Photo by Shutterstock
文:角谷剛
新たな契約書にサインするよう圧力
顧客からの問い合わせ窓口業務を外部に委託するアウトソーシングが、ビジネス界で主流になって久しい。請負側のコールセンター会社は拠点を、人件費の安い発展途上国に置くことも多い。
コールセンター最大手のテレパフォーマンス社は今年3月、従業員に対し、仕事のパフォーマンスを監視するため、自宅あるいは所有するコンピューターにAI搭載の監視カメラを設置するよう求めた、と『NBC News』が報じた。コロンビアで働く6人の従業員が、監視カメラの設置を許可する新たな契約書へサインするよう圧力があったと明らかにしたのだ。
さらに、同社は音声解析と、未成年を含む従業員の家族から集めたデータによる監視を行うことも求めたとのこと。
取引先にアップル、アマゾン、ウーバーなどを抱える同社は、全世界で38万人以上を雇用しており、その約3分の2にあたる24万人が今では自宅から勤務している。
プライバシーの侵害の危惧も、職を失いたくないためにサイン
容易に想像がつくことだが、この同社からの提案はプライバシーの侵害になると、多くの従業員の反発を招いている。
ボゴタで働く従業員は同意しなければ職を失うと思い、やむなく8ページにも及ぶ追加条項を含む契約書にサインしたという。サインをしない限り、それまで担当していたアップル社との仕事ができなくなると上司から脅されたということだ。ちなみにアップル社はテレパフォーマンス社に監視強化を要求したことはないと否定している。
「これはとても酷いことだと思います。私たちはオフィスでは働いていません。私は自分の寝室で働いています。私は自分の寝室に監視カメラを置きたくはありません」と、その従業員は述べている。この従業員の家に、監視カメラはまだ設置されていない。しかし、サインした契約書にはそれを認めると明記されているということだ。
コロナ禍以降、リモートワークが定着する一方、生産性の低下が問題視されており、企業側も頭を抱えている。このことと従業員のプライバシーをどう天秤にかけるのか。リモートワークへの流れが止まらない以上、今後も避けることはできない課題であろう。