CULTURE | 2020/12/15

アマゾン先住民33歳女性、熱帯雨林50万エーカーを石油産業から保護し「環境分野のノーベル賞」受賞

文:滝水瞳
世界中でSDGsなど、地球環境に配慮したさまざまな取り組みがなされているが、それは政府や大手企業に限ったこ...

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文:滝水瞳

世界中でSDGsなど、地球環境に配慮したさまざまな取り組みがなされているが、それは政府や大手企業に限ったことではない。

今、豊かな自然を守ろうと立ち上がったあるアマゾン先住民の女性に注目が集まっている。

「熱帯雨林は売り物ではない」エクアドル政府を提訴

アマゾンに住むネモンテ・ネンキモさん(33歳)は、南米エクアドル東部パスタサの先住民、ワオラニ族として生まれた。ワオラニ族は5000人ほどの小さな一族で、1958年に米国の宣教師が訪れるまで他の民族との交流はなく、穏やかな暮らしをしていた。狩猟採集民としての伝統を受け継ぐ彼らにとって、熱帯雨林は子孫に残さなければならない絶対的な宝だった。

しかし、1960年代以降、アマゾンの熱帯雨林で、石油探査や伐採、道路建設などが始まった。『BBC』によれば、ネンキモさんが12歳になった頃、父親と叔母を訪ねた時、石油掘削場を初めて見て、その騒音、立ち込める煙や炎に驚愕したという。

石油産業は環境だけでなく、ワオラニ族の生活自体を脅かしていた。ネンキモさんのいとこたちは石油掘削場で働き、稼いだお金でアルコールを購入するように。どうやって生活するべきなのか分からず、暴力的になって家族を殴る人も出てきたという。

ネンキモさんは2015年、自らの生活を脅かす石油産業に反対するため、アマゾン先住民による組織「Ceibo Alliance」を設立。ワオラニ族のリーダーに選ばれた。そして2018年、エクアドル政府は、アマゾンの熱帯雨林に新しく16の石油鉱区を作って競売にかけることを発表。このことを知ったネンキモさんは、競売についてワオラニ族から事前の同意を得ていないとして、エクアドル政府に対し提訴した。さらに「私たちの熱帯雨林は売り物ではない」というスローガンを掲げた競売反対運動を起こし、約37万8000票もの署名を集めた。

2019年4月、裁判所の判決により競売は停止。その結果、50万エーカーのワオラニ族の領土は保護され、ネンキモさんたちは歴史的勝利を勝ち得た。

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