文:岩見旦
「中東のシリコンバレー」と呼ばれ、毎年1000社近くのスタートアップが誕生するイスラエル。サイバーセキュリティを筆頭に、多岐にわたる分野で世界を牽引している。
そしてまた、イスラエルのスタートアップが他国に先駆けて、新たな取り組みを始めた。
1日500kgの培養肉を生産
イスラエルの培養肉スタートアップ「フューチャーミート・テクノロジーズ」は先月、世界初となる培養肉生産拠点を、同国のレホヴォトに新設したと発表した。この施設は1日500kgの培養肉を生産する能力があり、これはハンバーガー5000個分に相当するという。
この施設では動物血清や遺伝子組み換えを使用することなく、鶏肉、豚肉、子羊の培養肉の生産が可能。牛肉の生産もまもなく開始される。同社の独自技術により、従来の食肉産業と比較し、約20倍のスピードで作れるとのこと。
同社CEOのRom Kshuk氏は、プレスリリースで「この施設の新設は、当社の市場参入への大きな一歩であり、2022年までに当社製品を店頭に並べるための重要な後押しとなります」と述べている。
また、同社創業者であり最高科学責任者のYaakov Nahmias教授は、「培養肉の生産コストが従来の食肉産業と同等あるいはそれ以下になることが、市場の予想を上回る早さで実現すると実証することができれば、この施設は真のゲームチェンジャーとなるでしょう」と語る。そして、この施設は同社独自の技術により業界規格の10倍となる高密度生産を可能にしていると明かし、「私たちの目標は、誰もが培養肉を手に入れられるようにすること、そして健康的で持続可能な美味しい食品を生産し次世代の未来を守ることです」と続けた。
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