのこと。

言われるがまま彼のInstagramをその場で開きました。ネットを通して掲載された絵の膨大な量と、その質感に一瞬で見惚れてしまいました。

出会って10分足らずでボクが主宰し、編集長をつとめている国内最大規模のメールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』の連載陣に加わるようにスカウトしたのです。その時の驚きをみなさんも、今、経験して下さい。

以下のURLが、村中さんのInstagramです。

https://www.instagram.com/makoto913_/

何回、スクロールしても尽きることがない、明らかに尋常ではない量のドローイングが果てしなく続きますが、実に色彩もタッチもオリジナリティを漂わせ魅惑的です。

ひと目見た直感だけで彼は質も量も兼ね備えた「天才」であることを確信しました。

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