EVENT | 2021/05/05

リモートワークに必要なのは監視ではなく「大人のマネジメント」。気鋭のIT企業が1年間オフィスを離れてみてわかったこと

新型コロナウイルス感染収束の目処が立たぬまますでに1年以上が経過。その間、我々は働き方を見直していかざるを得ず、奇しくも...

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新型コロナウイルス感染収束の目処が立たぬまますでに1年以上が経過。その間、我々は働き方を見直していかざるを得ず、奇しくも凝り固まったはずの日本社会全体に変革が起こった。

コロナ以前からリモートワークを制度として導入し、日本の「働き方改革」の先陣を切ってきた企業がある。クラウド型業務管理システムの『TeamSpirit』を提供する株式会社チームスピリットだ。同社はさまざまな施策によってコロナ禍をなんなく乗り切り、この1年で約50人社員を増やしたというから驚きだ。

そこで、同社の戦略企画室長として、社員の労働環境の構築を行う山下康文氏にインタビューを行った。リモートワークならではの課題、マネジメントの秘訣、そしてこれからの時代における"オフィス"の役割について話を聞いた。

聞き手・文:赤井大祐 写真:神保勇輝

山下 康文

株式会社チームスピリット 取締役 戦略企画担当 兼 コーポレート担当

2001年サン・マイクロシステムズ株式会社に入社。2010年経営統合により日本オラクルインフォメーションシステムズ合同会社に入社(日本オラクルへ出向)。日本オラクル全社の事業戦略、経営管理、社長補佐を担当後、アプリケーション事業のオペレーションディレクターを担当。2019年9月戦略企画室長としてチームスピリットに入社。2019年11月より取締役就任。

最初に行ったのは「ハンコ」の廃止

――今回、山下さんにはチームスピリットがどのようにリモートワークへ移行していったのか伺おうと思っていたのですが、なんでもリモートワーク自体は山下さんが入社される以前から始まっていたということで。

山下:実はそうなんですよ。週に1日リモートで勤務できるという制度として、2014年から導入されています。私は元々外資系の会社にいたので、日本企業的な変なルールがあったらどうしようと心配していたんですが、むしろすごく外資らしいというか、すでにグローバル標準に近い会社だったんですよね。

山下 康文氏

――何を目的としたリモートワークだったのでしょう?

山下:当初は「週1日は集中できる日を作りましょう」というコンセプトでした。普段会社にいると話しかけられたりして、作業や集中がぶつ切りになってしまうので、それぞれにまとまった時間を作ろうというものです。

――なるほど、あくまで手段のような使い方だったんですね。山下さんら役員も他の社員と同じように使用していましたか?

山下:そうですね。社長の荻島も毎週水曜日はリモートにしてミーティングも一切入れていなかったです。私は荻島と仕事をすることが多いためなるべく荻島が出社する日に合わせて出社するようにしていました。

――「週1リモート制度」は社員の方々からはどういった評価だったのでしょう?

山下:すごくメリットを感じてもらえていたと思います。 大体の社員は毎週利用していて、アイデアを考えたりする時間としてすごくよかった、なんて声も聞きました。週に1回までと決めていたことで、みんなが変に遠慮していなかったのも良かったですね。

チームスピリットが提供する大企業向けDX支援プラットフォーム『Team Spirit EX』の画面

――こういった制度は得てして形骸化しがちですもんね。そしてついに昨年コロナがやってきたわけですが、それ以降はフルリモートに?

山下:はい。2020年の1月末には「原則在宅勤務」にする旨のリリースを出しました。

――とても早い対応でしたね。

山下:元々週1リモートの制度を導入するタイミングで社内の労務規程だとかをリモートに準ずるものにしていたり、システムをすべてクラウド標準にしていたということがあり、会社としてはとてもスムーズに移行できました。

ほとんどの人は2月からフルリモートに移行しましたが、3月頃までは1割から2割の社員が出社しているような状況でした。必要なハンコを押さなければいけないだとか、出社して対応しなければいけないお客様の担当者もいたりだとかで、さすがにいきなり100%とまではいかなかったですね。

――こんなところにもハンコ問題が。

山下:ですので会社をフルリモートに移行するにあたって進めていったのが、「物理ハンコのオペレーションを完全になくす」ということです。以前から「DocuSign」という電子署名のツールを一部では使用していたんですが、それの適用範囲を、お客様との契約書や取締役会の署名などにまで広げ、無事すべて電子化することができました。一部、お客様の要望で物理ハンコオペレーションを行うこともありますが、それを除いた全てのケースで電子ハンコのオペレーションを実現しています。

――以前から行っていた週1リモート制度、そしてハンコの電子化をもってついに完全リモート体制へと移行することができたと。

山下:社内のシステム的にはそういうことになります。実はお客様からの反応もとても良く、スピード感も含めて「さすがですね!」というお声をたくさんいただきました。同時に、去年の1、2月はどのようにリモート化すればよいか?社内の承認や人事規定はどうしているのか?といったご相談を受けることが増えたので、ならばとそれらをTips集としてまとめて無償提供させていただくなど、お客様のリモート化支援といったことも行いました。

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